ジンジン
犬のいる家を過ぎると獣道になる
春には自然の花が咲いていたり
夏は草や木が茂っていたり、木の実を見つけたり
秋は落ち葉が風に舞うのを追いかけたり、
踏み歩くと聞こえるカサカサという葉音に過剰反応したり
またある時は鳥の巣を見つけたり
トカゲやカナヘビが前を横切ったり
そして冬には草や木の葉が枯れて散り、それまでより道が広くなるんだ
獣道の突き当りには誰も住んでいないらしい家があり
知らない猫たちが集まるらしく
色んな猫の臭いがするから、僕らは調査に余念がなくなる
みんな耳を倒し、悪鋭い目つきになり、足音をたてないようにし、やたら尻尾を下げて現地調査をするんだ
そして、家の裏手で 《伐》 がノラ猫と出っくわす
毎回そうなんだ
それはすっかりパターン化しており・・
先ず、ノラ猫と出っくわすのはなぜか必ず 《伐》 で
犬ならどんなにデカくても強気で向かって行ける 《伐》 が
なぜか猫の前では異常に気弱になり
追い詰められた木の上で、「フャ~フヒャ~」 と助けを求めて情けない声を出す
それを聞きつけた魔女コンの僕と 《水玉》 が速攻駆けつけるんだ
その後に続くのが 《ユリぼうず》 だったり当時いた 《姫》 だったり、今では 《ジョン ブリアン》 だ
僕らがまだ小さかった頃は 《今日ちゃん》 が真っ先に駆けつけて 《伐》 を救出してくれてた
どんなに危機でも、魔女は
「よその家だから勝手には入れな~い」
とか言っちゃって助けてはくれない
わらわらと駆けつけた僕らの数の多さに野良猫は退散する
こういうパターンなんだけど
そんなちょっとした緊張も散歩の楽しみになっている
それから長~い階段を登ると、昔遊んだテニスコートがあった場所に出る
だけど・・ ここも壊されて、遊び場はたくさんの家に変わってしまった
登りきった所の駐車場で一休み
それからたくさんの家の間の道を通って下り坂になる
その途中で遠くの町の景色を眺めるのが大好きな 《ユリぼうず》 と一緒にみんな並んでしばらく町を見下ろす
その後、夏の場合だけ 〈ヨシノリくん〉 ちの車の下で休む事になっている
ここまで来れば家は近いんだけど、まだ帰らない
最後のお楽しみがあるんだ
広い空き地
ここで鬼ごっこだ
いつも魔女がオニで僕らを探す
1回僕がオニになった事があって
でも魔女はどんなにかくれても僕は見つけてしまい
それは魔女コンだから!などと魔女は決め付け
しかし他のどの猫がオニになっても魔女は見つけられ
それからというもの、ずっと魔女がオニだ
隠れたのを見つけるごっこや
僕らが逃げ回り、魔女が僕ら全員にタッチするごっこ
魔女が疲れたら鬼ごっこは終わる
そして・・ 家に帰る
これが僕らの散歩コース