病院清掃⑦ 清掃方法 清掃個所「コンタクトポイントを拭く」 | お掃除とメンテナンスのプロ 矢部要のブログ

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病院清掃 清掃個所「コンタクトポイントを拭く」

 

病院清掃では、人の触れる場所「コンタクトポイント」を拭き上げます。表面からの感染防止が私達の守備範囲ですので、ここを感染防止洗剤で清掃する事が大切です。以下にイラストを載せておきます。

使用するのはタオルやマイクロクロスが主流になります。ディスポーザブルクロスも良いのですが、エビデンスのあるものは日本で使用する際には非常に高額になってしまいますので、その点を了承する必要があります。現時点では小さなスペースはいざ知らず、大きな場所では難しいかもしれません。

 タオルとマイクロクロスであれば、出来ればマイクロクロスを使用しましょう。細かな汚れを大量に取る事が出来、表面積も広く、構造的に優れています。この際にはカラーリングもしておきましょう。場所によって予め色を決めた物を使用し、交差感染の可能性を下げます。

 拭き方としては二通りです。先ず、便利なのが、オフロケオーションです。予め洗剤を含ませたクロスをカートなどに載せて持って行き、拭き終える毎に新しいクロスと交換するのです。 

 もう一つの方法はその場で洗剤を塗布する方法で、小さなバケツ等で浸し、絞り、使用し、新しいものと交換します。汚れたクロスの二度漬けはいけません。スプレーヤーを使用する方が現実的でしょう。しかし、病室等の準清潔区域以上では、その場でスプレーする事はあまり好ましくありません。クロスにスプレーし、クロスに洗剤を染み込ませ、それで拭き上げる様にしましょう。

除去すべき対象微生物に有効な感染防止洗剤を選び、正しい方法で拭き上げます。拭き方としては、汚れがあった場合は必ず取る事が必要ですし、通常は汚れが見えませんが、そこに汚れがあるつもりで拭き上げます。塗り広げる様ではなく、拭き取るように拭くのです。拭いた跡が濡れている事が大変重要です。感染防止洗剤には有効接触時間が必要ですので、掠れ(かすれ)ているようではいけません。そして、この手の洗剤は殆どがノンリンスですが、「乾くと安全」と言う事ですので、濡れている時は触れないようにする事が大切です。酷い汚れがある場合はあらかじめ、適正な洗剤で除去しておく事になります。但し、チョットした汚れであれば、少し馴染ませてから、拭き上げる様にすると、元々洗剤ですので、良く取れる事に驚かれる事でしょう。この場合も、汚れ取りをした後で、上記の感染防止清掃を実施する事が大切です。汚れの取れた後を、拭き上げ、濡らし、乾かすのです。

 床清掃に感染防止洗剤が必要かどうかと言う議論が起こる事が良くあります。私が感染防止清掃のテクニックを我が日本で話し始めた頃に、良く質問で出ました。或る先進国の看護師協会が床消毒の必要性が無いのではないかとの提言をしたのです。この質問にいつも答えていたのが、「彼らの議論は消毒すべきかどうかがメインであって、床が水拭きで良いかどうかではありません」と言うものでした。諸外国と日本の床の扱いにおいて大きく異なる事は、洗剤についての考え方です。諸外国で、清掃会社に清掃を頼むと言う事は、床を洗剤拭きする事が基本になっているのです。彼らは土足の生活習慣ですので、床や建物を衛生的に保つには、洗剤使用が当たり前の事になっているのです。従って、彼らの議論では(増してや衛生性の必要な病院ですので、洗剤拭きが基本になっているのです)洗浄剤として、通常の洗剤で良いのか、除菌剤配合の必要や、わざわざ床を対象に消毒行為が必要などうかの議論なのです。その頃の我が日本では床を洗剤で拭く事は殆どありませんでしたので、従来の水拭きを偶(たま)にするだけで良いかどうかの議論とは一緒にならないのです。

 もう一つの問題は床からの感染の可能性です。床表面からの接触感染は少し考えにくいと言う事もあって、重要度が低い事も確かなのです(対象となる微生物にもよりますが)。しかし、現在では床からの感染防止も必要と言う考え方が主流になっています。と言うのは、病院内で、バック等を床に置く行為が頻発されている気付きがあったのです。床に置いたバッグをそのまま、病室に持ち込み、棚やテーブルに置くことも珍しい事ではありません。もう一つが車椅子の使用で、そのタイヤを触れる事も少なくない事から、現在では床清掃にも感染防止洗剤(洗剤を選ぶだけの行為でする事は同じですので)を使用した方が良いと言う考え方になっています。

 モップ使用に関しては、手絞りはいけません。針刺し事故等の危険性がありますし、手絞りと言う事で、衛生性にも問題を起こす可能性が否定できませんので。フラットタイプが好ましいのです。現在ではマイクロモップがお薦めです。非常に科学的で優れています。細かな汚れまで、大量に取れますし、作業性も優れています。以下に写真で例を挙げておきます。 左が普通の物で、右が掃き拭き同時使用の物です。掃き拭き同時のマイクロモップを使用する際には少しテクニックを覚える必要があります。いつも汚れが自分の内側にあるように拭いて行くのです。弊社の宣伝動画の中にその動作が入っていますので、参考にして下さい。QRコードを載せておきます。

クロスやモップの洗濯方法ですが、洗濯機で洗いましょう。洗剤は本当は専用の物が好ましいのですが、そうでなければ通常の洗剤を使用します。ネットに入れ、ゆっくり洗濯します。

乾燥機が最も好ましいのです。60℃以上で十分に乾燥させましょう。そうする事で、衛生処理が可能になるのです。

マイクロモップとマイクロクロスを使用し、乾燥機がなく、消毒が必要な場合は、塩素系の物は好ましくなりません。繊維を傷めますので。酸素系を使用してください。充分に乾燥させる事が非常に重要です。天日干しが出来れば、それが望ましいのです。