まだ《ジンジン》たち兄弟や、他の子が若く、活発な頃は
これまでに様々な事件が勃発していて
読者様のコメントでも
よくもまあ次から次へと事件が起こりますね、と呆れられていた
そんな数々の事件の中で、忘れられないのが
『《ジンジン》首吊り事件』
外出から戻ってみると《ジンジン》がブラインドの紐に首を掛けて
まるで昔風のきつねの襟巻きみたいになって
だら～んと窓の下にぶら下がっていた
慌てて紐を外し、抱きかかえるも意識はなく
魔女は必死で人工呼吸をしたのだった
《ジンジン》は暫くして意識を取り戻し、大事には至らなかった
あの時の《ジンジン》の姿は衝撃で
いまだに魔女の脳裏に焼きついている
今日
魔女はお風呂を洗おうとして、浴槽の蓋をどけたところで電話が掛かってきた
それの対応をして、その後お風呂を洗うのを忘れて私は違うことをし始めた
ここで言っておきますが
今日のことはすべて魔女が悪いのです
《ジンジン》、これは完全に私のせいなのであります
洗面所から《涼子》の鳴く声が断続的に聞こえたが
私は鳴き声がいつもより激しいな、と思いつつも
「ご飯にはまだ早いわよ～」 とドアのこちら側から声を掛けていた
それから暫くして
いつものようにリビングのドアがノックされた
《インドラ》が見回りから戻って来たのだ
魔女は 「おかえりなさ～い」 と言いながらドアを開けた
しかし・・
入って来た《インドラ》の姿はそんな呑気なものではなかった
《インドラ》はそのままファンヒーターの前に行ってそこにくっ付き
「早くストーブをつけて！」 と言った
それより魔女は全身ずぶ濡れの《インドラ》の姿に驚いてしまい
バスタオルを取りに走った
その間、待ちきれない《インドラ》は自分でスイッチを押してヒーターを点けていた
そしてヒーターにくっつくようにして温風を浴びながら、ヒーターとは反対側の毛を舐めていて
魔女もまたバスタオルでもって《インドラ》の体中を拭いたが
《インドラ》は 「自分でやるからいい！」 と ウザそうに言った
《インドラ》は度々体の向きを変えてどんどん毛を乾かしている
いったい何があったのか・・
《インドラ》が自分で毛を乾かしている間
私は廊下に出てみた
廊下が水溜りと水しぶきで濡れている
それを辿ると洗面所に行き着いた
洗面所に備え付けてある洗濯物入れのボックスから
そこを寝床にしている《涼子》が飛び出して来て言った
涼子 「魔女、あんなに呼んだのに！ 大変だったんだからね！！」
魔女 「いったい何があったの・・」
涼子 「お風呂場だよ！！」
バスルームを覗くと
乾いていたはずの床は水浸しで、バスタブの水はなくなっていた
何が何だかわからない・・
待てよ
私はバスタブの栓を抜いていない
なのに今は抜けていて、水（お湯）がなくなっている
わあ！
《インドラ》はこの中にいたの？！
いったいどうして？！
それでどうした？！
拝啓《ジンジン様》
魔女は大いに混乱しています
一部始終を見ていたという《涼子》が言うには
外回りから戻って来た《インドラ》が、《涼子》に声を掛け
それから開いているバスルームを覗き、中に入って
いつもと違って蓋が取られているバスタブを怪しんだのか何なのか
背伸びして中を覗こうとしてようだが、覗き込むには背が足りず
それでバスタブの縁に飛び乗ったら、足をすべらせてドッポンとバスタブに落ちた
どちゃばちゃと暴れる《インドラ》
それで《涼子》は鳴いて魔女を呼んだのだ
だけど魔女は出て来ず
バスルームに戻る《涼子》
そこでは相変わらず《インドラ》がどちゃばちゃやっており
居ても立ってもおられない《涼子》はおろおろしたらしい
《涼子》がおろおろしているところからは《インドラ》の姿は見ることが出来ず
そのうちシンとなり
《涼子》は頭がまっちろになったという
するとバスタブの中からカチャカチャという音が聞こえて
それからまた《インドラ》のどちゃばちゃが聞こえ始め
そしていっぱいの時間が経って
ずぶ濡れの《インドラ》がバスタブから飛び出して来た、って
それほどいっぱいの時間が経ってはいなかったのだろうが、その時の《涼子》にとっては相当な時間と思えたのだろう
だけど確かに満タンの水が抜け切るのには相応の時間が掛かるよね
つまり
《インドラ》は
溺れながらも
風呂の栓を抜いた・・ ってこと？
そうだよね
確かに栓が抜かれて水がすっかりなくなっているもの
《インドラ》・・
聞きたいんだけど
いったいあなたは
何者ですか・・
すっかり乾いたインドラですが なにか？
拝啓《ジンジン様》
私にもう・・ 《インドラ》が猫に見えなくなってきた