病院清掃④「覚えておくべき知識」 A「易感染者と日和見感染」
病院清掃では幾つか覚えておくべき知識があります。
A. 易感染者と日和見感染
B. 微生物の種類と増え方
C. 感染防止洗剤の種類と増え方
D. CDCガイドラインとEPA登録洗剤(合わせてNリストと日本のNITE)
E. ブラッドボーンパソゲン(血液由来病原体)
F. ゾーニングとカラーリング
です。
今日は易感染者と日和見感染について述べていきましょう。
病院には非常に体力の弱った方が居ます。現時点で病気に罹っている方や、体力の弱っている方、術後の回復期にある方などです。こうした方は感染し易くなっています。前回の三角の図で言うと、宿主(Susceptible Host=しゅくしゅ)で左下の部分です。
一方、(今度はでは図では右下です)私達の身の回りには、多くの種類の微生物が存在しています。体の内側にも外側にも多くの微生物が居るのです。常に身の回りに存在するタイプの微生物を常在菌と言います。こうした微生物は普段は私達とバランスを取り合っており、悪さをする事がないのですが、微生物の中には、宿主の体力が落ちると、感染を引き起こすものが居ます。日和見感染と言います。病院清掃をする上で注意すべき代表的なものはMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)です。どこにでもいる黄色ブドウ球菌ですが、この感染症を起こすと、通常の対処方法である抗生物質で代表的なメチシリンに耐性があり効果がないのです。
環境衛生上厄介な事はこの微生物はどこにでもいるタイプのものと言う事です。従って、安易な水拭きは却ってこうした微生物を広げてしまう可能性があります。私が常に「病院では安易な水拭きはいけません」とよく言っているのはこの為なのです。
そうすると、環境衛生上防ぐべき感染性微生物は2つのタイプがある事になります。一つが外から持ち込まれるタイプの微生物、インフルエンザや今では新型コロナウィルス等(いっぱいありますが)です。もう一つが常在菌で、日和見感染を引き起こす微生物です。
こうした事を意識し、清掃を行う必要があります。表面からの感染を防ぐ為には、これらの微生物の除去を心がけながら清掃する必要があるのです。従って、拭き作業では拭き作業後に(間違っても塗り広げる事なく)、こうした微生物の除去がしっかりなされる必要がある訳です。その為には感染防止洗剤の使用が必須なのです。
感染防止洗剤はこの目的専用に作られています。上記の効果をもたらせ、ノンリンス(水拭き作業で常在菌の塗り広げを防ぐ為)使用なので、手間も一度拭きで、手が掛からない様に設計さえているのです。