『農畜産業予算について』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第37回

 安倍首相は2月12日、衆参両院で施政方針演説を行い、「戦後以来の大改革」に力強く踏み出そうと訴えかけました。その改革断行の一番手に挙げられたのが農政で、「強い農業を創るための改革。農家の所得を増やすための改革を進める。」と強調されました。

 今回は、農業関係予算のうち、農畜産業に関係する予算について説明します。

● 補正予算と当初予算の合計で11.2%増の2兆5,871億円

 農林水産分野のH27年度当初予算はH26年度当初予算に比べ0.8%減の2兆3,090億円となりましたが、H26年度補正予算(2,781億円)と合わせると前年度比11.2%増の2兆5,871億円となります。

 H27年度予算の主な柱は、以下のように4つあります。

① 米価下落への対応に必要な予算を措置。
② 農地中間管理機構による担い手への農地集積・集約化など構造改革を引き続き推進。
③ 日豪EPA(経済連携協定)の発効など貿易自由化に対応できるように、畜産・酪農の競争力を強化。
④ 農林水産物の輸出推進や6次産業化の支援など農林水産業の成長産業化を推進。

 各々の内容について、順次説明します。

● 米価下落に対する緊急対策及び収入減少対策

 H26年産米の深刻な米価下落に対して、農林水産省は米の直接支払交付金(10a当たり7,500円)の早期支払いを希望する農家には、昨年の12月12日までに交付を完了するとともに、5月以降となるナラシ対策(収入減少影響緩和対策)の支払いまでの資金繰り対策として、日本政策金融公庫の農林漁業セーフティネット資金について融資の円滑化や無利子化を行っています。その他、売り急ぎ防止対策により、26年産米の出荷を後送りし、27年11月以降に出荷されるものに対し米穀機構が保管料等を支払うことにより、米の需給の安定を図る(20万トン程度)など、米の需給の安定を図ることとしています。

 また、補正予算により、新たな対策として、「稲作農業の体質強化緊急対策事業」200億円を緊急的に実施しています。この事業は、(A)27年産米生産むけの肥料・農薬代などの資材費引下げや労働時間短縮の取組み、あるいは(B)直播栽培の実施、(C)農業機械の共同利用のいずれかひとつに対して、支援するものです。支援額は各々異なりますが、例えば15項目の取組メニューがある(A)に対しては、1haで3万円(1ha未満は2万円)、さらに面積が1ha増えるごとに2万円を助成(20ha以上は41万円に固定)し、稲作農家のコスト縮減を後押しするものです。

 当初、3月末までの交付に間に合わせたいとの思いが先走り、交付申請期限を1月30日までとしていましたが、使い勝手が悪い等の意見が多かったほか、現場への周知期間も十分ではなかったため、1月30日時点では十分な申請がなされませんでした。これを受けて、現在、弾力的な運用ができる旨のQ・Aを発出した上で、応募期間を2月27日(金)まで延長しています。まだ間に合いますので、積極的にご活用を検討頂くとともに、念のため、今回の追加申請にかかる交付は5月以降になりますことにご留意下さい。

 H27年度当初予算では、ナラシ対策に802億円、ナラシ移行円滑化対策に385億円が計上されました。ナラシとは、米や麦、大豆などを作る農家の収入減少分の9割を国と農家の積立金(拠出割合は、農業者1:国3)で補填する、収入減少の影響を緩和するセーフティネットの仕組みです。これまでは、認定農業者と集落営農のうち一定規模以上の方しか加入できませんでしたが、H27年産からはナラシ対策への加入要件を緩和し、加入者の増加に努めることとしています。具体的には、①規模要件を廃止する、②集落営農について、法人化要件は設けないなど、要件を2要件のみに簡素化しています。

 ナラシ移行円滑化対策とは、H26年産において規模要件が残るナラシ対策に加入できない方が、27年産からナラシへ円滑に加入していけるように、26年産に限り、農業者の拠出を求めず、臨時で補助する予算措置です。もし仮に、26年産のナラシ対策で米の補填が行われる場合は、ナラシ対策の国費相当分の5割が交付されることになります。

● 農地中間管理機構の本格稼働に伴い協力金を増加

 農地中間管理機構による担い手への農地集積・集約化には当初予算で190億円、補正予算と合わせると390億円が計上され、H26年度の305億円に引き続き構造改革が推進されます。全都道府県に設けられた機構が本格稼働するのに伴い、農地の出し手が増えると見込み、協力金を増やしています。ところが、読売新聞の調査によると、機構の仲介により、今年度に貸付けのめどが立っている全国の農地面積は、目標の1割程度の約1万2,400haにとどまります(平成27年2月1日(日)の記事)。今後、農地の出し手が安心して機構へ任せられる環境をさらに醸成していく必要があるとともに、地域における話合いが一層進むことを期待しています。

 このほか、耕作放棄地を再生利用するための雑草・雑木除去や土づくり等の取組を支援する「耕作放棄地再生利用緊急対策交付金」が、補正と当初合計でH26年度と同額の19億円が確保されるとともに、大臣折衝により、新規で農地集積加速化のための生産基盤づくり(「農地耕作条件改善事業」)に100億円が盛り込まれました。この事業は、機構が農地を大規模化する際に、あぜ道をなくしたり、排水施設などの農地整備を機動的に行うものです。

● 農業農村整備事業について

 農地中間管理機構による農地の借受け・貸付けとの連携等により、農地の大区画化・汎用化が推進され、そのために1,089億円(H26年度当初比25億円増)が農業農村整備事業で実施されます。

 本事業では農地の大区画化・汎用化のほかに、水路のパイプライン化や老朽化した農業水利施設の長寿命化・耐震化対策等が行われます。補正予算158億円と合わせて2,910億円(26年度当初は2,689億円)が確保されました。対前年度伸び率は8.2%と、一般公共事業費の伸び率5.7%と比べると大きくなりましたが、予算規模は、民主党政権誕生前の麻生政権(H21年度)の5,772億円に遠く及びません。民主党政権は、農業者戸別所得補償制度を新設するため、農業農村整備事業を約3,000億円削減し、その原資にしました。自民党は政権奪回後、H25年度予算から削減分の回復を目指し、党の農林部会や農業農村整備推進議員連盟で決議を採択、要請活動を続けていますが、農業農村整備事業関係予算(農業農村整備事業+農山漁村地域整備交付金)は27年度でも未だ3,488億円の水準です。今回は、上述の非公共である「農地耕作条件改善事業」100億円も獲得できましたが、食料自給力向上の重要な要素である農地・農業用水等の農業資源の維持向上のため、必要な予算額確保に向けて引き続き微力を尽くしてまいります。

● 畜産関係予算の強化

 畜産・酪農予算は、日豪EPA等に対応できるよう、競争力強化に重点が置かれ、補正と当初予算を合わせると総額2,368億円が確保され、前年度当初から515億円の増額を確保しました。

 日豪EPAは現行38.5%の牛肉の輸入関税が約20年かけて半分の水準まで段階的に下がる内容で、3月にも妥結が取りざたされるTPP(環太平洋経済連携協定)は、米国との交渉でも牛肉や豚肉の大幅な市場開放を求められています。

 畜産・酪農の強化策で目玉となるのは、①畜産収益力強化対策と②和牛の生産拡大を支える研究開発、の二つの新規事業です。

 畜産収益力強化対策は、地域の中心となる畜産・酪農業者に必要な機械(搾乳ロボット、バルククーラーなど)をリースしたり、牛舎の建て替えなど施設整備を支援する事業で、75億円が計上されました。補正予算に201億円が前倒しされており、合わせると276億円になります。補助率は原則1/3から1/2に嵩上げされ、個別経営体も対象とされます。

 また、和牛の生産拡大を支える研究開発は、和牛の受胎率の向上にむけた繁殖機能の改善等や、乳牛となる雌牛を増やすための産み分け技術の精度向上等の研究開発を推進するもので、3億円が確保されました。また、自給飼料の生産拡大のための草地整備を加速化する「草地関連基盤整備」は補正と合わせて72億円が計上され、前年度から倍増しています。離農農家の草地の円滑な継承を図るため、離農施設の撤去や牧柵の除去等の簡易な基盤整備も支援します。

 一方、輸入に頼るトウモロコシなど配合飼料価格が高騰したり、畜産・酪農の経営が採算割れしたときに補助する経営安定対策には、前年度比121億円増の1,831億円が計上されました。

● 農林水産物の輸出促進と6次産業化の支援

 農林水産物の輸出促進は、日本食・食文化の魅力発信と表裏一体となった取組や輸出対応型施設の整備など、ソフト、ハード両面からの取組が必要です。H27年度当初予算では、これまでの「日本食・食文化魅力発信プロジェクト(24億円)」、「輸出総合サポートプロジェクト(14億円)」等のほかに以下の三つの新規事業が認められました。

*「和食」の保護・継承の推進 3億円(和食の料理人・学者等から提案された、消費者の理解を深め実践を促す活動等を支援)

*グローバル・フードバリューチェーン戦略の推進 2億円(食のインフラシステムの輸出に向け、重点国におけるフードバリューチェーン構築のための調査・取組を支援)

*国際農産物等市場構想推進事業 1億円(国際空港近辺における青果物・花き等の輸出拠点化構想の策定を支援)

 また、輸出対応型施設の整備では、輸出青果物の長期保存が可能な低温貯蔵施設等の整備を支援するため、20億円が「強い農業づくり交付金」の優先枠で確保されました。なお、「強い農業づくり交付金」とは、国産農畜産物の安定供給・輸出拡大のため、強い農業づくりに必要な、生産から流通までの共同利用施設の整備等を支援するもので、当初予算で231億円、補正と合わせ407億円が盛り込まれています。

 6次産業化の推進では、ファンドの積極的活用や医福食農など異業種との連携が推進されます。異業種との連携では、「先端ロボットなど革新的技術の開発・普及」が新規事業として認められ、補正を含め合計49億円が計上されました。この事業は、生産性の飛躍的な向上を実現するため、ロボット産業等と連携した研究開発、現場普及のための導入実証等を支援するものです。

 ファンドの活用については、(株)農林漁業成長産業化支援機構を通じ、生産・流通・加工等の産業間が連携した取組について、資本の提供と経営支援を一体的に実施します。そのために、財投資金で150億円の出資枠と50億円の貸付枠が設けられました。

 次回は、林業と水産業に関する予算を説明します。