ここ、ジョムソン街道は数年前まで車道路がなかった
それまではポカラ~ムクティナートは全行程徒歩
トレッカーたちはポカラ~ジョムソン間を大抵の場合、4泊5日の行程をひたすら歩く
トレッキングに慣れていない人はもっと日にちがかかる
バス移動でも、途中のタトパニあたりで1泊するのが通常だ
ポカラの先のベニからムクティナートまでの道路は当然舗装がされていない
さらにジョムソン、カグベニ間は川を渡って進むので自家用車は使えない
バスやジープが通るようになったことが喜ばしいとは一概に言えない
便利になると自然環境が損なわれ、景観も一変してしまう
一方、点在する村々の住人達は物資運搬が楽になったことを喜ぶ
自然環境を守るか、住民の生活が楽になるか
これは現地でも意見の分かれるところだ
初っ端から脳みそがずれるほどの悪路
勿論舗装はされていない
バスは満席で、体調の悪いたまちゃんを二人賭けの一席に座らせ、私は家族①はもうそこしか空いてなかった最後部にギュウギュウ詰めで座った
私の座った場所の足元には既に大きなリュックが置いてあり、足を下ろせない
だから自分の大きなリュックをどこにどうやったらいいかわからない
イラっとした私は 「このリュックは誰のよ!」 と周囲の人間を見渡す
すると私の前に座っていた若い男が自分のだと言う
このバスには、やはりフライトを諦めたとみられるドイツ語を話す男女の4人組が乗っており、件の若い男は彼らのガイドだった
自分の客の座席を確保しようと、己のリュックを置いたらしいが、客は前の方の座席に座り、ガイドのリュックは置かれたままになっていたのだ
「自分のは自分のところに置きなさい!」
足は下ろせないし、自分のリュックの置き場所がない私は苛々した感じで彼に言った
だけど足元のリュックを引っ張り出そうにも、混みあっていて身動きが取れない
途中の休憩で前の座席のガイドも外に出たので、私は件のリュックを引っ張り出し、彼の座席に放り投げといた
バスは大きな岩を避け、大きくジャンプを繰り返しながらカリガンダキの川沿いを進む
しかもバスの座席が前に大きく傾いていて、ジャンプの度に前方にずり落ちそうになる
それを隣の家族①は
「わぁ~い♪ アトラクションだあ~!!」 喜んでる・・
「テーマパークのアトラクションは直ぐに終わっちゃうけど、これはずっと続くんだね!!」
・・これがずっと続いていいのか?
ほんとうにそれでいいのか?
頭を天井にぶつけまいと頑張るも、とびっきりのジャンプで思いっきり打ち付けてしまった
痛い・・ 痛いよぉ
これがきっかけで、家族①も 「アトラクション・・ もう飽きた」 と言い出した
バスは今にもブッ倒れそうな勢いでぐらんぐらんしながら岩の道を進む
暫くしてマルファに到着
何人かの乗客が降りて、私は地元民のおじさんと少しは楽になったことを喜び合った
まだまだ先は長い
左側はカリガンダキの川まで200メートルもあろうかと思われる崖
たまに向うから現れるバスとすれ違う時、こちらのバスの窓から下を覗くと道が見えない
谷底しか見えない
タイヤが道のギリにあるのだ
途中でいきなりの雷雨が襲う
運転手はバスを停め、車掌の男の子と一緒に屋根の上の荷物を車内に運び入れる
ついでにここで一休み
ガタガタの脳みその位置を少しでも直さなきゃ・・ マジで
本当に道中は脳みそがシェイクされているみたいなんだ
家族①が 「バスの運転手さんはこの仕事を続けない方が身のためだ、こんなことを続けていたら絶対に脳みそがバカになっちゃう」
と、真剣に運転手の心配をし始めた頃、バスはガーサに到着
村はこの時期、桜が満開だった
桜の村ガーサ
ここでちょっとだけ休んでバスを乗り換え、タトパニに向かう
この日はタトパニに1泊し、翌日バスでポカラに向かう予定だ
しかし
ここで新たな情報が地元民によってもたらされる
「明日はバンダだからバスは動かないよ」
なんですと! 明日はバスが動かない!!
※ ネパールバンダとは言ってみればストライキ
学校、会社、商店、交通機関が休校、休業となる
ネパールでは半月後に選挙が迫っていて、マオイスト(ネパール共産党統一毛沢東
主義派)の議長プラチャンダがポカラに遊説に来ているから、これは紛れもなくマオ
イスト指示のバンダだと思われる
マオイストのバンダとなると、強制なので明日の交通機関ストップは逃れられない
またまた襲ってきた困難
この時のラクちゃんと魔女の対応は速かった
ラクちゃん 「魔女、こうなったら何としてでも今日のうちにポカラに戻るしかないぞ!」
魔女 「そうしよう! たまちゃん、頑張るんだ!」
ラクちゃん 「僕はここからベニまでバスが行ってくれるか聞いて来る!」
魔女 「そうしてくれ、こっちは出発の準備をしておく!」
ラクちゃん 「魔女、あのバスがベニまで行くそうだ!」
魔女 「よし! 混まないうちにさっさと乗リ込むぞ!」
座席確保!
その後先のバスで一緒だったドイツ語の4人組と、件の生意気な彼らのガイドも乗り込んで来て
いざ出発
とにかく行けるところまで行くしかない
一泊するはずのタトパニを通過して、私たちは一気にベニまで向かうことにした
まるで八方塞のように、次々と困難が襲って来る
今回の旅のテーマは決断力と忍耐力と応用力
任せろや!