魔女
アトリエにとてもユニークな絵を描く子がいる
小学4年生のその子が中学受験に臨むにあたり、2月から受験塾が毎日になるということで
今月限りでアトリエを辞める事になった
「トイレが壊れるほど暴れたのにダメだったんだ・・」
今月の始め、彼女はそういっていつになく深刻な顔で魔女を見上げた
「今月で最後だから、私・・アトリエの猫たちに何かしたくて、それでマフラー編むことにしたんだ・・ ちゃんとみんなの分編むからね」
その子は猫たちに語りかけながら、バッグから何かを取り出した
それは小さなマフラーで、《水玉校長》の分だって
「受験が終わったらまた戻って来れるように頼むからね」
そう言いながら、その子は《水玉校長》の首にマフラーを巻いた
《水玉》はそれを大いに気に入って喜んだ
マフラーを巻いた《水玉校長》に椅子を占領され、はじっこに座って絵を描く生徒
次の週は《ユリぼうず》と《ジンジン》の分だった
しかし《ジンジン》のは少し小さくて、それは《アゾ》のマフラーになった
《ジンジン》のは来週だって
「私のこと、わすれないでね・・」
そう言いながらその子は、自分のジャケットの上で寝ている《ユリぼうず》と、机の上の《アゾ》の首にマフラーを巻いた
《ユリぼうず》にはティアラ風のおまけも付いていた
《ユリぼうず》はこれまた大いに気に入り
その後もずっとマフラーをして毎日を過ごしている
この冬、魔女家の庭ではマフラーをした猫たちが日向ぼっこをし
マフラーをした猫が夜回りを致しております
水玉
俺は夜回り先生の時、そのマフラーをして行く
一度首から取れてしまった事があったけど
ちゃんとくわえて帰って来たぞ
《アゾ》はマフラーをみんなに自慢した
それで《凛》がひどく欲しがったので
魔女が《ユリぼうず》のティアラを《凛》の首に巻いてあげた
《凛》もまた、毎日それをしている
その子は猫アレルギーで
毎回マスクをし、頑張ってお絵かきしてきた
《伐》がニャバーランドに行ってしまった後は
毎週《伐》に手紙を書いて来てお線香と一緒にお墓にお供えしていた
「もう《伐》にお線香もあげられなくなっちゃう・・」
○○ちゃんはそう言って悲しそうにした
だから俺は、その子を引っかいた
「その傷を見るたびにここを思い出せ・・」
(その優しさ、分かりづらいから・・)
だって俺には何もあげるものがないんだもの・・