魔女
昼食の後、友人の妹の家に遊びに行った
彼の妹には、ウペンドラとディペンドラという気立ての良い息子たちがいた
そこに彼らの同級生たちもやって来て
お茶の後、見晴らしの良い公園に行こう、ということになった
ぞろぞろと公園に登り
目の前に広がる壮大なヒマラヤを眺めた
が、静かなんだよ・・
この子達、初めての外人にどう接したらいいかわからなくて困ってる
しようがないなぁ
では陽気にネパールの歌でも歌ってもらいましょうか!
ほらほら君たち、譲り合いをしない!
さあ、とっとと歌いなさい!
みんなに勧められて、ミランという男の子が歌いだした
とっても恥ずかしそうに唄ってるぞ
歌い終わったから、魔女は盛大に拍手をした
すると他のみんなも一斉に拍手をした
もっともっと歌いなさい!
今度はみんなでネパール国歌を歌い始めた
これは魔女も知っているから一緒に歌った
何回も歌った
はい、こうなるともうこっちのものです
夕暮れになり、ヒマラヤが赤く輝きだした
みんな一緒にふざけながら坂道を下り、友人の家に向かった
夕食までのひと時を、日本語教師&生徒ごっこをして遊んだ
驚いたことに、彼らはあっという間に日本語を覚えていく
挨拶から短い言葉まですぐに覚えてしまうのだ
終いにはノートを持ち出して来て魔女の言う言葉をネパール語で書き始める
※ ネパール語はデヴァナーガリー文字で表す
それには10種類の母音と33種類の子音があり、日本の『あいうえお・・』
などもそれらの文字で表す事が出来る
ディペンドラ 「日本ではどんな字を書くの?」
魔女 「ひらがな、カタカナ、漢字、という3種類の文字があります」
ミラン 「ひらがなかたかなかんじ!」
少年たち 「ひらがなかたかなかんじ!! ひらがなかたかなかんじ!!」
魔女 「おい、これは早口言葉じゃないぞ!」
少年たち 「はあ~い!」
魔女 「では、会話実践編といきましょう! 先ずI love you ね」
タシ 「えぇ~・・」
魔女 「恥ずかしがらないっ! 『あいしてます』 さあ、言いましょう」
少年たち 「あいしてます!」
魔女 「よろしい、 では次、タパイ デレィ ラムロ チャ 『あなたは とっても うつくし~い 』 うっとりとした感じで言うのよ」
少年たち 「あなたは たっても うつくし~い」
魔女 「『たっても』 じゃなーい! 『とっても!』」
少年たち 「とっても!」
魔女 「よろしい、 では次、 『どうか、わたしとけっこんしてくださぁい 』、この 『どうか』、に気持ちを込めて!」
少年たち 「どぉぉ~か、わたしと けっこん してくださぁ~い 」
友人 「あの・・ 魔女さん、いい加減にしてくれませんか」
魔女 「なにを?」
友人 「みんな、日本語なら僕が教えてあげるから、魔女さんに教わらないで」
少年たち 「やだ! 魔女がいい!!」
魔女 「ほぉ~ら!」
友人 「もう夕食の時間だから終わりにして、君たちは帰りなさい」
少年たちは口々に日本語で 『さようならぁ~』 とか 『またあいしましょー』 とか言いながら手を振って帰って行った
夕食はチキンとタルカリのダルバートだった
すごく美味しかった