古い映画を見る27「宿無し犬」田宮二郎、天知茂、江波杏子、水島道太郎、坂本スミ子 | ふらふら埋蔵さん日録

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息抜きで駄文綴ってマスよ?


 田宮二郎演じる犬シリーズの第1弾。脚本は後に小説家として名を知られるようになる藤本義一で、舞台はシリーズ通して基本的に関西。
 堺市生まれの藤本の脚本を、大阪市北区生まれの田宮、同市東区生まれの坂本スミ子が演じるのだから、当然二人の台詞は全て関西弁。田宮演じる鴨井大介につきまとう刑事を天知茂が演じるが、名古屋出身なのでネイティブな発音は困難だったかもしれない。
 ちなみに本作は舞台が神戸になっており、他地域からの移住者も多いので全員がコテコテの関西弁でなくてもよい仕組みになっている。
 「チャラくて女とはハジキが好き」というという鴨井大介と、何を考えているかよく訳のわからない天知茂のコンビ感は絶妙で、すっからかんの鴨井をうどん屋に誘い、おごって貰えるものと思ってうどんを注文する鴨井に捜査に協力するよう頼み、鴨井がうどんをすすりながら拒否するや否や「お前、文無しやろ。無銭飲食で逮捕するで!」と脅しにかかるシーンは笑えた。
 坂本スミ子の存在感も凄い。普通アクション映画には絶対出てこないタイプだ。お笑い担当だが、妙に変な色気を振りまいているのが楽しい。
 暴力団抗争の狭間で、一応やることはやる鴨井であったが、水島道太郎、成田三樹夫らとの銃撃戦に勝利した後、逮捕に現れた天知茂の姿を見て、江波杏子に「あいつの月給上げたらなあかん」と言って素直に逮捕される。そして、女と一緒にムショに入れる法律を作れと天知茂に一言もの申す。
 やがてシリーズ数本後に天知の刑事は、鴨井に「ショボクレ」とあだ名され、レギュラーとなる。
 鴨井と話をする時だけ、天知茂の眉間の皺が緩んで伸びている気がするのは気のせいだろうか?
 違う意味で「ウエスタン映画」である。

監督 田中德三 脚本 藤本義一 大映作品 1964年公開 モノクロ91分
発売・販売 株式会社KADOKAWA/角川書店 DABAー91037