魔女
ネパール13日目の本日はデイブの家へご招待されていた
ようこさんは疲れて動けなくなってしまい、ホテルで寝ている
朝、ギリンチェ(彼らのレストラン)にラクスマンの妻プナムと娘パラビも集合することとなっていた
去年はラクスマンのバイクでデイブの家に行ったが
今年は妻や赤ちゃんも一緒だからタクシーで行くことになった
何しろデイブの家は遠いんだ
ラクスマン・・タクシー代いくら払ったんだろう、と申し訳なくなって
「帰りは魔女が払うから」 と言ったら
「こっちが招待したのに、何を言出だすんだ!」 と叱られた
いや・・招待したのはラクスマンじゃなくてデイブだから・・
いつもの大きな犬とデイブの息子バブ(小さい子はみなこう呼ばれる、魔女もいつもこの子をそう呼んでるから名前を覚えない・・)が出迎えてくれた
以前ここで書いたと思うが
この息子、去年までは超我儘な子だった
その我儘のせいでラクスマンと魔女に酷く虐められ
それが相当応えたんだろうな
その後すっかり良い子になった
デイブの妻ギタは天然ボケで
当時バブには子守がついており
その子守が甘やかすものだから自分の言うことが何でも通っていたのだ
それでチョコレートを独り占めし、魔女にあげなかったという、許すベからざる罪により
この子は私たちによってこっぴどく虐められた
それは多分生まれて初めての辛い経験だったかも知れない
今では魔女が欲しいという物は何でも素直に渡す可愛い子に変身したバブである
それにしてもタライ地鶏は美味かった
ヒナイ地鶏よりも美味かった
だからバブの分まで食べてしまった
バブはちょっと泣きそうになったが、魔女に睨まれてそれをぐっとコラえた
一人っ子だから情操教育のためにパラビの面倒も見させた
初めての赤ん坊に最初は緊張して戸惑っていたが
それでもバブはバブなりに一生懸命パラビの面倒を見た
「バブ、怖がらないで面倒を見なさい!」
バブが頑張ったからサービスで遊んでやった
バブは嬉しそうに遊んだ
食事が終わると外に出てくつろいだ
暖かな日差しの中、ラクスマンに抱かれたパラビがマリーゴールドの花に手を伸ばし
妻のプナムがそんな様子を優しく微笑んで見ている
魔女はそんな笑顔のプナムが大好きだ
天然ボケのギタが不器用に微笑みながら魔女の手をとって家の横手に連れて行き、そこの花を指差す
「何の花?」 と訊ねたら、「花・・」 と答えた
「だから何という名前の花なのよ!」 と言ったら
「花は花だ!」 と逆ギレされた
魔女はこんなギタが大好きだ
すっかり良い子になったバブが両手に持った果物の皿をこぼさないようにと、恐る恐るの摺り足で運んで来た
ラクスマンが慌ててそれを受け取る
おお!アナール(ザクロ)だ!!
前にも書いたが、ネパールのザクロは種ごと食す
デイブが 「アナールは魔女の定番でしょ」 と笑う
デイブは到着翌朝にはレストランにザクロを用意して待っていてくれる
そしてカトマンズ最後の食事の後にも必ずこれが用意される
きっとデイブは、魔女が大好きなザクロをまるで猿のように食べるのを見て内心密かに面白がっているのだ・・
「僕はウェイターをやっていたことがあるから、こんな風に持つのは得意なんだ! 魔女が食べ終わるまでだってずっとこうやって持ってられるんだから!」
と、つまらない自慢するラクスマン 右は良妻のプナム
楽しい時間は瞬く間に過ぎ
ラクスマンもデイブも仕事に戻さなきゃ
夕食時の店が込み合う前にデイブの家を後にした