《ジョン ブリアン》
僕は隠し物名人なんだ （名猫・・）
僕が自分のそんな才能に気づいたのはだいぶ前のこと
最初に隠したものは僕の薬だった
僕が大きな病気をして、命が危なくて、入院して手術して
再発っていうのをしてまた入院して、長い間入院して
『きせきてき』 のおかげで助かって
それで僕は《ユリぼうず》を抜いて魔女家で最も高価な猫になった
それは僕の入院代やちりょー代が群を抜いてたからだ （威張るなっ！）
それで退院後も暫く薬を飲まなければならなかった
それは冬も夏も冬も・・ （つまり１年半続いたってこと）
その薬は口をしびれさせる薬で （いや・・ 恐ろしく苦いだけで痺れはしなかったと思うよ）
毎日が苦痛だった
それでこれ以上我慢が出来なくなって、ある日それを隠したんだ
（抗生剤だったので、毎日同じ時間に飲ませなければならず、薬がなくなって本当に焦った）
僕の隠した薬は見つからず
魔女はすいぶん焦ってたけど
そのうち僕自身も薬の隠し場所を忘れてしまい
その上僕は薬を飲まなくてもめっきり元気だった
僕の薬漬け生活はこうして終わった （なんてイヤな言い方・・）
それから僕は何かを隠すことに自信を持ったし
そのことで軍団からも期待され始めた
《ジンジン》に頼まれて《ジンジン》の嫌いな目薬も隠した
《バブー》が嫌いな耳ダニの薬も隠してあげた
《ボンネット》が嫌がる猫用爪切りも隠した
僕が貰ったお手紙やカードも隠したし
《伐》のかたみのスーパーボールも隠した
これは誰にも渡せない大切な思い出だからね
だから魔女の車の鍵を隠すなんて、僕にとっては簡単なことさ
そしてあんのじょう、魔女はそれを探し出せないでいた
魔女は非常に苛々したけど
僕らは絶対に口を割らなかった
それなのに・・
魔女
鍵を失くして２日目
スペアキーも部屋のどこかに紛失しており
その間私は部屋中を探すことに殆どの時間を費やしていた
この時私は、鍵を失くしたのはじぶんのだらしなさのせいだと思い込んでいた
そうして鍵を探すことに疲れ、気晴らしにＰＣを開き、メールのチェックを始めた
デイブからメールが来ていて
「彼の尊敬する年長の友人であるトリブヴァン大学の医学部の教授が日本に行くことになりました。そこで僕は日本に住む僕の親友の変な女の話をしたら教授が是非会ってみたいというので、彼が日本に行ったらよろしく！」
と書いてある・・
へ？ 変な女って私ですか！！
それに返事を書き、メールのやり取りをしているうちになぜか罵り合いになった
罵り合いが５往復くらいになった時
facebookにニショナ（ネパールの子供）の母親から友だちリクエストが来たので承認し、短いメッセージを書いていたらラーズ（ママの息子）が 「やあ魔女、何してる？」 と呑気にチャットして来た
フェイスブック開いてんだから何してるか分かってるだろう！
デイブからの憎たらしいメールはジャカジャカ来るわ
facebookにはニショナの母親から返事のメッセージが来るわ
ラーズとのチャットは止まらないわで、私は三つ巴の忙しさに陥った
と思ったらチャットにサムジャナ（友人）が加わってきた
fecebookでは僅か１３人しか友人がいないというのになんなんだ・・ この有様は
もう寝るから！ とみんなに告げてfacebookを打ち切り、デイブのメールにも
「どうせ私はバカだし、あなたと罵り合いをしてる場合じゃないの！ 私は失くした車のキーを捜さなきゃいけないのよ！」
と入れて終わりにした
そしてまた鍵を捜し・・ ふとＰＣに目をやると
またしてもデイブからのメールが
なんだよ！ と思いながら目を通すと・・
【Try to find out at the sitting room under the table near your kitchen room. It might be there because of cat ...may be John brian. Check it there.】
「ダイニングルームの近くの居間のテーブルの下を捜してください。 猫がやったのでそこにあるでしょう・・・多分ジョン ブリアン。 そこをチェックしてみて。」
え・・？
今はまだ《ボンネット》が立てこもっているのでテーブルはコタツだが・・
そのコタツの布団をめくってみる
ないじゃん・・
そこでコタツ敷きをめくって手を突っ込んでみた
あった・・
車の鍵はコタツ敷きの奥に隠されていた
「・・《ジョン ブリアン》の仕業なの？」
全員が一斉にそっぽを向く
《ジョン ブリアン》
こうして僕らの作戦はデイブさんのおせっかいで失敗に終わった
なんて余計なことをしてくれたものだ・・
それで僕がデイブさんについて文句を言ったら
ユリぼうずが突然キレ出して
僕も怒って《ユリぼうず》に噛み付いたから
僕らは取っ組み合いの大喧嘩になった
デイブさんはラクスマンさんと日本に来た時魔女家で足を怪我した魔女の面倒を見ていた
そして《ユリぼうず》ってば、その間中《デイブ》さんに甘えていて
終いには 『そーしそーあい』 っていう仲になったんだ
この作戦はデイブさんのせいで散々な結果に終わった
そういう訳で、僕はすごく ご機嫌ナナメです！