ジョン ブリアン
帰って来てからというもの、《涼子》は家の周辺から動かない
お化け屋敷の部屋にも行かないし、散歩もしなくなった
それで一日何回も鳴いては、魔女にご飯の催促をしてる
僕らは、ゾンビ顔の話で持ちきりで
《ボンネット》と《バブー》は、そんな《涼子》の顔を一目でも見ようと、一日中出窓に乗っかって外を眺めている
今日は僕の検診日で・・
朝早くに魔女と病院に行った
僕はもう病院には置いて行かれない自信があったから
診察台の上に寝そべって自分からお腹を出し
余裕を見せた
どーせ、オーシカさん(ちゃんと先生と呼びなさい!)は、その丸いのものを僕のお腹のあちこちにくっつけて、真剣な顔で何もない所を見詰めるんでしょ (聴診器でね・・)
次はリャントゲンね・・ はい、こちらど-ぞ
僕の病気は前より良くなっているって
でも治ってはいないんだって
それでまたどっさりのお薬をもらって帰って来た
家に帰ると、《ジンジン》が聞いてきた
ジンジン 「《ジョン ブリアン》、どうだった?」
僕 「ぜんぜん大丈夫! だって僕、絶好調だもん」
ジンジン 「だからって油断しちゃダメだよ」
僕 「僕の事より《ジンジン》はどうなの?」
ジンジン 「ずいぶんご飯が食べられるようになったよ」
僕 「《ジンジン》はいったい何の病気だったの?」
魔女 「そうだよ、散々検査したのにどっこも悪くなくて・・」
ジンジン 「だって・・ ご飯食べたくなかったんだもん」
魔女 「なんで」
ジンジン 「・・気持ち悪くて」
魔女 「どしてっ」
ジンジン 「わかんない・・」
魔女 「わかんない・・って」
僕 「《ジンジン》って・・ 《水玉》がお部屋に入って来ると渋い顔にならない?」
ジンジン 「だって僕・・《水玉》 イヤなんだ・・」
アゾ 「《ミ、ミジャタマ》、《ジンジン》を ぶっちましたから 《ジンジン》は 「やっめて! やっめて!」 って言いましたんです! 知っとった? そでで ちが出った そでは耳から出ったんです そおでしょー?」
ジンジン 「そおです・・」
水玉 「あの時はたまたま僕の爪が耳に入っちゃったんだ」
魔女 「うえ! 《水玉》、いたの!」
ジンジン 「しょえ~ん 」
水玉 「俺、ずっとこたつの中で寝てたさ・・」
魔女 「どうしてそうやって《ジンジン》に乱暴するの!」
水玉 「本当はそんな気ないんだけど・・ 《ジンジン》は俺が側を通っただけで警戒声を出すんだ、それでついカッとなって手が出ちゃう」
魔女 「手を出すな!」
水玉 「だからここのとこ何もしてないじゃんか・・」
魔女 「待って・・ じゃあ、何? 《ジンジン》は《水玉》がイヤで食欲がなくなったって事?!」
ジンジン 「・・」
魔女 「そうなの!」
ユリぼうず 「やられたらやり返しゃあいいじゃん」
魔女 「《ユリぼうず》と違ってそういう事が出来ない猫もいるの」
ボンネット 「それ・・ びょうきなの?」
バブー 「ビョーキ ナノ?」
アゾ 「そ、そでは びょう気と ちがうだろ! そでは くっすりを のみまっしぇん そおだなあ」
僕 「・・それは病気でしょ」
アゾ 「そ、そぉなのかぇ!」
僕 「病気だよ! 僕知ってるもの」
魔女 「いったい何の病気だって言うのよ・・」
僕 「オクだよ!」
魔女 「オク?」
僕 「そうだよ、オクだよ!」
魔女 「オク・・ オクっていう病気なんてあったっけ?」
僕 「良く聞くよ、その病気の名前」
水玉 「臆病だろ・・」
魔女 「ぇ・・」
ジンジン 「・・」
ユリぼうず 「・・なるほど」
魔女 「臆病に高額な検査代を払った私は相当なアホ・・」
《ジンジン》はものすごくニャーバスな種類の猫で
《ユリぼうず》の性格を少しでも分けてあげた方が良いと
僕は思います