『公共事業関係予算について(その4)』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』 第14回

 今回は、前回に続いて交流人口の拡大を通じた地方の活性化策について触れたいと思います。

● 広域ネットワーク化を重視した交通インフラの整備

 交流人口の拡大を通じた地方の活性化策は、概ね以下の4つに分類できるかと思います。
① 国内からの訪問者を増やす政策
② 海外からの訪問者を増やす政策
③ 滞在時間・日数を増やす政策(ハード面)
④ 現存する自然・社会資産を活用する政策(ソフト面)

 今回は、公共事業に着目した活性化策について触れますが、大前提として、地域活性化を図る上では、何よりもその地域の住民の方が自らの地域をよくしよう、盛り上げていこう、そのためには何を準備してどう行動すればよいか、という意識を持って地道に継続的に取り組むのが必要不可欠であることも付け加えさせて頂きます。何かやろうとした時に、法律や制度が障害になっているのであれば、或いは何らかの支援が必要であれば、それをカバーするのが行政・政治の役割と思いますし、また、地域活性化には、若者・ばか者・よそ者の3つの人種が必要と言われていますが、そのような人達が集まる場をセットするのも行政・政治の役割かと思います。

閑話休題。国内や海外からの訪問者を増やす有効な手段として、交通インフラの整備が挙げられます。都市に住む有識者の中の一部には、田舎での交通インフラの整備は非効率であるし、都市に流出するだけと揶揄する人もいますが、やはり、交通インフラの整備なしには、人や企業も行こうという気にならないですし、流出の懸念はあるものの、未整備のままでじり貧になるよりも、人・物・金の流れをよくし、プラス思考で地域活性化を図るためには必要不可欠なものと考えます。また、このことは、地方に来る所要時間の短縮を図ることにつながり、これで時間距離が短縮され、実際に来訪が見込める地理的範囲が拡大します。

この点、依然として多数残っている、高速道路の未開通区間を解消することは、全国に及ぶ広域ネットワークが実現し、時間距離の短縮を超える相乗効果が期待できます。また、高速道路の暫定2車線区間の4車線化も急ぐ必要があります。暫定2車線では平時の交通量は対応できても、GWや年末年始等の連休や、豪雪、交通事故等の緊急時には大規模な渋滞を発生させてしまいます。とくに、その区間が空港や港湾とのアクセスに絡んでいる場合は、海外訪問者等の利便性を高める観点からも、実現の優先順位を高めるべきでしょう。

なお、国土強靭化や東南海地震対策等の視点から、例えば中国・四国地方の南北一体化の複数の道路をリダンダンシー(冗長性)ルートで整備することも忘れてはなりません。

 海外からの訪問者を増やすうえでは、やはり空と海のアクセスが重要となります。政府の外国人観光客1千万人増の目標、そして2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催決定、さらには本年3月30日から、羽田空港で海外便が大幅に増便されたこと等が追い風になっています。

空の面では、これまで、海外と東京は格安で行き来しやすくなっているものの、そこから日本各地への移動となると、成田と地方の接続が十分でないなどの問題がありましたが、羽田での増便により、相当程度改善されると思います。また、未だ地方空港で受入体制が不十分なところは、この際、拡張整備を図り、LCCを誘致することも一考かと思います。そして、第二滑走路の整備等も、悪天候対応や巨大地震発生時のバックアップ機能として急がれます。さらに、海外チャーター便や海外からの個人ビジネス・ジェットの誘致にあたっても、現行施設でも運用が可能かもしれませんが、複数の滑走路があることは、アピール度を高めるでしょう。

海の面では、大型クルーズ船の定期的な寄港に対応できる、港の浚渫や港湾施設の拡張整備が重要です。大型クルーズ船を受け入れられる港の数は全国的に限られており、ここでの利便性向上は、他との差別化に役立ちます。また、周辺の漁港地区の衛生管理の高度化やファストフィッシュを生産できる加工場を整備することなどにより、水産物の米国やEU向け輸出促進にも資することになります。

● 地域内の安心・安全を高めるインフラ整備

 国内外からの訪問者を増やすことと並んで、訪問者の滞在時間・日数を増やす政策も重要です。つまり、地方の受入れ体制を整えることですが、単に宿泊施設や観光・交流施設の収容能力の拡張や一層の耐震化を進めることにかぎりません。

むしろ、①で触れた高速道路等の高規格幹線道路の整備に加え、地方域内の交通ネットワークのダブル・ルート化や、中山間地の集落や漁村から中心都市に立地する高度医療施設等へのアクセス道路の整備、或いは県や市町村が管理する病院等のインフラの老朽化対策を推進する、といった広い視点からの取り組みも必要です。というのは、域内の交通ネットワークに未開通・未整備区間があると、来訪者増の経済効果がある地域に偏り、地方全域にその恩恵が広がりにくくなります。中山間地の集落や漁村を交通ネットワークにしっかり組み込むことで、都市との交流促進や若者の定住促進にも繋がります。

 遠回りのようですが、地元の活性化や住民の安心・安全を高める政策を継続することが、来訪者の安心感や満足度も高め、結果的に滞在時間・日数を増やすことにつながることが期待されます。

● 地元の自然環境や地域資源、伝統・文化の再発見・活用・情報発信

 これまで物理的な施設の整備を中心に説明してきましたが、最後に“魅力の掘り起こし”というソフト面の政策の重要性を指摘したいと思います。交通の利便性の向上は諸刃の剣で、人々を惹きつける多様な魅力があれば来訪者を見込めますが、魅力がなくなってくると、今度は他の地域へ奪われるばかりか、地元住民も他の地域で消費するようになり、地域が衰退しかねません。地道に地域の魅力を掘り起こし、それを活用・発信する取組の継続が大切です。多彩な魅力の存在は、その地域での一人当たり支出額の増加にもつながるでしょう。

 魅力の掘り起こし活動は、「いま」「ここ」にある自然環境や、特産品等の地域資源、伝統・文化・芸能、さらには生活スタイル自体も、歴史を積み重ねてきた“価値ある資産”であるとの理解にもとづく活動です。こうした目利きは、地元の人々だけでなく、外国人や都会の若者などのアウトサイダーも巻き込んで行うと、その成果が予想以上に大きく展開する可能性があります。

 例えば、地元では見過ごされがちな中山間地や漁村の集落のたたずまいや、エコツーリズムに適した森林、あるいは世界ジオパーク等の美しい海岸線、サーフボードに適した海岸等の存在自体が、外部の人々からみると金銭換算しがたい貴重な価値と映ることもあります。それらのグリーン・ブルーインフラを公共事業とみなして一層整備に磨きをかけることも一考かと思います。人と自然が交わる里山は、日本にしかない資源として、海外から訪問者を惹きつけはじめていますし、和食(日本人の伝統的な食文化)が世界無形文化遺産に登録されるなど、地方独自の伝統や食・生活文化に支えられた、洗練度の高い「地域ブランド商品」も、少量・高価格でありながら、注目されはじめています。

これらを各地域で一体的にとらえてオンリーワンのものに仕上げて有効活用し、受入体制の整備とともに、国内外に情報発信しながら交流促進に努めていくことが重要かと思います。

● 選択肢はまだある公共事業増額の財源

以上、4つの政策にそった公共事業の展開について説明しました。目新しいものや奇抜なアイディアはありませんが、関係者が同じ目標に向かって地道に、持続的に取り組むことが重要だと思います。
それでは、最後に、公共事業の増額が必要な中、その財源はどうするのかという問題を考えてみたいと思います。

国・地方ともに厳しい財政状況の中、そして人口減少社会の中で、私としては、既存の制度の見直しや資産の流動化等について本格的に検討・実施すべき時期に来ていると思っています。

制度の見直しという点では、建設国債の増額です。現在の国の予算編成では、どの経費も聖域とせずに、一律マイナスシーリングを行ったうえで、特別枠として重要施策に重点配分するやり方を採っています。しかし、公共事業や農林水産業のように、中長期的に適切かつ計画的な国土強靱化や食料安全保障の取組が重要な事業については、5年ごとに計画額を改定する中期防衛力整備計画のように、きちんと必要額・総額を精査の上で、各年度に必要な額は、シーリングの対象外として適切に確保することが必要と考えます。例えば、公共事業予算が、現在の水準より毎年度1兆円程度の増額が必要であれば、50年償還として、年間300億円程度の歳出増で済み、バランスシート運営の観点から、見合いで資産も残りますし、次世代にわたり恩恵があること等から、許容範囲かと考えます。

一方、建設国債といえども、借金であることには変わらず、借金を増やすのはよくないという指摘もあります。これについては、借金の許容範囲を示す基準がない中、両者の考えには各々の哲学があるため、あまりガチに議論しても意味がないと思います。今重要なのは、今後の少子高齢化・人口減少社会を考慮した際に、国と地方の再生を図るのはこの10年が最後のチャンスになるかもしれないという危機感をもって、よかれと思うことは果敢に実行に移していくことだと思います。社会保障以外の予算の対GDP比がOECD諸国の中で最低になった日本、そして、景気回復と財政健全化の両方を実現しつつある日本において、予算増額の必要性等がきちんと説明できる事業は、着実に実施していくことが重要です。現金がないからといって、建設国債で実施できる事業まで一律にシーリングをかけるのは合理的とは言えませんし、本当に不要と思える予算があるのであれば、財務省が個別に切り込んでいけばよいと思います。

また、建設国債の増額だけでは不十分な場合、新しい仕組みとして、巨大地震発生時のバックアップに備えてリダンダンシー(冗長性)を整備するために、「国土強靭化連帯賦課金(仮称)」を日本に居住する住民に賦課することも一案かと思います。制度設計が難しいようであれば、東日本大震災の時のように、年限を10年程度に区切って、所得税や法人税に一定率を上乗せする方法もあってよいかと思います。

さらに、財源確保の手法として、資産の流動化もあります。現在、平成24年度末で、国の持っている資産としては、約272兆円の有価証券、約186兆円の貸付金、約269兆円の有形固定資産等があります。有形固定資産をすぐに現金化するのは難しいかもしれませんが、例えば、貸付金の債権の一部を信託や譲渡等の手段で前倒しして現金化し、基金等で管理しつつ中長期的に活用するといった方法もあります。例えば、中身の精査が大前提ですが、貸付金にかかる償還予定財源の3割の約56兆円が単年度で一度に現金化できた場合、毎年2兆円程度使っても約30年は使えます。こうしたアイディアや税収増の取組、行革等を工夫しながら実施していけば、高齢者数がピークを迎えるといわれる2040年頃までは何とかやりくりできるのではないでしょうか。

いずれにしても、財政原理主義の呪縛に囚われ過ぎて、長引くデフレ、地方の衰退など、日本の危機が突破できなくなってはもともこもありません。

また、これまでの10年間は、高齢化の急速な進展により、医療や介護の業界が地方の若者の雇用を相当程度吸収していたものの、今後、地方では高齢者の大幅増等は見られず、逆に都市部で高齢者が大幅に増加することが見込まれるため、都市部に一層若者が流出する懸念もあります。そのような状況において、これまで公共事業を特集してきましたが、公共事業を安定的に確保し、計画的に実施していくことにより、再度若者の雇用の受け皿の一部になることが期待できますし、もって、地域経済の活性化、安全安心の確保が図られることが期待できます。引き続き、国と地方の再生に向けて、健全財政に留意しつつも、必要な事業は着実に実施していけるよう微力を尽くしてまいります。