伐
ここのところ魔女はアトリエの展覧会の用意で忙しく、ドタバタしている
2回寝た前の夜、魔女のお友達が来て泊まった
その人はマチコさんといって、埼玉っていう所から遊びに来たんだ
マチコさんは今、毎日朝早くからパンを作る仕事をしていて
水曜日がお休みだからって遊びに来たんだって
そう、前にも書いたけど、マチコさんは昔魔女がちょっとだけ会社勤めをしていた時の上司なんだ
その夜、マチコさんがリビングの隣の部屋で寝ていたので、僕らは夜の宴会を取りやめにした
だのに魔女の弟が、財布を落っことしたショックから、真夜中にリャンリャン電話を鳴らしてきてマチコさんの睡眠を邪魔した
次の日、魔女はいつも通り寝坊した
マチコさんは朝早くから起きて、台所を片付けたり磨いたりしていた
俺 「こんなでいいのかよ・・」
水玉 「良くないだろう・・」
やっと魔女が起きてきて、マチコさんが買ってきた美味しいパンで朝ごはんになった
魔女はそれからお日様がてっぺんまで仕事だ
仕事の前にマチコさんは魔女と一緒にアトリエの掃除をした
魔女がアトリエで仕事をしている間、マチコさんはアトリエの流しを磨き、水採用のバケツをきれいに磨いていた
それから2階に戻って来て俺らの毛がくっつきまくっている絨毯をタワシでお掃除し始めた
ピンクの絨毯が、元の赤い絨毯になった!
それが終わると、床の拭き掃除をしている・・
リビングの床は慢性鼻炎の 《インジゴ》 のくしゃみの鼻汁がそこかしこに飛び散って乾いてしまっている
他にも、少し前の夜中の宴会で 《涼子》 が調子に乗って騒ぎ、テーブルの下にゲロしたのがあって、ボケの魔女はそれに気づいていない
マチコさんはそれらを一生懸命にこすって・・
俺らはマチコさんの邪魔にならないようにひとかたまりになって、申し訳なさのため目をシバシバさせながら掃除を見ていた
魔女の仕事が終わって、生徒の絵を見直ししている間
マチコさんはリビングの掃除を終えて、庭の草むしりを始めた
俺 「いいのか・・」
ジンジン 「良くないよ・・」
魔女が、外に出て
「めだかの水が汚い・・」 と余計な事をつぶやいた
マチコさんが 「取り替えようよ!」 と言って
メダカをすくいながら巨大な器(火鉢)の水を用心深く捨て始めた
魔女はマチコさんがすくったメダカを別の器に移動しているだけ
家族②がお昼ご飯ができたよ、って2階から呼んだ
お昼ご飯の後、魔女は展覧会のポスターをまだ書いてなくて
焦ってそれを仕上げている
マチコさんが木の枝を切り始めた
それを見ながら、俺らは庭でオロオロした
俺 「いいのかよ!」
涼子 「絶対に良くないよ!」
夕方になっても、まだマチコさんは家のまわりの溝をさらっている
それから、枝や草の入ったゴミ袋をいっぱい作った
マチコさんの着て来た服には、枯葉とかがいっぱいくっついて・・
そして・・ 埼玉に帰って行った
俺 「あり得ないよな・・ なんか、俺、申し訳なくて・・」
ジョン ブリアン 「ぼくだってまじょが良くないのわかる!」
インジゴ 「魔女に説教した方がいいよ!」
俺 「魔女! 昔の上司が遊びに来てくれたのにあんなに働かせて、俺ら信じられない!」
魔女 「マチコさん、『好きでやってるんだから気にしないで』 って言ったよ」
俺 「それでいいのかよ!」
魔女 「うん」
俺 「ばっかじゃないの!俺ら猫だって人間の言葉の裏の優しさをちょっとは分かるようになってきたっていうのに言葉通りに受け取っているだけの魔女って・・ なんなんだよ!」
魔女 「素直なんじゃない?」
俺 「ダメだ・・ もう、救いようもないな」
今日の日記は途中から 『書きたくない』 って言ったのに
《伐》 に無理やり書かされました・・