A wheel of fortune ~運命の輪~ ER | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


昨日は終日仕事で《ジョン ブリアン》に会いに行けなかった


そして今日、面会時間開始と同時に病院に到着した

日曜の病院はごった返していた

相変わらずERも混雑している


担当の先生は今日もERにいた

先週の夜、《ジョン ブリアン》を運び込んでから既に8日間の勤務


それでも病棟の動物20頭近くの診療をてきぱきとこなしている

《ジョン ブリアン》と話していたら先生がいらした


先生 「詳しい検査の結果が出ました。腫瘍等は体のどこからも発見されませんでした。原因は何らかの細菌による胸膜の炎症から引き起こされたものです。今日の吸引は10cc程でしたので、明日か明後日には軽く麻酔をかけてチューブを抜く簡単な手術を行います」


魔女 「こんなに元気になってくれて、本当に嬉しいです」


先生 「《ジョン ブリアンちゃん》、今朝は食欲がないようだったので熱を測ってみたら多少高かったから解熱剤を与えました。 床の敷き物を引っ掻いて寝る癖がありますね、でも本人(猫)『その方が落ち着く』 と言っていますので、じゃあ、そうしなさい、と言っておきました。お話が出来る子なので助かってます」


魔女 「あの・・本人は 『知恵熱』 などと言っていませんでした?」


先生 「そんなようなことを・・」


魔女 「先生、気にしないでください・・」


先生 「気にしてませんよ」


jyon-1 08629
見てください、しっかりとした目が戻った《ジョン ブリアン》を


jyon-2 08629
「魔女、撫でて」 のおねだりも


jyon08629
言いたい事がいっぱいでしゃべりっぱなし



ERは、魔女と同様見舞いの家族の姿も多くあった


《ジョン ブリアン》の隣には《ユリぼうず》と同じ、尿路結石で運ばれた猫に変わっていた

《伐》にそっくり、大きな黒猫だ

痛みのせいか、食欲もない

家族の女性が心配そうに、桟に手をかけて覗き込んでいる



その近くには10年後の《べス》を彷彿とさせる大きなペルシャがおり

その家族たちが別の先生の説明を聞いていた


説明を終えたのだろうか

その家族の女性の声が大きく、否が応でも耳にはいってしまう


「先生、抗がん剤をどんどん投与して、放射線もかけて、もっと長く生きられるようにして下さい。 私たちはこの子がいなければ淋しいんです!」


(それは・・違う・・)

思わず魔女の心がそう言っていた

魔女は苦しそうに横たわっているペルシャ猫をそっと見た


その家族は口々に何度も同じ事を頼んだ


(それは 『自分たち』 の気持ち・・)

魔女は口から出そうになる言葉を必死に飲み込んでいた


「それはご家族の気持ちでしょう」

え・・? 声になっている


少し驚いて顔を上げると

それは先生が発した言葉だった


「ご家族の気持ちも分かりますが、ではこの猫の気持ちはどうなんでしょう・・。抗がん剤治療は想像するよりもっと辛いものなんですよ。 辛い思いだけで過ごさせて命を多少長らえるより、少しでも楽に、自然に最後を見取ってやるのがご家族の愛情ではないんでしょうか。 私はそれをお勧めします」


この家族はどのような決断をするのだろうか・・



通りがかりの人に拾われた野良の赤ちゃんが運び込まれてきた

先生は深刻な顔で、厳しい状態であることを告げた

この子猫はこれより病院で面倒を見るとの事で

連れてきた人は承諾書にサインをし、帰って行った



救われる命と・・

救われない命・・


運命の浮き沈みが凝縮されたこのERで

私たち人間も含めて、生き物の尊厳を思った


この世が、どうにもならなく苦しいのなら

幸せを求めて、あの世に旅立つ命を

優しく見守る心も必要だ


相手の辛さが解ければそれでいい

それで自分が悲むのなら・・ 

いくらでも悲しめばいいことなのだ


運命は受け入れなければならないのだから