古い映画を見る28「八つ墓村」萩原健一、山崎努、加藤嘉、小川真由美、大滝秀治、渥美清 | ふらふら埋蔵さん日録

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息抜きで駄文綴ってマスよ?


 小学生の頃、濃茶の尼が「たたりじゃー!八墓明神はお怒りじゃぁ!!」と叫ぶTVコマーシャルが何故だか流行った。何かあると皆して「たたりじゃ~!」と言えばなんとかなってしまうというような、いい加減なノリで使っていた。

 当時影丸譲也の漫画本上下を買ってもらって読んだが、原作を基にしたものであったので後に見た映画版とは若干展開が違っていた。
 それにしても津山三十人殺しの都井睦雄をモデルにした田治見要蔵に山崎努をキャスティングしたのは絶妙。何しろ必殺仕置人の念仏の鉄である。
 主人公の萩原健一は運命に翻弄されるままで、特にこれといった動きもなく、渥美清の金田一耕助も地道な調査をしただけで探偵としての勘や冴えを感じさせない。
 そもそも硝酸ストリキニーネを盛った連続殺人なので、犯罪にトリックとかがない。
 ちなみにおすすめは、冒頭の諏訪弁護士事務所の加藤嘉と大滝秀治の共演シーン。
 原作よりオカルトっぽくしようとして、尼子義孝の夏八木勲とその配下の田中邦衛らの生首が晒された状態で眼と口を開けるシーンがあったかと思うと、ラストでコウモリのために炎上する田治見家を笑いながら崖の上から見下ろす落ち武者の亡霊の描写がある。探偵ものというよりは怪談物に近いテイストを狙ったのだろうか。
 さて、どうでもいい話だが、私が学生時代発掘調査に泊まり込みで行っていた埼玉県本庄市児玉町児玉には「梅之湯」という銭湯があり、双子のおじいさんが経営していた。
 「八つ墓村」には小竹さん小梅さんという不気味な双子のおばあさんが登場するので、この銭湯は作者の横溝正史の名前にちなんで「横溝湯」と呼ばれていた。
 現場が終わってから行くと、背中にカラフルな絵を背負ったお兄いさん方が洗い場にずらっと並んでいらっしゃって、「おう、空いたから使えや」と洗い場を譲ってくださったりした。
 秦野市に就職してから、それまであるわけないと思っていた横溝姓が腐るほど同地にあるのに驚き、「たたりじゃ~!」と叫んだものである。

原作 横溝正史 監督 野村芳太郎 脚本 橋本忍
松竹作品 1977年公開 カラー151分 発売・販売 松竹 SHBR-0257