魔女
一刻も早く《バブー》に会いたいと逸る気持ちを必死で抑えて
昨日はやるべきことを一気に終わらせた
今日は晴れて《バブー》の元へ
早朝から目を覚まし、朝食を済ませ
賑わった通りを避けてマチンドラへ向かう
人々に声を掛けられ、お茶を勧められるのを回避したかったから
朝市で賑わうアサンチョークも避け
ここも朝市で賑わうマチンドラの裏通りから細い入り口を入る
そこを抜けると目の前に広い境内が広がり、見慣れた建物の入り口に
見慣れた人々の笑顔が暖かく迎えてくれる
みんなと挨拶を交わしながらママの店へ
そこにバッグを放り込み
ママがうぎゃうぎゃ言うのを背中に聞きながら心は《バブー》に向かう
《バブー》は汚れていた
喧嘩、喧嘩で汚れていた
人間より早く経つ時間のせいで
子供だった《ベットゥー》が、すっかり大人の女性となり
ちょうどこの時発情していたのだ
そんな《ベットゥー》を目当てに寺院の外から押し寄せる雄犬を追い払う日々が
《バブー》を傷だらけにしていた
そしてそんな日々に、《ベットゥー》はぐったりと疲れていた
傷だらけの《バブー》が走って来た
嬉しそうに走って来てくれた
何はともあれ、お待ち兼ね、《バブー》の画像を
《ベットゥー》は3ヶ月前4匹の子供を産んでいた
その中の1匹はバジャチャリア氏が引き取り
2匹はマチンドラを出て行き
1匹が残った
マチンドラに残って母親の《ベットゥー》と暮らす子犬
寺院の門を潜って迷いこんで来た生後2ヶ月ほどの白い子犬がいた
動物好きのダッドは一生懸命にこの子犬の世話をしている
この子はここの家族にしてもらおうと、一生懸命に《バブー》のご機嫌をとっていた
このようなノラ君たちが次々と発情中の《ベットゥー》の暮らすマチンドラにやって来る
この日も《バブー》の喧嘩を何回止めたことか・・
ここに来るようになってもう何年になるだろう
あの頃から馴染んできた《カーリー》も《シェティ》も、そして《ピャオリ》も神に召されてもういない
そう・・ 3年前、子犬だった《ピャオリ》は・・
ここで暮らすことを《バブー》に許され、いつも《バブー》に寄り添って暮らしていた
あの大人しく、可愛らしかった黒毛の女の子は、3才という若さで旅立ってしまっていた
マチンドラの人々は、《ピャオリ》を探す魔女に
悲しい顔を向け、言い辛そうに・・ 彼女の死を告げた
前回、皮膚病に侵され、変わり果てた姿の《ピャオリ》を抱きしめ、長い時間を過ごした
その時覚悟をした筈だったのに・・
《バブー》と《ピャオリ》と一緒に過ごした楽しかった日々が目に浮かび
我慢できずに涙がこぼれた