《インドラ》
うそだ・・
《風太》が僕にさよなら言うなんてうそだ! って思った
「また明日」 って言ったじゃない
その明日に《風太》が来ないから、僕や魔女がどんなに探し回ったと思ってるの!
僕がどんなにさみしい心でいると思ってるの!
《風太》と《インドラ》の日々
いつも《風太》の食事が終わるのを待たなければならなかった《インドラ》
早く遊びたいインドラ 「僕も一緒に食べてあげようか?」
風太 「やめて・・」
インドラ 「早く空き地に行こう!」
風太 「まじょ ごはん ありがとうございました」
魔女 「どういたしまして」
風太 「かくれんぼ しようよ」
《風太》と遊んだ空き地はもうなくて
思い出は・・ もう僕の心の中だけになっちゃった
おぼんの時、《風太》が、《ジョンにいたん》たちとお空から来た時
僕はどうしてもいやだった
すごくいやだったから、いらいらしてしまって
その気持ちをどうしたらいいかわかんなくなって
僕は手すりをしっぽでバンバンたたいた
お空から来たみんながいるお部屋で
僕は《風太》に見つからないように台所のすみっこにいた
でも・・《風太》が 「《いんどら》・・」 って言って
僕は かべの方を向いたままにした
ふりかえりたくなかった
もう一度《風太》が 「《いんどら》・・」 って言って
僕はかべに向かって泣き始めたんだ
僕はそのままかべの方を向いて言った
僕 「どうして やくそく守らなかったのさ! 『また あした』 って言ったじゃない!」
風太 「ごめんなさい・・」
僕 「僕、待ってたのに・・」
風太 「・・」
僕 「お隣の地面でも、お向かいの地面でも、大きな音がして、地面がゆれて、僕だってこわかったけど ちゅう車場で待ってたのに!」
風太 「ぼくは・・ おくびょうだから」
僕 「・・」
風太 「ぼくは きがよわいから・・」
僕 「・・」
風太 「ぼくは けんかも できないし、 ぼくが、ぼくに、ってもいえないから」
僕 「違う! 《風太》がけんかができないのは だれも傷つけたくないからだもん! そして ぼくが! って言えないのは、自分は後回しでもかまわないよ、っていう気持ちなんだよ やさしい気持ちなんだ、 僕知ってるもん!」
風太 「・・そうなのかな」
僕 「《風太》は自分のことがわからないから僕が言う! 《風太》はやさしすぎたの!」
風太 「ぼくには・・ ゆうきがなかったんだよ」
僕 「勇気がないならニャバーランドには行かない! 勇気がないと、ひとりでなんてニャバーランドには行けない!」
風太 「・・」
僕 「《風太》・・ ぼく、《風太》と一緒の時、すごく楽しかったんだ、 だから今、うんとおこってるの!」
風太 「ぼくも 《いんどら》と いっしょで うまれて はじめて たのしかった 《いんどら》 やさしくしてくれて ほんとうに ありがとう」
僕は どんどん心が苦しくなって ぼろぼろなみだが出てきた
それからしばらくして そっとふり向いた・・
《風太》を見たら、もっともっと悲しくなって、どんどん泣いた
風太 「あのね・・《いんどら》、 ぼく、にゃばーらんどにいくはしをわたるとき そこには だれかがいるんだけどね、『きみは?』 ってきかれたきがして ぼく いったよ 『ふうたです』 って」
僕 「・・」
ふうた 「そしたらね、 『にんげんにかわれてたんだね』 っていわれた」
僕 「・・」
ふうた 「ぼく、いったんだ なまえ 『ふうたです!』 って そのとき すごく うれしかった」
僕 「・・」
風太 「ぼくに なまえつけてくれて ありがとうね」
僕 「《風太》に名前つけたの魔女だよ」
風太 「けど、《いんどら》が まじょに たのんでくれたでしょ 『このこに なまえ つけてあげて!』 って」
僕 「また・・ あの時みたいに《風太》と遊びたい」
風太 「あそぼう! もっと むこうに いっこだけ まだ あきちが あるよ」
僕 「魔女ぉ~! 僕、お外に行っていい?」
魔女 「夜なのに? 今日はお盆だし・・ いいわ、行ってらっしゃい」
僕 「《ジョン ブリアン》も一緒に行こう!」
ジョン ブリアン 「うん!」
魔女にドアを開けてもらって、僕はおうちを飛び出した
空き地に行く時・・
風太 「まじょは ぼくのこと しらないんだ・・」
僕 「そうだね・・ でも僕 《風太》の『さよなら』 のこと、魔女にどうしても言えない・・」
風太 「・・」
おぼんの間中、僕らは毎日遊んで暮らした
大好きな《ジョン ブリアン》もずっと一緒
そうして・・ さよならの夕方がやってきた
その時、僕はまたイジけた・・
風太 「《いんどら》・・ ぼく・・ もうすぐ いかなきゃ」
僕 「・・」
風太 「いつだって 《いんどら》の ところに かえってくるよ、 かぜといっしょに・・ だって ぼくは 《ふうた》だもん」
僕 「ほんと?」
ジョン ブリアン 「僕だって《インドラ》が困ったらいつだって帰って来るじゃない、《風太》だって 帰ってくるよ」
風太 「ぼくは 《いんどら》といるとき ほんとうに しあわせだった だから また くる」
僕 「《風太》は風に乗って来るんだね!」
風太 「うん! そしたら また あそぼう」
僕 「うん! 《ジョンにいたん》も 一緒に来てね!」
ジョン ブリアン 「うん!」
風太 「・・それと ぼく 《いんどら》に たのみがあるんだ」
僕 「なあに?」
風太 「このよに のこった ぼくを・・ みつけて」
僕 「《風太》を・・」
風太 「ぼくを みつけて」
僕 「・・わかった どこを探したらいいの」
風太 「それは ぼくが おしえる」
僕 「どこ?」
ジョン ブリアン 「《風太》、火が焚かれたからもう行くよ」
風太 「ぼく、 いかなきゃ」
僕 「どこだか言って!」
ジョン ブリアン 「だいじょうぶ きっと わかるから」
そう言って《風太》は《ジョンにいたん》と、みんなと一緒にニャバーランドに帰って行った
それからしばらくして
《チャンドラ》がテリャスから落っこちた
どこに行ったかわからない《チャンドラ》を探してて・・
僕は見つけた
この世の《風太》を見つけた
その時僕は、ほんとうに、ほんとうに、つらかったです
魔女・・ 僕が今日日記を言ったから
《風太》のこと、わかっちゃったね
ねえ魔女、 《ジョンにいたん》や《風太》のことを考えると、僕はどうしてこんなにさみしい心になるの?
・・それは《インドラ》が生きてる証拠なのよ
インドラ 「なかなか風が吹かないの・・」
魔女 「《インドラ》、そんなところで何してるの」
インドラ 「風が吹くのを待ってるの」