魔女
あ! あの子、あの子だよ!!
いつも言ってた子、魔女に紹介したかった子だよ!
帰り道で家族①が叫んだ
見ると小さな子猫が1匹、一軒の家の駐車場の前に佇んでいる
家族①がいつも話しているのは
痩せた母親と2匹の子供のこと
その話は、一月ほど前のある日
家族①が、10メートル以上もある切り崩した山の崖を母親の後を追って懸命に登る小さな2匹の子猫を目撃したところから始まった
あんな小さな子猫が直角に近い崖を必死で登っている・・
ハラハラしながら見たその光景は、家族①の心に焼きついたようだ
家族①はその後何回かその場所でこの母子たち出会った
でも子供が1匹だけのことが多く、それがとても心配だと話していた
家族①はその子に食べ物をあげたという
子猫はひどく警戒しながらそれを食べた
その後やっと母親に会った
同じことをした
母親もまた警戒しながら食べた
母親は小さく、とても痩せ細っていた
最近では家族①がそこに現れる時間を見計らうように、子猫の1匹が待っていることもあるという
公園帰りのこの時、声を掛けると、どこからかもう1匹の子猫、そして母親も現れた
家族①は 「何か食べ物を持って来る!」
と言って家に向かって走った
車を停めているのは道路の反対側の坂の上で、いささか広く安全な場所
子猫たちは道を渡り、よっちよっちと坂を登ってこちらにやって来る
その間私は他の車がやってこないか、道路を見張った
子猫たちがすぐそこまでやって来た
あまりの可愛さに口元が緩む
まるで子狸さんだね (カメラの充電が切れ、携帯の画像)
母親もついて来た
悲しいくらいに痩せている
2匹の子猫はくっついて、体をくるくるさせながら地面に座り込んでいる目の前の魔女を眺めた
家族①が戻って来た
そしてノラちゃんたちを驚かさないよう、ぐるっと遠回りをして私の隣に座った
茹でた鶏肉を抱えている
『あまたラーメン』で出汁を取った後のまるまるの鶏肉を猫用に貰っていたものだ
家族①はさっきの食器を取り出して、ほぐした身を山盛りにしている
それを差し出すと子猫たちが首を突っ込んだ
母親は車の下からそんな子供たちの様子を見守っている
母親は子供たちのお腹がいっぱいになったら残りを食べようと思っているのだが
お腹が減っている子供たちは残さず食べ、何度もお代わりをする
何回かのお代わりの時、母親がたまらずやってきて、子供たちの間から顔を突っ込んだ
でも残りが少なかったから家族①がまた別の器に入れてあげた
遠近を考慮してもこの大きさ、 まるで子猫のような母親だ
そうだよ、お母さん、我慢しないで食べた方がいいよ・・
お母さんが飢え死にでもしたら、子供たちは生きていけないのだから
家族①が嬉しそうに言った
このお母さん、鶏肉食べるの初めてなんだよ!
鶏肉大好きみたいだね!
よかった、よかった
じゃあ、以前に子供たちに鶏肉をあげたのね・・
お母さん猫は足りないみたいだったけど
満足した子供たちはたどたどしい感じで、それでもいっちょまえに顔を洗い始めた
私たちは暫くの間、そんな様子のノラちゃん親子を眺めていた
家族①はこれからもこの親子をしっかりと見守って行くらしい