夏の間、まるで修行かのように

毎日ひたすら前世セッションをし続けた。

 

占い以外のセッションも、

顔を見ずに行う電話でのセッションも

初めてだった。

 

 

依頼人たちの事前の情報や

見えるものは何もない。

 

電話が繋がってすぐに始まる。

 

 

何も困ることはなかった。

むしろ、

楽すぎてこれで良いのかと

驚いたほどだった。

 

 

占いの方がまだ考えることが多かったし、

説明も必要だった。

 

だけど前世セッションは、

何も考える必要がなかった。

 

 

ショートムービーを見るように見えるまま、

思うままを伝える。

そうすると、涙が溢れたり鳥肌が立ったり、

様々な今世の記憶を思い出したりと、

依頼人自身に反応が起きた。

 

前世の情報を頭で理解してもらう必要はなく、

わたしはただ前世のスピリットと

今世の人を繋ぐだけでよかった。

 

それがどれだけ負荷が無かったかは、

300人のセッションを終えれた

自分の体調が物語っていた。

 

 

ただ、まるで、

心に穴が空いてしまったかのように、

充実感や達成感、

満足感のように満ちるものは何も無かった。

 

 

出来ることが分かっただけ。

出来ることをやっただけ。

 

 

どれだけセッションをしても、

歓びを感じることがない。

 

それに気付いてしまったら辛くて、

出来なくなった。

 

 

それは前世セッションが始まってから

わずか3ヶ月程度のことだった。

 

 

 

 

寝てたのに、

ずっと起きていたような

不思議な感覚で目が覚めた。

 

それは寝てたというよりも、

瞬きしたら現実に戻ってきたみたいな。

 

さっきまで見ていた

夢の記憶がリアルだった。

 

 

夢の中でわたしは、

とある研究室によく通っていた。

 

みんなはその部屋の存在すら知らなくて、

なぜかわたしだけが知ってるその研究室には、

深い青の目をした男の人がいた。

 

 

わたしはその人に何かを届けてた。

 

 

部屋から出ると、

そこはいつもの日常の中で

わたしは道路の上を歩いてる。

 

さっきまでいた研究室は

空の中に消えていた。

 

 

 

 

建物と建物の間の、

青空が広がる何もない空間に、

その部屋はさっきまで存在していた。

 

青い目をした男の人は

上から私を見下ろしていて、

わたしは下から見上げていて。

 

そこには何も無いのだけど、

わたしたちは目が合っていた。 

 

 

目が合って、目が覚めた。

 

 

窓を開けて空を見る。

わたしは空を見上げるのが癖だった。

 

もしかしたらそれは、

今はこの目には見えないだけで、

本当は何かがそこにはあって、

誰かがこちらを見ているのかもしれない。

 

そんなことを思う朝だった。

 

 

その日は誕生日の前日だった。

今年の誕生日で30歳を迎える。

 

またひとつ大人になる自分に、

少し背伸びしたプレゼントを贈ろうと思った。

 

そうだ、9月の誕生石ってなんだっけ、

不意にそんなことを思い調べてみる。

 

 

・・・サファイアだ。

 

 

今朝夢から覚める直前に目が合った、

青い目を思い出す。

 

サファイアのような深い青だった。

 

 

その日は多くのことが起きた。

 

前世セッションをするほど

虚しくなる理由が分からなくて、

チャネリングセッションを

してもらうことにしていたのだ。

 

 

人間の視点では見えないことが、

高次元からは良く見えていることがある。

 

今わたしに何が起きているのか、

受け入れるために少し情報が欲しかった。

 

 

「シヴァ神ってわかる?」

 

 

神様に詳しくないわたしでも

聞いたことがある名前だった。

 

 

「その神様が舞ちゃんのところに来てる。

だけど、この神様と舞ちゃんの目線が合ってない。」

そう言われたのだ。

 

 

目が合うとか目が合わないとか。

 

そういえばそれは今朝見た

夢のキーワードではないか。

 

 

その夜は友達と会う約束をしていた。

 

彼女はインドで仕事をしているため、

「今日こんなことがあったんだけど…」と、

シヴァ神のことを知っているかと思って聞いてみた。

 

 

すると、

「インドで何年もシヴァ神の修行をしていた」

と言うのだ。

 

 

 

「誰が?」

「わたしが」

「嘘でしょ?」

 

 

 

シヴァ神に詳しいどころじゃなかった。

 

話を聞くほど、

いかにシヴァ神が破壊の神であるか。

 

それは深い愛からなのだけど、

厳しい神様であることが分かってきた。

 

 

「それでもシヴァと繋がりたいと言うなら、

インドにいる友人にプージャを開いてもらうよう連絡するよ。」

 

 

プージャというのは、

日本でいう祈祷のような儀式のこと。

 

「やりたい!」と即答した。

 

壱岐島のことといい、

前世のことといい、

この乗せられているような流れは

ずっと不思議だったのだ。

 

 

そして、

サファイアでバースデージュエリーを

作りたいことを伝えると、

「ブルーサファイアはシヴァの石だよ」

と言われ、さすがに震えた。

 

 

 

 

インド人たちは、

月の流れを大事にして生きているらしい。

 

シヴァプージャを開くのに

一番良い日取りを占星術を使って定めてくれた。

 

 

2020年11月19日にその日が決まった。

 

 

今では割と当たり前になったZOOMが、

まだ新しかった頃。

 

わたしもあまり使い慣れていないそれの使い方を、

インド人たちに教えるところから始まった。

 

 

現地の寺院と直接繋がる。

インド人たちも初めての試みだった。

 

 

前日から、

家のリビングにシヴァ神の祭壇を作り

プージャの準備をしていた。

 

 

「ブルーサファイアのジュエリーが完成して、今日届いたよ」

 

 

なんと9月の誕生日前日にオーダーした

ブルーサファイアのジュエリーが、

シヴァプージャ前日に完成したのだ。

 

 

つまりプージャを終えた明日から、

わたしとフェナカイト、

そしてそこにシヴァ神のエネルギーが転写された

ブルーサファイアとの物語が始まる。

 

 

一体これ以上なにが始まるというのか。

 

 

プージャ当日は、

ブルーサファイアのジュエリーと

壱岐島の土地の写真を祭壇の前に置いた。

 

 

 

 

 

 

これからこの青と目が合っていきますように。

 

それから、壱岐島での物語が

順調に進んで行きますようにと、

願いを込めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

假屋舞