『林業関係予算について』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第38回

 前回は農林水産関係予算のうち農業と畜産・酪農に関係する予算について説明しましたが、今回は林業関係予算について説明します。

● バランスよく確保された林業関係予算

 H27年度林野関係予算は2,904億円とH26年度当初予算額より12億円少なくなりましたが、26年度補正予算で824億円を前倒し確保できたことで合計3,728億円を確保できました。ここ数年懸案だった課題に対して予算が相応に手当てされ、林業分野全体でみると、まあまあの仕上がりになっているものと考えられます。

 懸案だった課題のなかで最大の関心事は、森林整備加速化・林業再生基金(以下、基金と略す)の継続でした。基金はH21年度補正予算で造成され、本年度末で終了する予定になっていましたが、本事業は、地域の実情に応じて、関係者の合意の下で、間伐・路網整備、木材加工・流通施設や木質バイオマス利用施設の整備等、川上から川下に至る対策を総合的に実施するもので、森林・林業・木材産業の成長産業化に大きく貢献し、森林の多面的機能の維持・発揮のほか、山村地域における新規就業者の増加など、これからの地方創生に欠かせない事業であり、来年度以降も絶対に延長すべきと主張していたところです。今回も補正予算の中で約546億円が確保されました。補正だけに、再来年度以降も確実に措置されるよう、引き続き働きかけていく必要があります。

 事業の内訳としては、①森林整備加速化・林業再生交付金が526億3,000万円、②森林整備加速化・林業再生事業が20億円です。後者は、木質バイオマス発電施設の整備を、都道府県に設置されている森林整備加速化・林業再生基金を活用し資金融通により支援するものであり、前者は以下のような幅広い取組を支援します。

(1) モデル的な木造公共施設の整備、公共施設の内装木質化
(2) 木質ボイラー、未利用間伐材等の収集・運搬機材、木質チップ・ペレットの製造施設等、木質バイオマス利用施設等の整備
(3) CLT(直交集成板)建築の施工性のデータ収集等を目的とした建築物の実証、開発・普及等、新規用途の導入促進
(4) 木材加工流通施設等の整備
(5) 路網の整備
(6) 高性能林業機械等の導入
(7) 7齢級以下の森林を対象にした未利用間伐材の利用促進
(8) 原木しいたけの競争力強化に資する生産資材の導入、特用林産物の安全・安心の確保や消費の拡大に向けた取組


 なお、(8)の原木しいたけに対する支援は、基本的に25年度補正とほぼ同じメニューで、生産のサイクルと予算のサイクルとのズレに対しては、25年度時よりも一層細やかかつ、弾力的に運用されることになります。

● 温暖化対策目標の達成にむけ、間伐事業が大幅増加

 もう一つの懸案は、間伐事業に対する十分な予算の確保及び森林吸収源対策の財源確保でした。わが国は地球温暖化防止目標として、2020年度の温室効果ガス削減目標を3.8%(2005年度基準)と掲げており、その目標達成には二酸化炭素の森林吸収量2.8%以上を確保することとしています。これは、間伐実施面積に換算すると、年間52万ha(H25~32年度まで8年の平均)の間伐が必要になります。今回、26補正と27当初を合わせると、年間47万haの間伐事業予算が手当されており、これまでより10万ha分の増額となっています。年間52万haの間伐には未だ5万ha分足りませんが、今後の事業拡大に向けて大きな一歩といえます。

 また、森林吸収源対策の財源確保についても、昨年に続き、また一歩前進がみられました。与党の税制改正大綱に、検討事項として以下のとおり記載されています。

<平成27年度税制改正大綱(抜粋)(自民党・公明党 平成26年12月30日)>
 第三 検討事項 森林吸収源対策及び地方の地球温暖化対策に関する財源の確保について、財政面での対応、森林整備等に要する費用を国民全体で負担する措置等、新たな仕組みの導入に関し、森林整備等に係る受益と負担の関係に配意しつつ、COP21に向けた2020年以降の温室効果ガス削減目標の設定までに具体的な姿について結論を得る。

 つまり、新たな仕組みの導入に関し、「COP21に向けた2020年以降の温室効果ガス削減目標の設定までに」という期限が初めて書き込まれたのです。COP21は今年12月に開催される予定ですので、それまでに何らかの結論が得られるものと考えられ、税制にしろ財政にしろ、森林吸収源対策及び地方の地球温暖化対策に関する財源の確保が適切になされるよう、引き続き働きかけてまいります。

● 新たな木材需要創出総合プロジェクト

 さて、木材需要の創出や国産材の安定供給体制づくりなどの川下対策は、新規事業として「新たな木材需要創出総合プロジェクト」17億円が盛り込まれ、内容は以下のとおりです。

*CLT(直交集成板)等新たな製品・技術の開発・普及 4億8,600万円
・CLTの建築基準整備に必要な強度データ収集等
・住宅分野等における新たな製品・技術の開発
・加工機械の開発・普及、設計士等の人材育成等

*地域材利用促進 9億6,000万円
・木づかい協力業者による木材利用の促進
・木質バイオマスの利用拡大
・公共建築物等の木造化・内装木質化にむけた設計段階からの技術支援 等

*地域材の安定供給体制構築への支援 2億1,500万円
・民有林と国有林の連携した協議会の設置や広域原木流通機構の取組への支援
・中小製材工場の連携や山元と地域の加工工場等が連携した体制構築への支援

*森林認証・認証材普及促進対策 2,700万円

 なお、26補正でも「木材需要拡大緊急対策」として26億円が前倒しされています。内訳は、CLT等新たな製品・技術開発に5億円、木造住宅等需要拡大支援事業に21億円が確保されています。

● 山村の活性化およびジビエ関係の支援新設

 最後に山村に対する地域政策を説明します。人口減少社会における農山漁村の活性化は、政府の地方創生戦略の重要な柱です。これまで「森林・山村多面的機能発揮対策」25億円があります。地域における活動組織が実施する森林の保全管理や森林資源の利用等の取組を支援する、非公共のソフト事業です。これに加え、今回、新規事業として「山村活性化支援交付金」7億5,000万円が計上されました。

 この交付金は、山村振興法に基づき指定された振興山村の市町村等に対する定額助成(1地区当たり上限1,000万円)ですが、薪炭・山菜等の山村の未利用資源等の潜在力を再評価し、それらを地域ぐるみで活用しつつ地域活性化に取り組むため、以下の活動を支援します。

(1) 地域資源の状況・利用形態等の調査
資源量調査、聞き取り調査、管理・保全形態等調査など

(2) 未利用資源等を地域ぐるみで活用するための合意形成、組織づくり、人材育成
住民意向調査、体制づくりのためのワークショップ開催、推進体制・組織の整備、実施計画づくり、技術研修会等の開催など

(3) 特色ある地域資源の域内での消費拡大や域外への販売促進、付加価値向上等を図る取組の試行実践
マーケティング調査、地場農林水産物を使った地域産品づくり、既存の直売所等と連携した販売促進、地域ブランドづくり、商品パッケージ等のデザイン検討など

 もう一つの新しい動きは、ジビエに関する制度と支援ができたことです。ジビエとは、野生鳥獣肉のことで、シカ、エゾシカ、イノシシ、キジ、ウズラなどの肉のことです。これまで捕獲鳥獣は主に埋設、焼却処分等によって処理されており、食肉としての利用は地域的にも量的にも一部にとどまっていました。ところがH26年11月に、厚生労働省が「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」を作成、食肉処理加工や食肉販売の安全性の確保が図られました。それを契機に農林水産省は、鳥獣被害防止対策の一環として、捕獲した鳥獣を地域資源として有効活用する観点から、以下のような支援を始めています。(いずれも、ジビエ関係は予算額の内数)

*鳥獣被害防止総合対策交付金(27当初95億円、26補正20億円)
・食肉処理加工施設等の整備、食肉利活用衛生管理マニュアルの作成、食肉利用のための研修の実施等に対する補助(補助率1/2等)

*6次産業化ネットワーク活動交付金(27当初23億円、26補正12億円)
・ジビエの新商品開発・販路開拓等に対する補助(補助率:6次産業化戦略・構想あり:1/2以内、戦略・構想なし:1/3以内)
・融資を活用したジビエ加工・販売のための機械・施設整備に対する補助(補助率:3/10以内、上限額1億円)

 折しも自民党では先月の2月17日、ジビエ議連(捕獲鳥獣食肉利活用推進議員連盟:会長は石破茂衆議院議員)を創設し、捕獲鳥獣の食肉の有効利活用を後押ししています。ジビエの利活用が進めば、鳥獣の捕獲も促進され、農林水産物や生活環境の被害等が軽減されていくものと期待されます。

 次回は、水産業関係予算について説明します。