ジンジン
夕べ、《ボンネット》は自分で宣言したとおりにご飯を食べた
でも、その量が少ないことで、《バブー》はしかめ面だ
「《ボン兄ちゃん》、もっと、もっと食べなきゃダメです!」
《ボンネット》は情けない上目使いで《バブー》を見た
そこに家族①がやって来て
泣きべそ顔で魔女に言った
地震のあった場所に馬がいて
その馬はつながれていて、ものすごく痩せ細っていた!
このままじゃしんじゃう! しんじゃう!!
僕 「魔女、しんじゃう、って何?」
魔女 「・・ニャバーランドに行っちゃう、ってこと」
水玉 「なんで繋がれてんだ」
魔女 「そうやって飼われてたんだよ・・」
水玉 「じしんの時からずっと繋がれたままなのか!」
家族① 「馬を飼ってる人は避難生活をしてて、馬のいるところに戻れないんだって」
バブー 「そんな・・」
ジョン ブリアン 「ひどい・・」
ユリぼうず 「誰か紐をほどいてあげなきゃ!」
水玉 「でなきゃ、お腹を空かせたまま・・」
家族① 「そういう動物がもっといっぱいいるんでしょ」
僕 「どうしよう・・」
水玉 「自分だったら、って考えたら・・ 俺、気が狂いそうだ・・」
アゾ 「」
ジョン ブリアン 「馬さんたちは毎日どんな気持ちでいるんだろう」
家族① 「どうして家族は来てくれないんだろう・・ って、そればっかり考えてるに決まってるじゃん!」
水玉 「うぅ・・」
ジョン ブリアン 「どうして動物はそんな目に遭うの、 みんな家族じゃない!」
僕 「そうだよ、テレビだって人間のことばかり言ってる、動物はどうだっていいみたいじゃないか」
水玉 「人間はどうして動物も一同じに助けてくれないんだよっ!」
僕 「僕、もうその話を聞きたくない!」
家族① 「悲しすぎるよぉ」
水玉 「そうなったら魔女も俺らを置いて行くのか・・」
魔女 「そんなことはしない」
ジョン ブリアン 「そうだよ、さっきすごく揺れた時も魔女は僕らにコタツの中に入れ!って足でカバーを持ち上げながら自分はすごく大きな棚を押さえてたじゃない」
魔女 「私は死なば諸共の気持ちで帰って来たんだ、何があってもみんなと一緒だよ」
水玉 「しにゃばもろとも、って何だ?」
魔女 「どんな時も一緒だってこと」
家族① 「動物を家族にしている人はみんなそう思ってるはずなのに・・」
魔女 「辛いね・・」
バブー 「《ボン兄ちゃん》、あのお馬さんの気持ちを考えたら、ご飯食べないなんてひどいことだよ!」
ボンネット 「・・」
水玉 「繋がれたまま何日もご飯が食べられず痩せ細っている動物もいるんだぞ・・」
ボンネット 「」
魔女 「《ボンネット》のことはそっとしておいてあげなさい」
ユリぼうず 「とにかく早く紐をほどかなきゃ!!」
魔女
映像でそんな状態の馬を見たと言う家族①は目に涙を滲ませ、その唇は震えていた
それを撮った人はその馬を放してやったのか、それともそのままにしたのか
家族①はひたすらそればかりを気にした
繋がれたまま食べ物もなく、痩せ細っていく被災地に取り残された動物を思うと心が青くなる
人も大変だけど、動物だって辛く苦しい思いをしている
それを考えると心臓が鷲掴みされいるかのように苦しくなり、自己嫌悪に陥る
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昨年、10月下旬から、このリビングで人間と猫と共存して来た4匹のネダカがいる
この4匹は遅く生まれた仲間のうちでもひと際小さく(大きくなれず・・)
10月になっても小さなままで、これでは冬を越せまいと、リビングに連れて来て一緒に暮らし始めた
軍団はこのメダカの水が好きで、2日もすると鉢の水がグンと減る
それでも厳しく申し付けておいたからメダカには手を出さない
が・・《凜》と《バブー》は時々ホテイ草を引っ張り出して叱られたものだ
5ヶ月以上も一緒に暮らすと信頼関係が生まれるのか・・
軍団が顔を近づけると、メダカも寄って来るようになっていた
しかし中の1匹だけはなかなか大きくならない
それでもその子は頑張って5ヶ月を過ごした
一週間前、その小さな子がネバーランドに旅立ってしまった
小さな体でも頑張って冬を越し、やっと待ち焦がれた春が来たというのに・・
ぽつんと旅立ってしまった
かわいそうに・・
それを一番に知らせたのが《ボンネット》だった
その時、《ボンネット》はメダカの鉢の前で立ち尽くしていた
今日、残りの3匹を外の大きな鉢に移した
今までの何倍も広い部屋、たくさんの仲間たち
3匹は少しだけ戸惑って、でもすぐに思いっきり泳ぎ始めた
仲間に混ざってる
ぐるぐるまわってる
5ヶ月間を共に暮らしたネバーランドのチビちゃんの分も・・
いっぱい、いっぱい泳いでください
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空港で手違いがあったようで、ルナが日本に来られなくなった
本人に事実関係を確認したり、在ネパール日本大使館と連絡を取ってもらったりと、慌しい一日だった