水玉
トミニャガさんちを後にして
そこからもっと丘の方に行ったところに、猫好きのお姉さんが住んでいて
今夜、僕たちを待っているらしい
それで僕たちがそこに向かおうとしていた
と、その時・・
「いた! 本当なんだ!」
「キャ~! 可愛いぃ~!!」
とかなんとかを高い声で叫びながら
何人かの会った事もない若い女の人間が駆け寄って来た
僕らは驚いて草むらや、車の下や、よその家の庭やらにてんでバラバラに隠れた
取り残されたのはバスケットの中の 《アゾ》 と、硬くなった 《伐》 を抱えてへんてこりんな仮装をしている魔女
女① 「あ~・・ 逃げちゃったぁ」
女②③④⑤ 「みんなぁ、出て来ておくれよお~!」
魔女 「・・・あ、あなた方はなんなんですか」
女③ 「キャ~!バスケットに子猫がいるよおー」
女達 「マジでぇー わぁ!
かぁわぁゆぅいぃ~
ワーワー キャーキャー 」
魔女 「うるさいっ!!」
女達 「・・・」
魔女 「いったい、何なの!」
女① 「・・ハロウィンの夜に、この辺を猫の一団がお菓子貰いに歩き回る、って聞いたからぁ」
魔女 「だから?!」
女② 「絶対見たくない? って思って・・ それでみんなで待ってたんだけどぉ」
魔女 「それなのに、大声で騒いで猫を脅してどうするの!みんな恐がって隠れちゃったじゃない」
女達 「すいません・・」
魔女 「こっちは脅す方で、脅される方じゃないんだからね!」
女達 「ごめんなさい・・ でも、どうしても見たかって・・」
魔女 「だったら、キャーキャー騒がない!! 第一日本語がおかしい! うちの猫たちだってそんな日本語は使わないわ!」
女④ 「えぇ~、マジで!
猫が言葉、しゃべっちゃうんですかあー? うそぉ~」
魔女 「あなた、今私を嘘つき呼ばわりした・・?」
女④ 「い、いや・・ つい、癖で言っただけなんで・・」
魔女 「その癖、直しなさいっ!」
女④ 「は、はい・・」
魔女 「で、うちの猫達が見たいわけ?」
女達 「はい!」
魔女 「お菓子とか持って来た?」
女達 「え・・? デジカメなら持ってますけど」
魔女 「今夜はハロウィンなのよ! デジカメが食べられると思う? デジカメで猫が喜ぶとでも思った?」
女達 「い、いや・・」
魔女 「猫達をここに呼ぶのに必要なものは何?」
女達 「・・・」
魔女 「何っ!!」
女② 「優しい言葉・・・?」
魔女 「はい無理!
騒いでしまったから、すっかり猫の信用を失っている」
女① 「わかった、お菓子!」
魔女 「半分正解」
女① 「半分?」
魔女 「甘いものばかりは猫に良くないな」
女③ 「じゃあ、どんなものだったら・・」
魔女 「おにぎりとか、焼き鳥とか、卵や肉系のサンドウイッチとか、お菓子だったらガーナチョコとか・・」
僕 (何が猫にはだよ、自分の好きなものばっかじゃないか・・)
女① 「え~・・ そんなの持ってない」
魔女 「じゃあ、会えないな・・」
女達 「あ~い~た~いぃぃぃ」
魔女 「無理だな、 あ、でもあっちにコンビニがあるけど・・」
女達 「買ってくる!!」
魔女 「え~ そこまでする? じゃあ、面倒臭いけど待ってるよ」
女達は大通りのコンビニに駆け出して行った
僕達は女達が行ってしまったのを確かめてから魔女のそばに集まった
魔女 「みんな、今人間の女が食べ物を買いに行って戻ってくるから今度は逃げ出しちゃダメだよ」
ジョン ブリアン 「僕、大声は恐いんだけど」
魔女 「大丈夫、静かにするように言っておいたから」
僕 「あのさぁ、食べ物って僕達用じゃなくない?」
魔女 「みんなはおばあちゃんやトミニャガさんにイヤって言うほど貰ったじゃない。 魔女にはほとんどないんだよ! そのくらいいいじゃないか!! いいじゃないか!」
僕 「わかったよ・・」
魔女 「いい? みんな愛想良くしてね」
涼子 「私帰る!」
魔女 「なんで?」
涼子 「イヤだもん!」
インジゴ 「私も帰りたい・・」
魔女 「《インジゴ》 も?」
インジゴ 「これ以上遠くに行くのは恐いし、知らない人も苦手・・」
《インジゴ》 と 《涼子》 は
そう言って、家に帰ってしまった
女の猫はひどく用心深いからね
それで、僕たち男軍団とバスケットの 《アゾ》 が残った
暫くして、女の人間達が向こうからコソコソ歩きで帰って来た
魔女に騒ぐな、と言われているからだ
そして、僕達を見て、とっても・・そしてコソコソ感動した
魔女はコンビニの袋を受け取って
僕らを女達に紹介した
僕らは魔女に名前を呼ばれる度に
きちんとお返事をして女達を大いに感動させた
それから女達はカメラや携帯で僕達を散々写して喜んだ
「キリがないのでもう終わり!」 と魔女が言った
女達は 「え~~~!?」 と言ってひどく残念がった
人間の女達は何度も振り返って僕達に向かって手を振って帰って行った
もう一回続きます