魔女
先日《バブー》が語った工事現場での生活
それを受けて、魔女は翌日、久し振りに駅前まで足を延ばした
これは5日前の話だ
8月13日、魔女は駅前で大規模に行なわれているの再開発工事を見ていた
小さな《バブー》が重機に追われながら暮らしていた現場だ
![まじょねこ日記-Babu](https://stat.ameba.jp/user_images/20090818/20/majo-cats/1b/1e/j/t02200336_0350053510235772904.jpg?caw=800)
《バブー》と出会った瞬間
《バブー》が暮らしていた頃とは、その様子が一変していた
そこには大きなビルの骨組みが出来ていた
そして、地面はすっかり姿を消していた
駅に向って左側が工事現場、右には様々な商店が入った仮ビルがある
その正面、線路際に青緑の金網が張ってある小さな一角が見える
たぶん、そこが大雨の日に《バブー》が逃げ込んだ所だろう
それに平行して車道があり
駅の昇降客の殆どは車道とは別に、工事現場と仮ビルの間の細い道を行き交う
この車道沿いに知り合いが働く店があって
昨日はその人を訪ねようと思ったのだ
その駅前再開発工事に伴って・・
長きに渡り代々この地で生き、暮らしてきた多くのノラ猫たちが追われる事となった
開発現場の駅から一番遠い場所にいた茶トラの大家族
彼らは、工事が始まり、現場を取り囲んだ高いフェンスにある出入り口の中に佇んで、いつも道を行き交う人々を見ていた
たぶん、それまで食事を与えてくれていた人を待っているのだろう
仔猫たちはやせ細り、その顔は日々汚れていった
工事が進むと、彼らは現場を出て、通りを渡り細い裏通りの空き地に移動した
この時、猫たちの数は3分の2ほどに減っていた
少し経つと、この空き地に機械が入った
地面を掘り返し、ここは駐車場に変わった
猫たちは散り散りになっていった・・
この開発工事現場には、実にたくさんのノラ猫が住んでいた
住処を失い、街中であるため行き先も儘ならない猫たちに心を痛めたのが、再開発で店をたたんだ一人の商店主であり
その方の要望もあって、彼らの救出に尽力したのはあるボランティアの方であった
人に慣れないノラ猫を必死で捕獲し、飼い主を求めて日夜奔走なさった
そのご苦労は如何ばかりかと思う
人間の豊かさや便利のために犠牲になり突然住処を追われた多くの猫たち
そんな彼らの中に《バブー》もいた
今回駅前で働く知り合い、そしてボランティアの方とそれを手伝っていらした方などからの当時の《バブー》を考察する
知り合いの話
工事現場から逃げて来た猫の何匹かは川の方に移動したようだ
しかしこの辺りから離れない猫も数匹いた
その中には2匹のボスらしき大きな猫がいた
この2匹は工事が始まっても自分が住んでいたらしい所から立ち退こうとしなかった
茶トラの仔猫(《バブー》)は、それまで見掛けたことがなかった
その子は突然現れた
縄張りを失った他の猫たちは、その子を追い払う事に関心がなかった
そんな余裕さえなかったようだ
その子はいつも工事現場をうろついていた
小さな仔猫だったから、現場の人間達もさほど関心を持っていなかったようだ
その仔猫は人々が行き交う中、人間の足元で必死に鳴いていたりもした
それを大きな三毛猫が鳴いて制し、フェンスの中に入るよう促していた
そんな様子から、この仔猫はここで育った猫ではない気がした
商店の人の話
工事現場から追われた猫たちが何匹かうろついていたが
茶トラの仔猫はそれまで見かけたことがなかった
時折行き交う人たちを見上げて鳴いてた
警戒心の薄い猫だと思った
ボランティアの方の話
工事現場で、駅前の通行人を誘導するガード ウーマンの方がノラ猫たちに気を配って下さっていた
茶トラの仔猫はここを立ち去ろうとしない中の1匹である大きなメスの三毛猫に面倒を見て貰っていたようだ
私たちがその三毛猫に食事を与えに行くと、その猫は自分に与えられた食事を仔猫に食べさせていた
商店の人たちは、仔猫は突然現れたと言った
仔猫が通行人の足元でしきりに鳴いている時もあった
私たちはこの子の保護に、食べ物を入れた檻を置いたが、その子はなかなかやって来ず、諦めて帰ろうとした時、ガード ウーマンの方が茶トラの仔猫が工事現場から現れた事を知らせてくれた
私たちはその子を檻に追いやり、保護した
あの頃・・
大規模な工事現場で、行き交う重機の前に座り、何があってもそこを動こうとしなかった2匹の猫がいた
私は反対側の国道を運転する時、彼らのそんな姿を工事車両の出入り口から何度も見掛けた
その1匹は《バブー》に自分の食事を与えていたあの三毛猫だった
彼らは私がこれまで見たどんな人間よりも堂々としていた
地面が揺れ、声も聞こえないほどの音が鳴り響く工事現場の只中で、人間の都合に屈する事無く座り続けたあのボス猫たちの姿が・・
私の脳裏に焼きついて離れない