私がマチンドラに姿を現すのは、朝のバジャンが始まる9時前
それを悟った《バブー》は
朝の周辺地域見回りから同時刻に戻って来る
マチンドラの門を潜る魔女
と、同時に向かい側からやって来る《バブー》
私たちは雑踏の中にお互いを認めると
ハッとした感じで一旦立ち止まり
魔女が大きく広げる手に《バブー》が駆けて来て飛び込む、というのが毎朝の風景
マチンドラの人々はこんな私たちに優しい笑顔を向けてくれる ← 実は呆れ笑い?
「《バブー》、良かったわね!」
「《バブー》、今日も一緒で嬉しいかい?」
みんなはこんな言葉をかけながら《バブー》の頭を撫でて行くのだ
《バブー》と一緒に朝のケーキを食べ
《バブー》と一緒に店番をする
そんな店から眺めるマチンドラの境内は私を飽きさせることがない
朝は多くの信者さんがやって来るので大変賑やか
朝は参拝の人々がひっきりなしにやって来る
彼らは参拝の人々がマチンドラの仏様にお供えするものを売る人たち
マチンドラの仏様の前でお経を唱え、信者さんに祝福を与えるお坊さん
今は仲良しだけど、昔は魔女の宿敵だった坊さん
※ 数年前の夜のこと
この境内に敷かれていた緋毛氈の上に魔女と《バブー》と子供たちが無断で座った、
という理由(だと思う)で怒鳴られたので、みんなでこのお坊さんをからかったら
逆上した坊さんに追い掛け回された
セト・マチンドラの仏様の向かい側、鍵の掛かったこの部屋には黒い仏陀が安置されている
《バブー》がいきなり唸って店から飛び出した
また怪しい人がやってきたのか?
と目をやると
私の目の前で《バブー》に牙を剝かれているのは・・
なんと男性警官じゃないか
相手が警官だと知っているから
いつもは《バブー》に加勢して吠え掛かる《ベットゥー》と《カロ》は吠えようかどうしようかとおろおろしている
しかし《バブー》は容赦なく警官に向かって牙を剝く
警官は相当に気を悪くした顔をして睨みつけてはいるものの、《バブー》の勢いに慄き、右へ、左へと避けながら早足にこの場から去って行く
そんな警官をマチンドラの人々は目で追い
あれは心の悪い警官なんだな・・ と内心で理解するのだ
それにしても警官が《バブー》に牙を剝かれる確率、高いな・・
悪い警官を追い払って店の前に戻って来た《バブー》を見詰めるラマ教(チベット密教)のお坊様
《バブー》の側に来て、いっぱい撫でながらなにやら誉めている
お坊様 「なんと賢い犬だ、君はこうしてマチンドラの神様を守っているんだね、どうかこれからもよろしく頼みますよ」
バブー 「てへ~ ぼく、ほめられちゃった!」
仏神への参拝は朝のうちに済ませる
境内で供え物を売る人々も去った頃
突然の激しい雨が襲った
あまりに激しい雨のため、寺の屋根の下に避難
暫し客足も途絶え、雨音だけが響く
次回はカトマンズを離れ、村とそこの学校を訪ねます