魔女
この4日後、8月24日にはジャナイ・プルニマ(聖紐結び)を控えていて
その時に食される10種類以上の豆が入ったスープをママが作ってくれた
※ ジャナイ・プルニマ
ジャナイというのは身に付けている聖なる紐のこと
ヒンズー教徒や仏教徒たちは、ラクチャ・バンダンと呼ばれる身を守るための黄色や赤い紐を8月の満月のこの日に手首に巻く
ママの娘のルナ、息子のラーズ、そして友人のサムジャナ、アンビカも仕事前にやって来てくれ
ご近所さんや子供たちも集まって来た
その間《バブー》はずっと魔女を見上げていて
魔女の背後では・・
ダッドお気に入りのノラ猫がそんな《バブー》を睨んでいる
隣に住むマサラ梨のおばさんが足を引きずって店にやって来た
(一口大に切った梨にマサラを掛けた料理が得意だから)
え・・ それって、料理とはいわない?
それで魔女は驚いてその腫れた足はいったいどうしたの? と聞いた
すると思いがけない答えが帰って来た
「あなたの《バブー》に噛まれたの・・」
魔女は思わず隣の《バブー》を見た
《バブー》が横を向く
魔女は慌てて《バブー》をマサラ梨のおばさんの方に向かせ
その頭を押さえつけ、一緒に頭を下げて 「ごめんなさい!」 と謝った
マサラ梨のおばさんは、「いいのよ、いいのよ」 と言ってくれた
こんないい人を噛むなんて、《バブー》はいったいどんな勘違いをしたというんだ
マサラ梨のおばさんを見送りながら外に出ると
今回の同行者である画家のおじいさんが絵を描いていた
魔女は子どもたちと《バブー》とで境内を走り回って遊んだ
この日、私たちは暗くなるまで共に過ごした
《バブー》と一緒にマチンドラの神様にお祈りをし
マニ車を回して伽藍を廻り
裏路地で市をやっている知人たちに会いに行って
その帰りに素焼きの市を眺め
マチンドラナートの境内を走り回って遊び
一緒にお使いに行って
ママが食事を作っている間は二人で店番をし
そこでマチンドラの守護神と呼ばれる犬と、変な女の売り子は千客万来の売り上げでママを喜ばせ
それから一緒にご飯を食べ
その後、ふたりで雨のダルバール スクェアを歩いた
それは・・ とても、とても幸せな時間だった