懺悔 ~靴磨きの少年~ | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


本日で5日間に渡るアトリエの展覧会が終わった

右側の肋骨2本にヒビが入って、ついでに時折咳も出るので参ったが、訪れてくれる子供たちやご父兄の顔を見ると痛みなど飛んで行く


ところで、この胸のヒビであるが・・

ネパールでこうなった


さよならのご挨拶をする度に人々に抱きしめられて

肋骨にヒビが入ってしまった


「またすぐに戻って来てね、ここで待っているあなたの家族を忘れないでね・・」


忘れられるかい・・

息をしても痛いわい!



たまちゃんとの2人旅


カトマンズ到着は深夜だった

ぐっすりと休んだ翌日

取り敢えずそこいらをぶらぶらしようか・・とゲストハウスを出た


タメル(カトマンズの繁華街、外国人観光客で溢れている)では

既に待ち構えている友人たちもいれば、そこかしこでばったり出会う知り合いも多い

街角ごとで話しに花が咲き、それだけで時間が過ぎて行く

時間に追われる旅ではないので、それはそれで一向に構わない


タメルのはずれで1人の靴磨きの少年に会った

靴磨きの元締めは友人なので、顔ぶれはおおよそ承知している

彼は新顔だ


その前にもう一人、靴磨きの少年にしつこくされていたのでまたか・・と思ったのがいけなかった


靴磨きの少年 「靴を磨かせてください」


魔女 「靴って・・ これ、スニーカーだよ」


靴磨きの少年 「スニーカーだって上手に磨きます」


魔女 「磨かなくていいよ」


靴磨きの少年 「磨かせて」


魔女 「私は貧乏でそんなお金ないの、今日だってご飯も食べられ

     ないくてお腹がペコペコなんだから!」


靴磨きの少年 「・・お腹が減っているの?」


魔女 「そう、貧乏だからね!」


靴磨きの少年 「可愛そうに・・」


魔女 「そう、私は可愛そうなのよ、だから靴を磨くお金はないの」


靴磨きの少年 「僕が、お昼ご飯をごちそうするよ・・」


魔女 「・・?」


靴磨きの少年 「行こう」


魔女 「あ、後で、何かをおねだりしない?」


靴磨きの少年 「しないよ」


その少年は破けかけたポケットをに手を突っ込んで小銭を確認した


靴磨きの少年 「何が食べたいの?」


魔女 「チ、チャーでいい・・」


靴磨きの少年 「何か食べなきゃだめだよ」


魔女 「安いチャーが飲みたい」



それで私たちは地元の人たちが行くチャー屋に行った

魔女の心が自分を恥じ始めていた


チャー屋で、その子はチャーを3杯注文した

奥のテーブル席に私たちを案内しようとした靴磨きの少年を遮ったのはチャー屋の主だった

その少年は私たちだけ席に座るよう促し

自分は店の前の石の階段に腰を下ろした


魔女は少年の隣に座った

たまちゃんもそこに座った

3人で石段に座ってチャーが出来るのを待った


チャーを待つ間、少年は立ち上がって斜向かいのケーキ屋に向かった

店の奥に向かって、何度も店員を呼んでいる

魔女も立ち上がって少年のいる所に歩いて行った


魔女 「何しているの?」


靴磨きの少年 「お腹が減っているんでしょ、

                 だからケーキを買おうと思って・・」


魔女 「買わなくていいよ」


靴磨きの少年 「何か食べてよ、このケーキでいい? 

                     ひとつずつで足りる?」


魔女 「ひとつをみんなで分けようよ、それで十分だから」


靴磨きの少年 「すみませ~ん、ケーキをくださ~い!」


靴磨きの少年は何度も店員を呼んだ

すぐそこにいるのに、店員は彼を無視した


魔女 「こんな店のケーキなんかいらないよ!」


靴磨きの少年 「でも・・」


魔女 「もうやめよう」


靴磨きの少年 「あっちの店なら売ってくれるかなぁ」


少年はその向かいの小さな菓子屋に向かった

店の前には、少しばかりのパンが置かれていた


靴磨きの少年 「どれがいい?」


魔女は一番安そうなパンを指差した


靴磨きの少年 「このパンを二つ下さい」


魔女 「自分の分は?」


靴磨きの少年 「僕は食べたくないから・・」


出来上がったチャートとともに

石の階段でかみ締める硬いパンの味は塩っぱかった

少年は家族の話をした

両親と兄弟とともにインドから職を求めてやって来たって



魔女 「美味しいごはんをありがとう・・」


靴磨きの少年 「足りたの?」


魔女 「もうお腹がいっぱいになったよ」



その少年は、今日は風邪で具合が悪いから今日は家に帰って寝ると言った

私たちには毎日を楽しんでください、と言った


魔女は土曜日の10時にカトマンズゲストハウスの前にいてくれるように少年に言った


土曜日、魔女たちはそこで少年を待った

靴磨きの道具を抱えて、少年が現れた

風邪は治ったようだ


魔女は彼にシャツと日本風の柄のペンを手渡した


タメルには多くの靴磨きがいる

彼を見かけると声を掛ける

シャツは妹に、ペンは弟に与えたという


彼は私たちと出会う度に


「お腹が減っていませんか?」 と訊ねる


せめて私も、彼と一緒に差別に甘んじようと思った日の事だ