『地方創生関連予算の概算要求について』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第46回

 来年度当初予算編成と税制改正に向けて、各省庁は8月31日、財務省に予算の概算要求と税制改正の要望を提出しました。予算の要求総額は102兆4,000億円程度で、3年連続で過去最大を更新する規模となっており、年末にかけて激しい折衝が予想されます。

 これから、いくつかの省の概算要求の概要を説明していきます。初回は、安倍政権の成長戦略の目玉の一つである地方創生関連予算を取り上げます。

●地方創生関連予算は事業費ベースで約2兆円規模

 まち・ひと・しごと創生本部が発足したのは昨年の9月12日です。当初予算の概算要求は今回が初めてで、以下のように大きく3つの部分からなります。

1.地方創生の深化のための新型交付金 1,080億円(事業費ベースで2,160億円)
2.まち・ひと・しごと創生事業費(地方財政計画)1兆円
3.総合戦略等を踏まえた個別施策 7,763億円


 「地方創生の深化のための新型交付金」とは、従来の「縦割り事業」を超えた取組を支援するものです。新型交付金の交付率は1/2なので、事業費ベースでは2,160億円の規模となり、内閣府としては、以下のような事業を想定しています。

①官民協働や地域間連携、地方創生の事業推進主体の形成、中核的人材の確保・育成、といった先駆性のある取組(例:観光地域づくり法人(日本版DMO)、生涯活躍のまち(日本版CCRC)、小さな拠点)
②既存制度に合わせて事業を行うのではなく、地方公共団体自身が既存事業の隘路を発見し、打開するために行う取組(いわゆる政策間連携)
先駆的な優良事例の普及・すそ野を広げる取組

 
 鳥取、島根両県は本年9月1日、山陰への外国人観光客誘致を進めるための新組織「山陰版DMO」を来年4月に向け、共同設置する検討を始めると明らかにしました。両県は、この原資にH26年度補正の地方創生関連の上乗せ交付金を充てる計画です。これは上記タイプ①の分かりやすい事例と言えるでしょう。

 今回の地方創生関連予算のなかで最も注目を集めたのが、この新型交付金の規模でした。概算要求が締め切られる前の8月の自民党の部会では、当時マスコミで騒がれていた新国立競技場建設費(約2,600億円)と比較してその半分にも満たないではないか、と声を荒げて政府の本気度を問う議員もいたところです。

 確かに、新型交付金の規模が大きいに越したことはありませんが、これだけが地方創生に使われる予算ではありません。上記の他の2つについて説明を加えます。

●内閣府で窓口のワンストップ化が図られる「総合戦略等を踏まえた個別施策」

 総合戦略等を踏まえた個別施策」(7,763億円)は、各省庁が個別に実施してきた施策をまとめたもので、最終的に内閣府で一括計上されます。

 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」には4つの基本目標が掲げられていますが、各施策を基本目標ごとに仕分けると、以下のとおりです。

i)地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする  2,191億円(農水省、経産省、厚労省を中心に11府省庁の施策)
ii)地方への新しいひとの流れをつくる 772億円(大学等への支援、テレワーク推進事業など7府省の施策)
iii)若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる 1,064億円(文科省、厚労省の子育て支援や非正規のキャリアアップ事業等)
iv)時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域間連携を図る 3,736億円(沖縄振興が1,800億円余。国交省で1,000億円を超えるなど、7府省の施策)


 もっとも、個別施策が省庁ごとに羅列されているだけでは、使い勝手が悪く、いくら良い施策でも伝わらなければ意味がありません。例えば、上記基本目標i)に分類される総務省の「地域経済循環創造事業交付金(別名、ローカル10,000プロジェクト)」(H28要求額40億円)は、10件以上利用している県がある一方、1件程度しか活用していないところも10県ほどあります。そこで内閣府は、年末の予算確定後、地方からみて分かりやすい総括的な資料を作成し、各省庁の施策についても窓口をワンストップ化する予定です。

 なお、今後、ここで掲載された約8,000億円の事業について、交付要綱等で使途のしばりが大きいものは、できる限り地域の実態に即して弾力的な運用が可能となるような見直しを図っていく必要があります。

●地方団体が自由に使える一般財源

 各省庁の縛りがかかる個別施策とは対照的に、もうひとつの「まち・ひと・しごと創生事業費」(1兆円)は、地方公共団体が自由に使える一般財源です。地域の実情に応じ、自主的かつ主体的に地方創生に取り組むことができるよう、総務省のH27年度地方財政計画の歳出に初めて計上され、H28年概算要求でも1兆円要求されており、少なくとも地方創生総合戦略の実施期間である5年間は継続して措置することが表明されており、これを確実に実現していくことが求められます。

 ここで、「まち・ひと・しごと創生事業費」の1兆円が地方団体にとっていかに重要な財源であるかを本年度の27年度予算の内容で紹介します。内訳は、次の2つに分けられます。

a)地域の元気創造事業費 4,000億円
b)人口減少等特別対策事業費 6,000億円


 a)の「地域の元気創造事業費」は既に実施されている仕組みで、各地方公共団体の行革努力の取組を反映する指標と地域経済活性化の成果を反映する指標を用いて算定されます。

 一方、b)の「人口減少等特別対策事業費」は、①人口を基本としたうえで、②まち・ひと・しごと創生の「取組の必要度」及び③「取組の成果」を算定に反映させるもので、その際、④全国的かつ客観的な指標で地方団体ごとのデータが存在する以下の指標を用います。

・人口増減率・転入者人口比率・転出者人口比率・年少者人口比率・自然増減率
・若年者就業率・女性就業率 等


 「取組の必要度」を反映させる算定とは、上記の指標について、現状の数値が悪い地方公共団体ほど需要額を割増すということです。つまり、人口減少が深刻な団体に対して手厚く配慮するという訳です。6,000億円のうち、5,000億円がこの考え方で配分されます。一方、「取組の成果」を反映させる算定とは、上記の指標について、全国の伸び率との差に応じて、つまり成果がでている程度に応じ、需要額を割増すということで、残りの1,000億円がこの方法で配分されます。

 そこで、個々の地方団体がどれだけこの財源を受け取ることができるかといえば、H27年度でいえば、都道府県で20~100億円、市町村で数億円(全国平均)の規模にのぼり、地方債の活用と合わせて考慮すれば、相当程度の事業を実施できることになります。

●税制改正要望の目玉は企業版ふるさと納税の創設

 最後にH28年度税制改正要望を紹介すると、主なものは以下のとおりです。

・地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設
・地方拠点強化税制の拡充
・雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除の延長等
・地方を訪れる外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充


 目玉は、企業が縁のある又は応援したい地方団体に寄付すると、法人税や法人住民税等が控除される「企業版ふるさと納税」の創設です。具体的な制度設計はこれからですが、個人版のふるさと納税と同様に、比較的余裕のある大都市の企業から寄附のカタチで地方団体に支援の輪が広がり、地方団体の取り得る施策の幅が広がります。どのような基準で控除するかなど、課題は色々ありますが、地方創生推進の一助となることが期待されるため、実現に向けて微力を尽くして参ります。

 次回は、農林水産関係予算を取り上げます。