伐
今日、春が来た
俺らは何だかウキウキしちゃって
魔女に散歩をせがんだ
家からしばらく行ったところのその家の前を
俺らは一列縦隊で、はしゃがずに歩いていた
魔女もその家の窓の下を腰をかがめてそっと通り過ぎようとしていた
ジンジン 「出た!」
魔女 「なにが?」
トミニャガさん 「あ~ら、魔女さん、何か落し物でもなさったのかしら?」
魔女 「ムムッ・・・」
トミニャガさん 「ちょ~ど良かったわ!」
俺 「やな予感・・」
トミニャガさん 「差し上げたい物がありますの、お上がりになって」
俺 「なに?! 刺身か!」
水玉 「なわけないだろう」
魔女 「いや、でも7匹の猫もいますから」
トミニャガさん 「ちょうど宅の 《ベス》 ちゃんも退屈しておりますからみなさんもご一緒にどうぞ」
俺 「おじゃましま~す!」
魔女 「ちょっと、 《伐》!」
俺が好奇心のあまり、とっとと上がりこんだものだから魔女が慌てて俺を追いかけ、みんなは魔女を追いかけてトミニャガさん家に上がった
俺 「すんげぇ!家ん中ピッカピカだぜ、うちとは大違いだな」
ベス 「こんにちは・・」
インジゴ 「 《ベス》、その手・・ どうしたの? 」
ベス 「てぶくろ・・」
水玉 「なんで猫が手袋してるのさ!」
ベス 「かべ、ひっかくから・・」
ジョン ブリアン 「《ベス》ちゃん、体中にもなにかくっついてるよ」
ベス 「知らないの?! これ洋服」
俺 「へ? なんで猫が服着るの?」
ベス 「寒いから、風邪ひかないようにって・・」
インジゴ 「でも、猫的におかしいよそのかっこう・・」
ベス 「でも、フリフリがいっぱい付いてるんだよ」
俺 「フリフリは動物に似合わないだろう!第一 《ベス》 は外に出ないじゃん、生きものとして・・変だぞ」
ユリぼうず 「ケッケケ、クッケケ・・」
水玉 「どうした!《ユリぼうず》 」
ユリぼうず 「 《もりやさん》 が・・ クッケケ、ケッケッケ・・」
インジゴ 「あぁ・・ 《もりやさん》 がフリフリの服着たとこ想像しちゃったのね・・」
ジョン ブリアン 「わぁ~! これきれい!!」
トミニャガさん 「だぁぁぁぁ~! それ触っちゃダメェー!」
水玉 「オオ! 箱の中で魚が泳いでるよ、おいしそう・・」
トミニャガさん 「どっちゃぁぁぁぁ~!
熱帯魚のそばに寄らないでっ!!」
ジョン ブリアン 「ねー、ここのろうかすっごくよくすべるよ! ちょっと走るとあとはいきおいでじどうてきにスーーーって行くよ」
トミニャガさん 「廊下に傷が付くでしょうがあぁぁぁぁー!」
インジゴ 「あれ?テレビが映ったり消えたりしてるよ?」
トミニャガさん 「そこの尻尾がウサギみたいなネコ! テレビリモコンのボタン何回も踏まないでぇぇぇぇ~!!」
ユリぼうず 「アニャマル プラニャット・・・」
俺 「トイレはどこですか?」
トミニャガさん 「魔女さ~ん! デッカイ黒猫が何か言ってるんですけどー!」
魔女 「トイレをお借りしたいそうです」
トミニャガさん 「まあ! なんて勢いのいい音・・」
俺 「あ~、すっきりした!」
ベス 「返してー! 返してー!」
トミニャガさん 「びゃ~!! 《ベス》 ちゃんのおもちゃのボンボンが、よだれまみれにされてるぅぅぅぅう!!」
魔女 「すみません、《ジンジン》 はファ~ファ~した毛のブツを見ると人(ネコ)が変わっちゃうんです」
俺 「あの~、刺身まだですか?」
トミニャガさん 「魔女さん、デッカイ黒猫がまた何か言ってる!」
魔女 「もう、おいとまします・・」
トミニャガさん 「そうしてください!!」
僕らは外に出た
魔女が疲れちゃったからってこの後の散歩は中止でお家に帰った
「うちで普通の事でも、よその家では普通じゃなかったりするんだ
から良く覚えておきなさい!」 と魔女に言われた
俺 「どういう意味だ?」
水玉 「そりゃ、よその家は普通じゃないだろうよ、だってネコが手袋して服着てるんだよ」
俺 「確かに普通じゃないな! ん?・・ ?? 待てよ・・
実はよその家のネコ はみんな服着てるのか?!」
ジンジン 「じゃぁ、普通じゃないのはうちなんじゃん!」
話しがややこしくなってきたので今日は終わりにします
ところで・・ トミニャガさん
魔女にあげたいものって、一体何だったんですか?