ジョン ブリアン
昨日の朝、僕は魔女が起きるのをが待ちきれなくて
お部屋の中を行ったり来たりしていた
魔女のお部屋のドアが開いて、それから閉まる音がした・・
僕は走って行ってリャビングのドアにしがみついていた
魔女が階段を登って来るのが待ちきれなくて
僕はドアに手をついてぴょんぴょん跳ねていた
僕 「魔女! 魔女!!」
魔女 「どうしたの?」
僕 「お話がいっぱいあるの!」
魔女 「そのお話は長いの?」
僕 「長いよぉ~、聞いて!」
魔女 「ごめん!今から仕事なんだ・・」
僕 「じゃあ仕事が終わったら言うね!」
魔女 「この仕事が終わったらすぐに画材屋さんに行って、そのまま少し運動してそれが終わったら額を届けに行って、それからみんなのご飯をまとめ買いしてから帰って来る」
僕 「じゃあ・・帰って来てからでいいよ・・」
魔女 「帰ったらすぐにアトリエが始まるの・・ だから夜にお話を聞くね、ごめんなさい」
僕 「夜まで待ちきれないよ! 魔女はもっと早起きしなきゃダメでしょ!」
魔女 「本当にごめんなさい・・」
魔女はジタバタと仕事をし、ジタバタと出て行った
帰ったらすぐにアトリエが始まり、それが終わって僕らに夕食をくれ、急いで人間の食事を済ませて
やっとピャソコンの前に座った
僕は早くから、ほっぺをぷーぷー膨らませてその隣の日記を言う猫の席に座っていた
それで僕は日記を言い始めたんだけど
昨日一回では言い終わんなくて・・
それでね
どんなに待っても《伐》はやって来なくて
僕たちはしんみりとして寝るしかなかった
だけどね!
《伐》はちゃんとやって来たんだ
僕らの夢の中(と思う・・)にやって来たんだよ!
僕は悲しいまま寝たんだけど・・
「おい、《ジョン ブリアン》」
僕 「・・?」
「俺に頼み事があるんだろ」
僕 「・・ 《伐》、 来てくれたんだね!!」
伐 「当たり前じゃないか」
僕 「僕たちテリャスでずっと待っていたんだよ」
伐 「おまえたちのバカさ加減が非常に面白くてな、それを見てお腹を抱えて笑っちゃってたのさ」
僕 「《伐》はもうここには来てくれないのか思って・・ 僕、うんと悲しかったんだよ!」
伐 「それは何か! 俺がおまえたちの事を忘れちゃったとでも思ったのか! そんな訳ないだろう・・ 俺らは、みんなの日記を毎日楽しみに読んでるんだぞ」
僕 「そうだったね! けど・・《伐》、字が読めるの?!」
伐 「・・・てか、聞いてるんだぞ」
僕 「そうか! それでね、《伐》にお願いがあるの」
伐 「わかってるさ」
僕 「知ってるの?」
伐 「だって、毎日日記を聞いてるもの」
僕 「そうか!」
伐 「それでさっき、《ボンネット》のお母ちゃんの事を《ボンネット》に教えてやろうとしたらさ・・ あいつ俺を見てひどくビビリやがったんだ、俺がいくらでっかくて真っ黒で初対面だからって、そりゃあないだろう・・ってくらいにな」
僕 「《ボンネット》、気が小さいから・・ いまだにお部屋から一歩も出られないんだ、魔女はなんとかいう手術が早すぎたんじゃないかって気にしてるの」
伐 「部屋から出なきゃそれに越した事はないさ、やたら外をうろついて俺みたいになっちゃいけないからな」
僕 「その話は聞きたくない」
伐 「ごめんな・・ それでさ、《ボンネット》の母ちゃんの事、おまえに言っておくから、おまえから《ボンネット》に伝えてくれ」
僕 「わかった」
伐のお話
《ボンネット》の母ちゃんは、人間の家の物置の裏で赤ん坊を産んだ
だけどしばらくしてそこの人間に見つかりそうになった
それで引越しをしなければならなくなり
急いでみんなが暮らせる安全な他の場所を見つけた
その夜、母ちゃんは人間たちが寝静まってから、子供を一匹ずつくわえては新しい住処に運んでいた
だけど、そこは安全な場所じゃなかったんだ・・
3匹目を運んで、最後の子を迎えに行こうと歩き出した時、大きなオス猫の姿が見えた
母ちゃんは自分が最後の子を迎えに行っている間に、連れて来た子供たちが恐ろしい目に遭うのを恐れた
母ちゃんはその3匹の子供たちを守るために子供たちのいる所に引き返した
大きなオス猫は時折その辺りをうろついたので、母ちゃんは動きが取れなくなってしまった
もちろん残してきた一匹の子供の事を思うといても立ってもいられなかった
しかしどうすることも出来なかったんだ
雄猫の姿が見えない時もあったから、迎えに行こうか・・と思っても、自分がいない間に3匹の子供が襲われたらどうしようと思うと、どうしてもそこから動く事が出来なかった
そんな思いで何回かの夜が過ぎた
その日は雨で・・
朝から雄猫の姿はなかった
母ちゃんは決心した
今夜こそ残してきた子を迎えに行こう、って
そしてその夜のうちにまた引越しをしよう、って
深夜、母ちゃんは雨の中、残りの子を迎えに行った
だけど子供はどこにもいなかった・・
頭が混乱して、死ぬほど鳴いた、って・・
けど、どんなに鳴いて呼んでも子供はどこにもいなかった
時々3匹の子供の様子も見に戻りながら
何回も往復して残してきた子を探したって
朝近くになって・・
母ちゃんは諦めた
明るくなる前に、3匹の子供を連れてもう一度引越しをしなければならないから
僕 「《ボンネット》はお母ちゃんに捨てられたんじゃなかったんだね!」
伐 「そうだよ」
僕 「《ボンネット》のお母ちゃん・・ かわいそう・・」
伐 「今でも気にしてたぞ・・ だから俺、《ボンネット》の母ちゃんに伝えておいた」
僕 「《ボンネット》のことを?」
伐 「そうだよ、『最後に残して来た子供は、今他の猫たちと、人間と一緒に幸せに暮らしてるから安心していい』 って」
僕 「お母ちゃんは喜んでた?!」
伐 「最初は違ったな」
僕 「どうして?」
伐 「人間と一緒に・・ってとこで飛び上がるほど驚いてさ 『人間と一緒?!』 って、 それでもって、『あの子は、いじめられているの?!』 って」
僕 「それで幸せに暮らしてる、って言ったら?」
伐 「そりゃぁ信じなかったよ」
僕 「それで?」
伐 「その様子を見せてやりたかったけど出来ないしさ、それで俺は毎日の様子を詳しく言ったさ」
僕 「そしたら?」
伐 「最後には 『あの子もそんなに大きくなったのね・・』 って、喜んでいたよ。 『みんなと仲良く暮らすのよ』 って言って欲しいってさ。 他の兄弟は2匹がひとり立ちしたってよ。 それで女の子だけが一緒にいるって」
僕 「よかった・・ 《ボンネット》のお母ちゃんが元気で」
伐 「《ボンネット》に教えてやれ、おまえは捨てられたんじゃないってな、母ちゃんは《ボンネット》の事を忘れてなんかいない、って」
僕 「うん! 《ボンネット》、うんと喜ぶね!」
伐 「じゃあな、日記、頑張れよ、 《今日ちゃん》も《インジゴ》も、俺も毎日楽しみにしてるからな」
僕 「《伐》、ありがとうね・・」
僕がそう言うと、《伐》はふぁ~と消えた
僕は早速《ボンネット》に言わなくちゃ、と思った
だけど《ボンネット》は眠っていたから朝に言う事にした
そして僕は、魔女が起きる前に《伐》のお話を《ボンネット》に聞かせたんだ