ネパール日記   ネパール最終日 Ⅱ | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください


まじょねこ日記-Indra Chowk

魔女


たくさんの食料品でスーツケースが一杯になったため、入りきらないものをラクスマンに預けて帰る事にした


それはネパール小旅行用のリュックでは詰め切れず、さらにもう一袋分にもなった
それらを抱えてギリンチェに向かう


ネパール最後の夕食に好きなものを何でも注文してくれ、とラクスマンが言うので
バタートーストとマサラオムレツ、それにヨーグルトのデザート、シカルニを作ってもらった
ネパール最初の食事と同じものだ


「魔女は夕食に朝食を食べるのか!」 とラクスマンが呆れる


ラクスマン 「魔女、帰らないほうがいいよ」


魔女 「そういう訳にはいかないよ」


ラクスマン 「分かってるさ、家族も猫たちをも日本に置いて、自分たちだけここに残るなんてこと出来やしないことくらい」


魔女 「うん」


デイブ 「でも日本では原子力発電所が爆発して危ないんだよね・・」


ラクスマン 「デイブとも話し合ったんだけど、いったん日本に帰って、家族や猫たちを連れてネパールに引っ越して来た方がいいと思うんだ」


魔女 「え?」


ラクスマン 「僕の家には魔女の部屋があるんだし、他にも部屋が余ってるから他の家族にはそこに住んでもらうよ」


魔女 「あの・・」


ラクスマン 「わかってる! 猫軍団のことでしょ、 屋上全部にに屋根をつけてそこに住まわせることにしたから心配ないよ、広いぞ~!」


魔女 「じゃあ、屋上の鶏は・・」


ラクスマン 「3階のテラスに鶏小屋を移す!」


デイブ 「《ユリぼうず》は僕の家で面倒をみることにするからね!」


魔女 「・・」


デイブ 「どうしたの? それとも、魔女も僕の家に住む? じゃあ部屋はこの前のでいい?」


魔女 「あのねぇ・・」


ラクスマン 「なに、なに?」


デイブ 「なに、なに?」


魔女 「・・そうね、ありがと 日本が大変なことになったらね」


ラクスマン 「もう大変なことになってるじゃないか!」


魔女 「それよりさ、ラクスマンとデイブが日本に来てた時に大きな地震が来なくて良かったと思って・・」


ラクスマン 「なあ~にを言っちゃってるの! その時は僕たちも魔女たちと一緒に死ぬさ、それなら本望だ」


その時、ラクスマンの顔はいつものとぼけた顔とはまったく違っていた

冗談で言っているのかと思ったらそうではない


いつもふざけた事ばかり言っているが、この男は度胸が座っている

やると言ったことは必ずやるし、自分がした約束は必ず守る

それはデイブも同じだ

私は胸に詰まるものを感じて言葉が出なかった


出発の時間だ
私は立ち上がった

デイブが私を抱きしめながら 「何かあったらすぐに戻って来てね」 と言った

普段はそんなことをしないラクスマンとも抱き合い、私は彼に心から礼を言った



昨日のホーリー祭の折、アンビカの家で私は一本の電話を受けていた


今は地方に住む友人からで
彼は私がネパール滞在中、何度か連絡をよこし、日本の大震災について心配してくれていた
その人は電話口でこう言った


「明日、日本に帰るのですよね。 もし日本に帰って大変な思いをするようなことがあれば、もしまた地震が起こって家が壊れたりなど困ったことがあれば、どうか連絡をください。 私はあなたの口座に必要なお金をお送りします。 お金が足りなければ土地を売ります。 だからその時は必ず言ってください。 遠慮は絶対にしないでください」


いつもと変わらぬ静かな口調だった


私は驚いてしまい、答えに窮した

「その時は必ず連絡してくださいね」


彼は念を押すようにまた言った


「・・そうなったら連絡します」  取り敢えずそう答えた

あくまでも取り敢えず・・


それから私は考えた
そんなことを言ってくれるような何かを、私はこの友人にしたのだろうか
どんなに考えてもそれはない


何かしたとすれば・・ 彼の話を聞いてあげただけだ
カトマンズの片隅で、黙って彼の悲しい話を聞いた以外何もしてはいない


彼らの好意は国民性なのだろうか
善きネパール人のそれなのだろうか・・


日本で起こった不幸な出来事により

今回私は改めてネパール人気質を知ることになった