水玉
今日、魔女が 『自分の部屋の掃除をする!』 と言い出した
どうせ掃除するんだから僕らも入っていいって
僕らはぴゃーぴゃー喜んで魔女の部屋に入った
魔女は先ず内臓を飛び出させて床に寝ている 《人体模型》 を元通りにするのに取り掛かった
魔女 「心臓はここ・・ 膵臓はここで・・ 胃・・ 腸・・ 脾臓・・ 肺・・ 肝臓・・ えっと・・静脈に動脈、 ん・・? 腎臓は? あれっ、腎臓がない・・ えぇー! 腎臓がな~い!!」
ジョン ブリアン 「じんぞう・・ってないとだめなの?」
魔女 「だ~めだよー! 絶対にないと駄目!カッコ悪いじゃん」
ジンジン 「そうだよ、腎臓は大切だよ! 《今日ちゃん》 は腎臓がなくてニャバーランドに行っちゃったんだから」
魔女 「《今日ちゃん》 は腎臓がないんじゃなくて、腎臓が悪くなったの!それに、この場合腎臓がないと駄目なのは 《人体模型》 の腎臓の部分だけポッカリ空いていてかっこ悪いのが嫌なの!」
それから魔女は部屋中をひっくり返すみたいにして腎臓を探し出した
ベッドの下、机の下、ナイトテーブルの裏、飾り棚の引き出し、本の間・・
どこにもない・・
やたらしつこくなってしまった魔女は、部屋の掃除も忘れて
今度は作り付けの戸を開け、棚の物全部を引っ張り出した
うわ言みたいに 腎臓・・ 腎臓・・ とつぶやきながら
僕らは棚の中から引きずり出されたものが物珍しくて、みんなで興味津々に検査し始めた
伐 「何だ? これ」
魔女 「ああ、それはなんとも芸術的な蜂の巣・・
すでに空だったから持って来た」
インジゴ 「この丸いつるつるした石みたいな物は?」
魔女 「恐竜の卵」
涼子 「な、なに? これ・・」
魔女 「蜘蛛のミイラ」
ジョン ブリアン 「まじょ・・ こ、これはだれ?!」
魔女 「ターミネーター」
ジンジン 「魔女~、 この中には何が入っているの?」
魔女 「あれ?こんなとこにあったのか! これはネバーランドに行っちゃった魔女のお父さんの商売道具」
ジンジン 「商売道具って?」
魔女 「うるさいなぁ・・ これは顕微鏡、それでこれが顕微鏡でものを大きく見る時に使うガラス板で・・ てか・・ こっちの入れ物の方が面白いよ、 見たい?」
僕ら 「見たい! 見たい!!」
魔女 「ほぉ~ら・・!」
僕ら 「・・・ ぎょえ~~!!!」
魔女 「 《涼子》、今度盗み食いをしたらこれで射すよ!
ついでに傷口を縫う糸とハサミもあるわよぉ~」
この時点で猫軍団の大部分が部屋から出て行った
《ジョン ブリアン》 なんてターミニャータを見たとたんすでにいなくなっていたし・・
残ったのは僕と 《ユリぼうず》 だけ
《ユリぼうず》 は最初から何にも興味を示さず
魔女のベッドの上で気持ち良さそうに眠っている
僕はひとりで探検した
魔女の部屋にはへんてこなものがいっぱいあった
どくろが彫ってある昔風の木の箱の中にはキッカイな石ころが詰まっていた
きれいに飾られた箱の中では骸骨の男と女が結婚式の衣装を着て腕を組んでいた
長くて先の尖った凶器も出てきた (フェンシングの剣です!)
腎臓・・ 腎臓・・
魔女はまだ探し続けている
結局、腎臓は見つからなかった
お掃除するはずのお部屋は足の踏み場もない悲惨な状態のまま
夜になってしまい、魔女はテレビの 【CSIマイアミ】 を見だした
あの部屋・・ 一体どうするつもりだろう・・