水玉
《マタタビ癖の悪い猫》
すっかり猫が変わってしまった《ジョン ブリアン》は・・
再びマタタビをなめたため
更に目つきが悪くなり
部屋の隅でぺちゃぺちゃと利き手を舐めている《ユリぼうず》を睨んでいたが
そのうち、まるでトラが威張って歩く時のように、肩を片方ずつ大げさに揺らしながら、もったもったと近づいて行き
舌を出したままふと顔をあげた《ユリぼうず》に・・
襲い掛かった
《ユリぼうず》の喉を噛み、部屋の中を引きずりまわし始めたんだ
《ユリぼうず》が茶色の手をバタつかせながら引きずられてる
《ユリぼうず》の 「ぴゃ～ぴゃ～！！」 と叫ぶ声が部屋に響いた
反射的に《ボンネット》はコタツの中に飛び込み
焦った声をあげて、そこの中から《バブー》にもコタツに入るようにと言った
それまで口を半開きにして突っ立っていた《バブー》は
その声で我に返り、体を低くしてコタツに入って行った
《アゾ》は慌てて掛け軸のある高い場所に飛び乗った
俺らは、すっかりしらふに戻ってしまっていた
「《ジョン ブリアン》、止めなさい！」
魔女が大声を出した
それでも止めないので、むりやり《ユリぼうず》から引き離す
《ジョン ブリアン》は鼻をフガフガ言わせて
今度は《ジンジン》を追い掛け回した
《ジンジン》はゴミ箱や椅子まで倒したりしながら部屋中を逃げ回った挙句
スタミナ切れでヨタったところでお尻を引っ掻かれた
そんな様子をコタツからちょっぴり顔を出して
好奇心旺盛な《バブー》が目をクルクルさせて見ている
俺はなんだか《ジョン ブリアン》が怖くなっていた
誰かを怖がるなんてめったにない事なのに・・
俺・・どうした？
《ジンジン》のお尻を引っかいて気が済んだのか
《ジョン ブリアン》は《ジンジン》を追い掛けるのをピタリと止めて
俺の方を振り返った・・
え・・ 俺？
ボ、ボスなんだけど・・
うぇっ！ 《ジョン ブリアン》が飛んだ！
俺に向って飛んで来た！！
せ、背中に飛び乗り・・ かじってる！！
痛い！ 痛い！！
俺は背中の《ジョン ブリアン》を振り落として逃げた
魔女の後ろに逃げた
《ジョン ブリアン》は魔女を回り込むようにして後ろの俺に近づく
魔女は俺を後ろに隠すようにして回るから
俺も魔女の背中にくっついてグルグルと回って
だから《ジョン ブリアン》も俺を襲おうと魔女のまわりを回っているうちに・・
どうやら気持ちが悪くなってきたみたいで、えずき始めた
う・・うぇ・・ うぇ うぇっ・・
そしてそのままコタツの横で、両手で顔を隠してうずくまって動かなくなってしまった
部屋の真ん中に《ユリぼうず》が倒れている
魔女と俺は慌てて駆け寄った
イビキをかいている・・
眠っているだけだった
あんな騒ぎだったのに、
不思議な事に、俺らに怪我ひとつなかったのは幸いだった
俺は・・
体のデカさでは誰にも負けないのに
貫禄でも絶対に負けないのに
《ジョン ブリアン》のマタタビ癖に負けてしまった・・
そして次の朝
ジョン ブリアン 「今日はお天気がいいね！ 《ジンジン》、お外に行こう！」
ジンジン 「ヤダよ・・」
ジョン ブリアン 「・・ 《水玉》、一緒にお散歩しよう！」
俺 「しねえよ・・」
ジョン ブリアン 「・・ 《ボンネット》！《バブー》！ ベランダで遊ぼう！」
ボンネット 「や、やめとく・・」 ビクビク・・
バブー 「・・」
ジョン ブリアン 「・・ ねえ、《アゾ》！」
ジョン ブリアン 「あ・・ 逃げた・・」
・・・・・・
ジョン ブリアン 「みんな、いったいどうしたの？」
俺ら （何も覚えてないんだ・・）
魔女
いやぁ・・ 驚きました・・
これが《ユリぼうず》や《水玉》なら、イメージ的にまだ驚かないのだが・・
あの良い子猫の《ジョン ブリアン》がですよ
有り得ないでしょう
マタタビって、猫には人間の飲む 『酒』 と同じ効果を与えるのか
酒癖の悪い人間とマタタビ癖の悪い猫は同罪なのか
それまでの我が家のマタタビは安物で繊維だらけ
マタタビの出がらしを瓶に詰めたようなものだったから
それでただうにゃうにゃするだけで終わっていたのだろうか
今回のは頂き物で純度が高い高級品だったから・・
超トリップしちゃったわけ？
不純物だらけの粗悪品と、純度の高いブツ
何の話だっ・・ て感じですけど
どなたか
同じ経験 （いや、酒を飲んだ時の自分じゃなくて、マタタビを舐めた時の猫の方で・・） をされた方がいらっしゃいましたらコメント下さい
え・・ 自分で舐めてみろって？
そうか、そうしてみようかな・・ って、私は猫か！
だめだ・・ 誰か教えて！