ボンネット
ここの部屋に来た次の日の朝、《インドリャ》はとっても元気がなかった
魔女が夜中にミルクをあげに来て、僕らに《インドリャ》を頼んでまた自分の部屋に戻った
そのあと《インドリャ》がトイレに行った時、台所で寝ていた《バニャ2号》に脅されたんだ
(トイレは台所の隅にある)
朝、魔女が《インドリャ》を抱えて心配してたから、僕はそのことを言った
魔女が言うには、ひとりぼっちで違う部屋にいた時の方が・・
今よりもまだ楽しそうだったって
魔女はそんな《インドリャ》をすごく気にした
でも、相変わらずお腹の調子が悪い《ライガー》は別として
ふたりの子供は母親の真似をして《インドリャ》を嫌がった
時々《インドリャ》が 「なかまにいれて・・」 って感じで
夢中で遊んでいるふたりのところに行くんだけど、そうすると子供たちは走って違う場所に移動してそこでまた自分たちだけで遊び始める
それで《インドリャ》がまたそこに行って 「なかまに いれて・・」 って
今度は口を開けて言うんだけど・・
声が出ないからわからないのかなぁ
ふたりはまだ他の場所に走って行って行っちゃう
《インドリャ》は元気のない歩き方で戻って来て、テーブルの下でうずくまるんだ
だから僕たちは《インドリャ》に向かってふざけてみせた
「僕らと遊ぼう!」 ってみんなで言った
ほんとうは暑いからあんまり遊びたくなかったんだけどね・・
僕らが大きいから最初は恐がってた《インドラ》も、少しずつ僕らと遊び始めた
僕らはけっこう手加減した
《インドラ》は時々えきしゃいとして僕らを痛くしたけど・・ 我慢しといた
それでも遊んでいる途中で立ち止まって
やっぱり向こうできっきゃ遊んでる《レオポン》たちをじっと見ちゃうんだ
僕たちは 「ほらほらこっちだよ!」 って言いながらかる~く飛び掛る
すると《インドリャ》はまた遊びだす
《インドラ》の向こう側では《バニャ姉妹》が子供たちを舐めてやったり、乳を与えたり・・
《ユリぼうず》が、どこからともなくとことことやって来て、《インドリャ》の側でごろんと横になった
ユリぼうず 「僕がおかあちゃんになって差し上げる」 インドラ 「おかあたん・・」
ユリぼうず 「母ちゃんに任せないさい、 あいつらぶっ飛ばしてやるから」
魔女が慌てる
「《ユリぼうず》、それだけは我慢して! いつもそのパターンで折角懐いてる子供まで怯えさせるんじゃない、今はこの子の優しいおかあちゃんでいてあげてちょうだい!」
魔女
メス猫は用心深いため、知らない猫を警戒する
近づくと、威嚇したり、騒いだりして嫌がる
今回もこれをやっているの《バニャ2号》、《レオポン》《ひな》共にメスだ
最もメス猫の全てがそうだという訳ではない
かつて誰もに愛された優しい猫、《インジゴ》のように
新しい猫に心を尽くすメス猫もいる
くったくのない《凜》
ちょっと神経質だけど《インドラ》の様子が気がかりな《バブー》
そして修行にしか目がない《アゾ》
彼ら女子軍団は問題ない
当面の問題は《バニャ2号》だ
一方我が家のオスは大らかな性格で、状況判断もきちんとできる
だから苦労してやってきた子を常にみんなで優しく迎え入れてくれる
自分が最初にここに来た日にそうされたように
《水玉》や《伐》、そして《インジゴ》に貰った優しさを彼らは受け継ぐ
ここで問題なのは
《インドラ》が意地悪をされている! そう判断した時の《ユリぼうず》乱暴さだ
《バニャ一家》が来る前にも一度そんな状況にキレたことがある
《ユリぼうず》がキレると手がつけられない
その暴れぶりは
折角懐いた仔猫まで怯えさせ、結果嫌われるのだ
だからここは我慢を頼んだ
「《インドラ》に嫌われてもいいの?」
今の《ユリぼうず》にとって、それが一番効果的な言葉
小さな子の、弱い子の、かあちゃんでいたい《ユリぼうず》
《ユリぼうず》は《インドラ》がこの部屋に来てからというもの、大好きなお散歩にも出ず、ずっと一緒にいてあげているのだ
ボンネット (なんだよ 僕だって《ぼんにいちゃん》になりたいのに・・)
インドラ (じゅっと・・ みてる・・)
そんな《インドラ》のに、昨日ぼうずさんから差し入れが届きました
魔女 「《インドラ》、ありがとう、って言うのよ」
インドラ 「ありかと・・」