行方不明猫《ベス》の顛末 Ⅴ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

ジョン ブリアン


     まじょねこ日記-Jyon brian 09831

トミニャガさんの足音が、外階段をジタバタと近づいて来た

僕らは思わず後ずさりをした


トミニャガさんは階段の途中から興奮した声で言った


トミニャガさん 「《ベス》が見つかりましたの?!」


魔女 「はい、みんなで頑張って見つけました!」


トミニャガさん 「《ベス》は、《ベス》はどこにいますの!」


魔女 「この扉を開けると・・」


トミニャガさん 「《ベェ~スゥゥゥゥ》!!!」



トミニャガさん 「・・・」


魔女 「どうなさいました?」


トミニャガさん 「・・なんですの? これ」


魔女 「《ベス》・・ ですの」


トミニャガさん 「・・ ・・ うそ ・・」


俺ら 「・・」


トミニャガさん 「どこが・・ 頭・・ どっちが頭ですの・・」


魔女 「えっと・・ どっちかなぁ」


トミニャガさん 「こ、こんな姿になって・・ 

         《ベスゥゥゥゥゥー》あせる あせる


僕 「抱きしめてるの・・ お尻じゃない?」


ジンジン 「そう?」


トミニャガさん 「あれ・・ どっち? こっち? 

             うげえぇぇぇー !!


魔女 「どうしたんです!」


トミニャガさん 「噛み付いたぁー ビックリマーク


魔女 「じゃあ、そっちが頭ですね!」


トミニャガさん 「痛あーいあせる 痛あーいあせるあせる


俺 「おい・・ 血が出てるぞ」


僕 「ずいぶん噛み付いたね・・」


トミニャガさん 「痛あーい! 痛い! 痛いっ!!」


魔女 「薬を持って来ます! それと暴れないように《ベス》をタオルで包みますね」


トミニャガさん 「ちょっと待ってえ~!」


魔女 「はい・・?」


トミニャガさん 「これ・・ 本当に《ベス》ですの?!」


魔女 「お気の毒ですが・・ 《ベス》なんです・・」


トミニャガさん 「私に噛み付くなんて、おかしいですわ!」


魔女 「絡まった落ち葉や枝で目のあたりが塞がれ、誰だ誰だか、何が何だか見えないんですよ・・きっと・・」


トミニャガさん 「あ・・ そうか」


水玉 「んなわけないだろう・・ 飯はのとこにはまっしぐらに行って食ってたぞ」


トミニャガさん 「え・・ 《水玉》ちゃん、何か?」


魔女 「あ、《水玉》は、優しい飼い主を噛むなんて、余程何も見えないんだろうな、って、 で、早くきれいになって久し振りにトミニャガさんの美しい顔が見たいんだろうな、 なにはともあれ見つかって良かったぁ~、って・・」


トミニャガさん 「あら・・ 《水玉》ちゃん、そんなに長くしゃべってらっしゃったっけ?」


魔女 「そう、《水玉》って、うんと早口なんです!」


水玉 「なんて女だ・・」


トミニャガさん 「さあ、《ベス》、お家に帰りましょうね、 それでは魔女さん以外!の、みなさま、ありがとうございました」


魔女 「トミニャガさん、報酬をお忘れなく!」


トミニャガさん 「分かってますわよっ!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


タオルに包まれた《ベス》は・・

トミニャガさんの腕の中で恐ろしい唸り声をあげて暴れた

トミニャガさんはそれを必死で抱えて帰って行った


《ベス》は激しく唸っていて・・

その声はいつまでも僕らの所に聞こえていた


《涼子》が草むらから飛び出して《ベス》たちの後を追った

けど、暫く追ったところで立ち止まってしまった


そして《ベス》が帰って行った方をいつまでも見詰めていた

外の電気(外套)が、《涼子》の淋しそうな背中を照らして・・


僕らと一緒にいた《アゾ》が《涼子》のところへ歩き出した

それから《涼子》の後ろにちょこんと座り・・

いつもの困り顔で、話しかけた


アゾ 「《り、りょこちゃん》・・」


涼子 「・・」


アゾ 「《り、りょこちゃん》 い、いっしょに あそぼ・・か」


涼子 「・・」


アゾ 「《ア、アジョ》と あそんで くだしゃい・・」


涼子 「・・」


アゾ 「お、おばけ やっしきで いっしょに・・ いっしょに・・」


涼子 「・・いいよ」


アゾ 「い、いいですかね! あっそびますか?」


涼子 「行こう・・」


そう言って振り返った《涼子》の顔は泣き顔だった


《涼子》と《アゾ》は、俺らの横を通り過ぎ・・

二人並んでお化け屋敷の庭に向って行った