水玉
《凛》は、今何でも知りたい盛りだ
特に夕方魔女が台所でやるお食事の仕度が今の一大関心事になっていて・・
魔女が台所にいる間は、ず~っとくっついて質問攻めだ
凛 「コレ ナニ?」
魔女 「ゴーヤ」
凛 「ゴーヤ・・ ナニ?」
魔女 「野菜だよ、もらったのよ」
凛 「ヤサイ・・ ナニ?」
魔女 「・・」
凛 「ナニ?」
魔女 「エビ」
凛 「エビ・・ キタ?」
魔女 「本日の特売だったの・・」
凛 「ホンジツノ・・ ナニ? トックバイ・・ ナニ?」
魔女 「・・」
凛 「コレ・・」
魔女 「金タワシ」
凛 「カナタ ワシ・・ チュキ」
魔女 「・・」
凛 「カナタワ・・ ナニ スル?」
魔女 「鍋を洗うの」
凛 「ナベ・・ ナニ?」
魔女 「これが鍋!」
凛 「ナベ・・」
凛 「アラウ・・ ナニ?」
魔女 「もうあっちに行って!」
凛 「ヤダ・・ コレ ナニ?」
魔女 「ナイフ!」
凛 「ナイフ・・ タベル!」
魔女 「ナイフを食べないっ!」
凛 「オイシイ ニオイ スル・・」
魔女 「美味しい匂いがしてもナイフは食べたりしないの! もうっ、邪魔!」
凛 「ヤダッ!」
魔女 「まったく邪魔な子猫だ・・」
凛 「コレナニ? コレナニ? コレ ナニスル?」
魔女 「もう・・ うるさいっ!」
これが毎日のことで・・
そういえば《バブー》も小さい頃は同じことやってたなぁ
魔女 「あれ・・? 《凛》が静かになった・・」
凛 「チッチ・・ チッチチ・・」
魔女 「ちょっと、なにやってるの・・」
凛 「チッチチ・・ チッチッ・・ チッチッチッ・・」
魔女 「こらあ~ 持ち去るなぁ!」
魔女 「既に3個の金ダワシが行方不明になってるんだ・・」
僕 「《凛》のおもちゃ用に金タワシ買ってあげたら?」
魔女 「何で女の子って料理作るのをああやってジロジロ見るんだろうね」
僕 「この分じゃ今にお手伝いができるようになるかもよ」
魔女 「冗談じゃないわ!グーの手で海老の皮を剥くって言うの? 剥く前に食べちゃうに決まってるじゃない」
僕 「でもこれだけ毎日台所で魔女のやることなすことを見ていれば、棚の中に入っているものなんて全部分かってるんじゃないのか?」
魔女 「全部知ってるみたいね」
僕 「じゃあさ、『あれ出して』 とか頼めるじゃない」
魔女 「何がどこに入っているか知っていると何が起こると思う?」
僕 「何か起こるの?」
魔女 「魔女の手がぬちゃぬちゃになるのね」
僕 「あぁ・・ そうか・・」
魔女 「扉をちょっとでも閉め忘れるとさ・・」
僕 「またやられたのか?!」
魔女 「はい、 この有様よっ!」
僕 「わっ! ぬちゃぬちゃ!!」
棚の中にしまってあった新しいマヨネーズに・・
例のごとく小さな歯形の穴がいっぱいついていて
魔女がそれを絞る度に、その穴からにょろにょろと出てくるマヨネーズが・・
魔女の手をぬっちゃぬっちゃにし
昨日もそれで魔女は二重の災難を受けねばならなかった訳で
それはついでに魔女のご機嫌もむっちゃむっちゃにし・・
台所では毎日が大変です・・