《とらたん》を保護してから今日で１９日目
《とらたん》は魔女の手からきちんと薬を飲み、食欲も出てきて、徐々に回復を見せていた
保護から１週間後
１０日後
１２日が経って
もうすぐ半月が過ぎようとしていた
その間《インドラ》は見舞いを欠かさず
こうして毎日《とらたん》を励ましてくれている
見舞いに来た《インドラ》に《とらたん》接近 （《とらたん》、ちょっと緊張してるね）
《とらたん》は《インドラ》が来るのを待つようになった
とらたん （まだかな・・）
お鼻がイマイチぐじゅぐじゅだけど、すいぶんと元気になったね
このまま順調に、と願っていたが
１５日目くらいから下痢の症状が出てきた
そうして一昨日は下痢が酷くなり、少々の朝食を食べるのがやっと
その後は食事も水も口にしなくなり、元気もなくなっていった
昨日は昼夜とも仕事で忙しく、昼間の仕事を終えた夕方、
大急ぎでまじょねこ軍団に夕食を与え
その後、《とらたん》を連れて病院に向かった
《とらたん》は最初の時と違ってすこぶる大人しくネットに入り、キャリーの中でも鳴くことはなかった
それほど体調が悪いのかと心配になる
診察の折も大人しかった
先生が点滴や注射の用意をする間も、前回は 「いやだ！」 「かえる！！」 を繰り返していたが
今回は大変大人しかった
ネットに入れる必要などまったくなかった
点滴も、注射も素直にさせてくれ
待合室でも、走る車の中でも一切鳴かなかった
それが逆に心配になる
家に戻ってベッドに寝かせ、様子を見る
魔女 「《とらたん》、大丈夫？」
とらたん 「・・だいじょぶ」
魔女 「でも・・ 病院では 「いやだいやだ」 も言わないし、 車のスピード出しても 「こわい！」 って鳴かなかったよ 「やだ」 って言う元気もないのかな、って心配してるの」
とらたん 「つれて かえって ありがと」
魔女 「え・・？」
とらたん 「ここに つれて かえって ありがと」
魔女 「当たり前じゃない」
とらたん 「ぼく・・ しんじたから いいこに した」
魔女 「しんじたから？」
とらたん 「まじょのこと しんじたから」
魔女 「・・嬉しいな」
とらたん 「まじょは ぼくに わるいことしない」
魔女 「そうよ 絶対にしない」
とらたん 「うん しってる」
魔女 「今夜はゆっくり休んで、明日からお薬飲もうね」
とらたん 「うん」
もっと《とらたん》と一緒にいたいけど
のらねこ軍団にご飯を持って行かなきゃ
みんな待ってるから
こんな冷たい夜に待つのは辛いからね
時間通りに行かなきゃ
工場裏で寒そうに待っていた親のいない仔猫には缶詰一缶あげといた
それを終えて走って家に帰り、また仕事に出て・・
夜遅くに家に戻り
膝に乗っかってきた《とらたん》を１時間ほど撫でた後
「夜食をよこせ！」 と泣き喚く《ユリぼうず》のかん高い鳴き声を子守歌にしながら
そのままリビングで眠ってしまった
明け方、お腹が減って目を覚ました
そういえば昨日は全く食事を摂っていなかった
というか、朝からずっと忙しくて食事をする時間なんてなかったんだ
それより《とらたん》！
アトリエを覗くと、《とらたん》がベッドから顔を出してこちらを覗いていた
そして、差し出す魔女の指から薬を一生懸命に飲んでくれた
これでも治らなかったら
環境の変化のストレスによる何らかのウィルス発症の可能性を考えなければならない
《とらたん》、大丈夫だよね
そこまでのストレスなんてないよね
毎晩魔女にだかさって、いっぱい甘えてごろごろ言ってるもん
《とらたん》はこう見えて、決して若くはない
病気が回復したとして、《とらたん》を外に帰したら
たぶん、この冬は命が持たない気がする
《とらたん》を魔女家の家族に迎えようと思う
《とらたん》次第だけど
まじょねこ軍団は大丈夫なはずだが
果たして《とらたん》はどうだろ
知らないたくさんの猫を見たら・・
嫌がるかな
今日も《とらたん》を見舞う男がいて・・
インドラ 「《とらたん》・・ 頑張って元気にならなきゃだめだよ」