水玉
僕たちはアトリエにも出入りしている
アトリエには入らない猫もいるけれど
子供たちは僕たちの事を何でも知っている
高校生や大学生や大人の生徒さんたちは
これまでここで暮らした、それこそ僕らが会ったこともない猫たちの事も良く知っていて
時々色々な名前を出して思い出話をしている
もちろん、《今日ちゃん》や《伐》の話もする
いまでもすぐそこにいるように話すんだ
僕は《水玉先生》だから、たいがいアトリエにいる
そこでは、子供たちがよく面白い発言をする
この前、僕はそこで僕という猫像が勝手に作り上げられているのを知った
作り上げられているっていうか
不良少年時代の僕のイメージを、みんながいつまでも引きずっているっていうか・・
子供1 「まじょ先生、まだかくしたお金は出て来ないの?」
魔女 「そう・・ どこにも見つからない」
子供2 「まじょ先生がいない間、《水玉先生》がそのお金でタバコ買っちゃったんじゃない?」
子供3 「そうか! それで吸いまくっちゃったんだ」
僕 「おいおい、待てよ!」
子供1 「《水玉先生》がどうやってタバコを買うのよ」
子供4 「やっぱ、自動はんばいきでしょう」
子供5 「《水玉先生》にはとどかないじゃん」
子供3 「タバコを買いに来たおじさんに持ち上げてもらって買ってるんじゃない?」
子供1 「じゃあ、タスポも持ってるっていうこと?」
子供4 「当然じゃないか」
子供6 「すごいな!!」
僕 「ちょっと待てよっ!!」
子供たち 「《水玉先生》って、おりこうなんだね!」
僕 「え・・ い、いや・・」
子供4 「それでさあ」
僕 「まだ続くのかよ!」
子供4 「やっぱ、夜は空き地でボス会議でしょう!」
僕 「やってねえよ!」
子供7 「ボスたちのかいぎだから、やっぱお酒とか飲むのかなあ」
子供4 「とうぜんでしょう!」
僕 「飲まねえよ! おいっ!」
子供5 「わかった! マタタビ酒の飲むんだ」
僕 「無視かよっ!!」
子供6 「それでどうせ次の日は駐車場の下で動けないでいるんだ、二日酔いでさ」
子供1 「時々サボってるのはそういうわけだったんだ!」
僕 「何勝手に作り上げてんだよ、好きに言ってろよ・・」
僕はバカバカしくなって、ふてくされてその場で寝た
生徒8 「魔女先生、《水玉先生》の寝方が火曜サスペンス劇場の被害者みたいになってます!」
僕 「もうっ、いちいちうるさいぞ!!」
特別おとなしいあいなちゃんが・・
絵を描き終わったらしく
余った時間で折り紙をしようと
折紙と本をバッグから取り出していた
そして、取り出した本を見詰めてじっとしている
僕 「おい魔女、あいなちゃんが何だか固まってるぞ・・」
魔女 「あいなちゃん、どうしたの?」
あいな 「私、折り紙の本と間違えて・・」
魔女 「本を間違えちゃったの?」
あいな 「 『出産の本』 を持って来ちゃった・・」
魔女 「しゅっさん・・ですか・・」
今度の日曜は《アゾ》のお誕生日だ (家族になった日)
《今日ちゃん》や《伐》がニャバーランドに行っちゃった後
《アゾ》と《ボンネット》がやって来た
新しい家族の出現にアトリエの子供たちの目が輝くけれど
その一方でニャバーランドに行ってしまった家族の事もみんなは決して忘れない
魔女
5月のある日
なっちゃんのお母さんが
「もうすぐ1年になりますね・・」 と言ってくれた
1年前の5月
みんなが泣いた《伐》との別れの日
二度と目覚める事のない《伐》を目の当たりにして
子供たちが初めて死というものを身近に感じた日だ
それは悲しい出来事だったけれど
そうやって《伐》を記憶に留めてくれている事が嬉しかった
みずきちゃんは今でも《伐》のお墓に、
《伐》の大好きだったスーパーボールをお供えしてくれる
そして季節のお花を摘んでは供えて続けてくれる子供たち
アトリエの子供たちも、子供たちのご家族も
いつだって彼らを見守ってくれ、可愛がってくれる
何かがあれば、みんなが心配してくれる
そしてブログを通して見守ってくださる方々
軍団は、本当に幸せな猫たちです
これほどたくさんの優しさに囲まれて・・