ネパール日記 ~ Frustration Ⅰ~ | まじょねこ日記

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よく人に、ネパールの治安はよくないんでしょう、と聞かれる

私はそれに対して、いつもどう答えるべきか悩む


どこに行っても、私はそんな印象を全く受けないけれど

外務省発表の海外安全情報ネパールによれば

地域によって 「渡航の延期をお勧めします」 とか

「渡航の是非を検討してください」 などと書かれており

カトマンズは 「十分注意してください」 となっている


あれで十分な注意が必要なら日本だって同じじゃないか・・ と思ったりする


違いがあるとすれば

ネパールではスリや置き引きに注意し

親しげに話しかけられ、誘われても容易についていかない

上手い話に乗らない

道を渡る時は十分注意して

といったような基本的な事ばかり


反面、日本では様々な面で安全が保障や保護されている(交通法規、保険、裁判制度の確立、人権など)ので注意が散漫になっているきらいがある

だのに、突発的に理由もなく襲われることが少なからずある

日本では、自分の身は自分で守る、という基本的な思考が緩慢になってしまう


つまりネパールに於いては、自分の身を守るきちんとした努力があれば、ある意味日本より安全と言える

それは的確な状況判断という最も人間的な思考に基づく


そこでは人間として生きている感じが与えられ

動物的本能が生き生きとする

これは危なそう・・ これは大丈夫そう・・

そんな不確かな根拠であっても、結構あたっていたりする


日本では滅多にお目にかからないもので、ネパールにはバンダというものがある

ここでは何かにつけてこのバンダといわれるストライキを行う

それだって余程殺気立っていなければ問題ない


その他にちょっとした暴動も起こる


数年前のムルパニ村の帰り道

その時はラクスマンとカズリさんが一緒だった


途中の大通りに差し掛かったその先で暴動が起こっていて

乗っていたバスがそこから先の通行止めで進めなくなり、乗客が降りる羽目になった


暑いし、こんな所でかよぉ~、とうんざりしながら

すまなそうな顔をした罪もないバスの運転手さんを横目にバスを降りた


その先ではたくさんの人だかりがあって

一緒になって覗いてみると道から一段低くなっているところに

赤い高級車が落とされ、横倒しになっている


人々の話によると、道を横断中の小学生の女の子を、政府の役人を乗せた中国の高官が轢き殺してしまったという

その車がそのまま走り去ろうとしたので、怒った人々がそれを阻止し

集まって来た人々により、車は崖下に落とされたというのだ

乗っていた高官たちはどうやら逃げ出してしまったようだ


こういうことは人々の日頃から溜まったフラストレーションに大いに火をつける訳で


そんな話をまわりの人たちから聞いていると

カズリさんが 「もう帰ろうよぉ」 と言い出した

ラクスマンは 「もうちょっと見てようよ」 と動かない

カズリさんは野次馬するのに全く興味がなく

ラクスマンは野次馬するのが大好きだ


カズリさんが歩き出し、続いて私たちも来た道を戻っていると

向こうから投石のための壊したブロックを抱えた子供や

火炎瓶を振りかざした青年たちが何人も走って来る


私たちは3人並んで道の真ん中を歩いていた

みんな不満が溜まっているんだなぁ・・

と思いながら歩いていた


そんな事を考えていたものだからか

ちょうど前から大きなブロックを持って走って来る子供を見て微笑んでしまった


するとやって来たその子は

私たちの前まで来ると、立ち止まって・・

「ナマステ」 と笑顔で挨拶をした

私が外人だから

「ようこそ、いらっしゃいませ」

の感じで、ブロックを抱えたまま、にっこり笑って挨拶をし

また勇ましい顔に戻って現場へ向って走り去った


次に走って来た青年たちは、手に手に火炎瓶を持っていた(まだ火はつけられていない)

彼らもまた、側まで来ると立ち止まり、にっこり微笑んで挨拶をし、走り去る

私はこの時、手に手に凶器を持った人たちと何度も挨拶を交わさねばならなかった



昔、山の中でマオイストに出会ってしまい

例に漏れず言われた

「ここを通るのならお金を徴収する」


あぁ、例外が欲しい・・

私は訴えた


「お金を払ったらカトマンズに帰るバス代がなくなっちゃうよ」

「それより貧乏で食事もろくに取っていないから今にも倒れそうなんですけど・・」


そう言ったら、ご飯を食べさせてくれ、食料を持たせてくれ

お金も取らずに行かせてくれた


大方の国民の敵は悪政をなす政府なのです

決してそれ以外ではない


幸いこのような人々の大部分は、私たち外国人を客人として扱ってくれる

旅行者にとって、基本的な自衛手段さえきちんと身に付けておけば良い国だと私は思うけど・・ 


日本を基準に考える人に対しての説明は難しい