ジンジン
今日の夕方
日記を言う猫がいつもするように
僕はピャソコンをカチャカチャする魔女の隣の椅子に座って、今日の出来事をお話していた
今日は、僕が日記を言う事にしたんだ
それは今日の昼間の出来事・・
《アゾ》の心温まるお話がしたかったから
僕のお話がちょっと長くなっちゃって
みんなが落ち着かなくなっていた
6時が近くなってきたんだ
6時は僕らの夕食の時間
《水玉》と《ユリぼうず》は部屋の時計を見て時間を知るけど
その他の猫は体の中の時計で時間を知る
軍団がうろうろし始め、《涼子》が玄関で鳴いている
日記が僕らの夕食の時間と一緒になっちゃう時は
魔女は日記を中断して夕食にし、その後また日記の続きを言ったり書いたりするだけど・・
今日は、もうちょっとで終わるから・・ と魔女が言って
僕らは夕食を待つことになった
お腹が減った《ユリぼうず》は、魔女の真後ろにあるストーブの乗っかってアピールしているんだけど
魔女からは全く見えないため、何の意味もない
《水玉》は魔女の足元でこっちを見上げている
《アゾ》はうろうろしており
その他の猫はそれぞれの位置から、大きな目をしてじぃぃぃぃぃ~っと魔女を見詰めている
僕がやっと言い終わって
魔女が僕はもう椅子から下りていいよ と言って
ピャソコンに向って残りの何かをやっていた
その時、魔女の机の裏から《アゾ》が這い上がって来て、机によじ登り
ピャソコンの裏から気難しい顔を覗かせた
うるさく言うと魔女に叱られるから
(ご、ごっはんは まだですか・・ ごはんは!)
の気持ちをしっかりと顔で表しているんだ
こんな風に覗くんだよ・・
「うっとおしい・・」
魔女はそうつぶやいて相変わらず日記の事をしていた
ご飯の時間が完全に過ぎた
魔女がみんなに
「もうちょっとだから我慢してね」 と言った
だから僕も含めてみんなは、ただじぃぃぃぃぃぃ~っと魔女を見詰めていた
ところが《アゾ》は
これ以上我慢は出来ない、って言うみたいな顔になって
魔女とピャソコンの間に入って来た
《アゾ》の顔と態度は
(も、もう 日記は やめて ごっはんにして もらいたいのだが!)
というのがありありと表れていて・・
魔女 「ちょっと、そこをどいてよ!」
アゾ (ご、ごっはんは どーでしょー!)
魔女 「もう終わるから!」
アゾ 「ご、ごはんなんだが!」
魔女 「いいからどいて!」
アゾ 「ご、ごっは・・」
魔女 「あ・・あっ・・ うわあー!!!」
僕 「どうしたの!」
魔女 「・・」
僕 「魔女、どうしたの!」
魔女 「全部・・ 消えた」
僕 「何が?」
魔女 「今まで書いてた日記が・・」
僕 「ええっ~! 日記が消えちゃったの! どうしてっ!」
魔女 「《アゾ》がパソコンのどこかを踏んだ・・」
魔女が慌ててピャソコンをガチャガチャしたけれど
日記はどこにもなかった、って
「こ、このお~!!」 と言って椅子から立ち上がった魔女は、目の前の《アゾ》を投げ下ろした
気が治まらない魔女は《アゾ》に怒鳴った
僕 「僕・・もう一回なんて日記言いたくないよ・・」
魔女 「魔女だってもう一回なんて書きたかないよ!!」
魔女はそれからしばらくの間本気で怒っていた
部屋の中をめちゃくちゃに行ったり来たりして・・
それで少し落ち着いたところで僕らに夕食をくれた
それから人間の食事も作って
やっとこの家全員の夕食が終わった
僕 「魔女、日記・・ どうするの?」
魔女 「おい《アゾ》、時間を返せ」
アゾ 「ど、どやって 返せばええかの? さあ どーでしょう・・」
魔女 「こ、この・・ ろくでなしがあ~!!」
僕 「今日は日記やめる?」
魔女 「・・これから書くよ」
僕 「魔女、さっき僕が言ったお話、まだ覚えてるでしょ」
魔女 「んなもん忘れた、完全に忘れた!」
僕 「心が温かくなる《アゾ》のとってもいいお話だよ」
魔女 「心が瞬間冷却した事以外何も覚えていない・・」
僕 「本当に忘れちゃったの?」
魔女 「あの瞬間、《アゾ》の話はどこかに吹っ飛んだ」
それから僕は魔女に、さっきしでかした《アゾ》のろくでもない話を言え、と言われた
それで僕はこうしてまた魔女の隣の椅子に座らされ
そのろくでもない話をしているわけで・・
今日の日記は、《アゾ》の感動話だったはずが
本猫の失態からそんな感動話もどこかに吹っ飛んで
僕の言った事も全くの無駄話になってしまい・・
本日2回も日記を言わされた僕は
ものすごく疲れてしまった・・