ジョン ブリアン
今日は僕の診察の日だ
それは夕べ魔女に言われたからわかってた
魔女はたくさんの紙切れをお財布に入れ
僕は自分からバスケットに入った
僕は車の中でも鳴いたりしなかった
昨日はお薬を隠しちゃったけど
もう魔女を困らせたりしないようにしようと決めた
夕べ、魔女はリャビングで何かをやりかけたまま
テーブルにかぶさるみたいにして寝ちゃってた
《ジンジン》が話しかけても、《バブー》が背中に飛び乗っても目を覚まさない
(魔女、疲れてるんだね・・)
眠っている魔女を見て・・ そう思った
たくさんの紙切れは、魔女がいっしょけんめに働いた代わりにもらって来たものだ
《ユリぼうず》は僕のせいじゃない、カケーのせいだと言ったけど・・
僕 「魔女・・僕のために夜中も働いたんでしょ」
魔女 「違うよ」
僕 「だって僕が病気で長い間病院に泊まって・・ そのために病院に渡す紙切れが必要なんでしょ、僕は何回も病院に行っているから、そういうシステムがわかっちゃったんだ」
魔女 「確かに魔女は《ジョン ブリアン》の治療に払う紙切れのために働いたよ、だけどそれは《ジョン ブリアン》のためじゃない」
僕 「だって、それは僕のせいで働いたんじゃない」
魔女 「魔女が働いたのは自分のためなんだ」
僕 「・・ 魔女は病気してないよ」
魔女 「そうじゃなくて・・ 上手く言えないけどね、人のやる事はぜ~んぶ自分のためなの」
僕 「・・ よくわかんない」
魔女 「わかんなくていいんだよ、《ジョン ブリアン》のために働いたように見えるかもしれないけど、そうじゃないんだから、《ジョン ブリアン》が気にする事なんて何もないの」
僕 「だって・・」
魔女 「あのね、魔女は自分が気が済むようにしたかっただけ、だからそれは自分のためでしょう」
僕 「そうなの?」
魔女 「人はね、誰かのために何かをするような生き物じゃない。 誰かのためにしているようでも、突き詰めてみれば自分のためにしているのさ」
僕 「なんだかよくわからないんだけど」
魔女 「わからなくていいの、そんな心がわかったらいやらしいし、それがわからないからこそ動物の心は素晴らしいんだから」
僕 「魔女・・ 僕の病気・・もう治らないの?」
魔女 「治るよ」
僕 「だって今日・・ 魔女はずいぶん長い事先生と話していて・・ 悲しい顔をしていた」
魔女 「《ジョン ブリアン》の病気は治すから」
僕 「どうやって治すの?」
魔女 「働いて治すんだよ」
僕 「やっぱり働くんじゃない」
魔女 「いいじゃん、魔女が働いて《ジョン ブリアン》が元気になれば私自身が楽しく暮らせるんだから。 それに明日の事なんて誰もわからないの、それを決め付けて生きるのは良くないよ。 明日には突然病気が良くなっているかも知れないって、そう思って元気に暮らさないと損をするんだぞ」
僕には魔女の言っていることがちんぷんかんぷんだった
僕 「ねえ《ユリぼうず》、僕には魔女の言っていることがわからないんだけど・・」
ユリぼうず 「気にするな、あいつは生まれた時からずっと訳の分からない事ばかり言っているに違いないんだから」
早く病院に行かなくていいようになりたいな・・
僕 「僕はこうやって元気なのに・・」
魔女 「それなのに、《ジョン ブリアン》の体から病気がなかなか出て行かないんだって、やなヤツだね!」
僕 「やなヤツだね!」
魔女 「追い出してやろうね!」
僕 「うん!!」