魔女の子供時代 ~続編~ Ⅰ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


両親と多くの動物たちに囲まれて過ごした深い森を後にし

舞台は日本の、山麓の片田舎に移る

どうやら父はこの地で畜産動物の獣医として働く事にしたようだ


ここで

魔女はいよいよ小学校に入ることになる

しかしそこがどんな所なのか、想像もつかなかった


小学校生活のほとんどを覚えていない

入学式も、遠足も、運動会もあったはずなのに・・


覚えているのは

登校の校門までと、下校の校門からの道すがら

そして、今思えば自分が乱暴な生徒であったことだけだ


集団生活に適していなかった


学校までの道は面白かった

折々に咲く花

小川の中の生きもの

そして鳥や動物たち


まじょはそれらのひとつひとつに足を止め

しゃがんで眺めたり、空を仰いだり

虫や魚や動物たちに話しかけたりしていた


特に気に入ったのが小川に住む一匹の川カニだった

まじょは毎朝川に入ってはこの大きなカニと遊んだ

最初は警戒して毛をいっぱいつけた大きなハサミの手を振りかぶっていた川カニだが

何時の頃からか

石の下から這い出てまじょを待っていてくれるようになった


大雨や台風の日は心配で、心配でたまらず

一日に何回も様子を見に行った

《カニ太》と名付けたこの川カニが、たまに留守にしたりしていつもの場所にいないと大騒ぎをして探し回った

まじょの心の中はいつだって

(人間に見つかりませんように・・ 捕まって食べられませんように・・)

それだけだった

だから川に入ってカニ太と遊んでいる時、たまに誰かが通りかかったりすると、石を見つけて遊んでいるフリをしてみたりする


小学校に入っても、まじょは時計が読めなかった

何のためにそれがあるのかさえ知らなかった

それ以前に、家にそんな物があることさえ知らなかった

時間で割り振りされた生活をする観念がなかったのだ


だから算数の時計(時間)のテストはいつも0点だった

何故か時間の問題だけは最後まで分からなかった

時計の絵が示す短針と長針の意味が分からないからなんも読めない


算数で時計の問題が出るまで

まじょは時計というものの存在を知らなかった

否、その期に及んでも・・

この円に数字が書いてあるけったいなものはなんだろ?

そう不思議に思ったものの、だぶん自分には関係のないものであろうからどーでもいいなどと勝手に納得していたようだ


登校途中でも、まじょは毎日のように面白いものを発見しては、それに夢中になり・・


そういう訳で

母は学校に行くまじょを送り出すのを徐々に早めなければならなかった

日を追って早く出されるようになり

冬などは暗いうちからランドセルを背負って家を後にした


まじょはなぜ早い時間から家を出されていたのかをずっと知らないでいた

だから、つい何年か前まで、みんなに

「私の通っていた小学校は家から2時間もあったんだ」

なんてでたらめを言っていて・・


そのでたらめは、大人になってその地へ旅行した時に発覚した

親戚や知り合いがいるわけではないから

昔の記憶と地図を頼りにやっと辿りついたその村で・・


魔女 「ここだ! ここに魔女達の家があったんだよ、 大きな川があそこにあるし、農協があって、ここの道をずっと登ると牧場なの、 ここで間違いない!」


ちよちゃん 「ふ~ん・・ それで小学校は?」


魔女 「ここから2時間くらいのところ・・ どこにあったんだろうか・・」


ちよちゃん 「ねえ・・ 魔女、あれは何だろね・・」


魔女 「・・ え・・?」


ちよちゃん 「あれ・・ 小学校だよねぇ」


魔女 「・・ こんな所に小学校が・・」


ちよちゃん 「ここから歩いて5分位じゃない・・?」


魔女 「きっと新しくできたんだよ、行ってみようか」


・・・・・・・


ちよちゃん 「新しそうでもないし・・」


魔女 「この小学校だ・・」


ちよちゃん 「間違いないの?」


魔女 「うん、だってこの校門の横で二ノ宮金次郎の銅像を倒したんだもの」


ちよちゃん 「倒したの!!」


この時初めて知った

まじょは寄り道に寄り道を重ね・・

子供の足でも10分とかからない小学校に行くのに2時間以上を費やしていたのだった


つづく