魔女
昨日、東京の王子に行った
ちよちゃんと一緒に歩いていると、祭囃子が聞こえ・・
つられてそちらに足を向けると
数件並んだ屋台の先に稲荷神社があった
装束稲荷神社
大晦日、日本中の狐がここに集結し、装束を整え
大晦日から元日に掛けて
この装束稲荷から王子稲荷神社に向けて練り歩くのだと
ちよちゃんがそう教えてくれた
大晦日に着物を着て行けば
魔女も狐に化けられるそうな・・
和風からはかけ離れたこんな顔でも
狐のお化粧を施せば何とかなるかなぁ
本日の目的を後回しにし、王子稲荷神社まで歩いてみる
ここも詣でる人々で賑わっていた
何体かのお狐様を眺めながら
途中で願掛けの石を持ち上げたりもしながら
神社を一巡りして帰りの鳥居をくぐった
ここから徒歩で隣町に向う
その街の、いつも通る細い路地で
私達はいつも同じ場所で立ち止まり
一匹の猫の姿を探す
前にも書いたが・・
火事で家も家族も失ったと思われる茶トラの猫だ
初めて会った時は冬で
焼け爛れた耳と顔の一部が痛々しかった
それでも火傷の顔を一生懸命に擦り付けて来るので
痛いだろうに・・ と不憫に思ったものだ
このまま痩せていったり、怪我が治らなかったら
連れて帰ろうか・・ とも考えた
次に会った時、まだ耳の火傷は治っていなかったものの
よく太ってはいたので安心した
それからも何回か会って、少しの間遊んだり撫でたりもした
そして昨日・・
私達が立ち止まると、いつものようにこちらにやって来た
そして、飼われている猫がやるように
人の手を痛くしない程度に噛んだり引っかいたりしてじゃれた
耳は火傷により、もう毛が生える事はないと思われるものの
ほぼケロイド化して、一年前程の痛々しさはなくなっていた
以前にも増して太っているようにも思われる
不憫に思った誰かがご飯をくれているのだろう
この猫がいつもいるこの路地の少し先には
火事で焼けてしまった一軒の家があった
家があって、人がいたその場所は
今は駐車場に変わってしまっている
この猫は家があった場所が見える所にいつもいる
そしてそこから離れようとはしない
誰かを待っているのかい・・
抱き上げた猫から
暖かなお日様の匂いがした
この子は、そのまま腕の中で眠ってしまった