カーペットメンテナンス・背景の違い② | お掃除とメンテナンスのプロ 矢部要のブログ

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カーペットメンテナンス・背景の違い

カーペットの歴史を一寸書こうとして、ずいぶん前に読んだ米国のカーペットメンテナンスの教科書を探していたのですが、ついに見つからず断念しました。概略的で良く書けていたのですが、残念です。

カーペット自体の歴史については、皆様ご自分でネットででも調べてください。なかなか面白いかもしれません。ともあれ、もともとカーペットは敷物として発達したのですが、地べたに直に触れるより、何らかの敷物、草・藁・萱等の植物や毛皮などを敷く方が快適性や保温などから数段マシなわけで、敷物が様々な形で発達したのです。もともとカーペットは中央アジアから世界に広まり、移動性や毛皮より軽い事などから大いに重宝されます。そして、時代をぐっと飛ばし、18世紀に機械化の元になる織機(ウィルトンカーペット)が出、19世紀に機械化によって生産性が向上します。そして、20世紀に入り、織ではなく、基布に大量の針でパイル(毛)を打ち付けるタフテッドカーペットの出現で大量のカーペットが供給される事になるのです。カーペットが世の中に溢れるようになったのです。

 一方、カーペットは敷物としては保温性・静謐性には優れていますが、敷きっぱなしでは土砂や埃(ほこり)を大量に吸い込んでしまいます。ヨーロッパの建物はレンガをはじめ、石造りの物が多く、換気性も良くありません。その為、カーペットを敷いた場所の清掃は大変な手間が掛ったのです。箒のようなもので土砂を掃きだしていたのです。土砂や埃(ほこり)を蔓延させながらのお掃除ですので、さぞかし大変なことだったと思われます。カーペットは敷物としては重要ですし、繰り返しですが保温効果や静謐性に優れていますが、快適性や健康性から言ったら、少し問題のあるものと言ってよかったでしょう。勿論始終誰かが土砂の掻き出し作業をしていれば別ですが・・・・。

 こうした中で、米国で飲食店の掃除を請け負っていた男がいました。彼は喘息持ちだったのです。その彼が、カーペットの掃除をするには、土砂の掻き出し作業が必須でそれが持病との兼ね合いで非常に具合が悪く、何とかしたいと考えたのです。

 粉洗剤の空き缶をひっくり返し、扇風機を装着し、排気に部分に枕の布を当てて土砂を取り去る事を実現したのです。これで、一気に悩みが解決です。一年後に彼はその機械の特許をある貴婦人に売り渡します。フーバー(Hoover)夫人です。カーペットに詳しい方ならバキュームの会社としてよくご存じです。

 カーペットバキュームの出現で、カーペットはメンテナンスが劇的に容易になりました。そして、土砂や埃(ほこり)を簡単に除去できることから、快適性や衛生性が飛躍的にアップしたのです。それまでの、欠点が全て解決され、なくてはならないものへと変身したのです。

 この原体験があるので、欧米の人は、カーペットに必ずバキュームを掛けるのです。カーペットは(メンテナンスさえよければ)保温性に優れ、静謐性もあり、快適で衛生的な場所を提供してくれるのです。また、メンテナンスさえよければ当然のことながら、長持ちするのです。

 一方我が日本では異なる敷物が発達しました。畳です。保温性、静謐性だけでなく、汚れを溜め込む事もありませので、表面の汚れさえ掃きだしてやれば衛生性にも優れています。また、日本家屋は基本的に木と紙で出来ていますので、換気も良いのです。穴倉の様な所に埃だらけの敷物が敷かれた場所での嫌な経験などしたことがないのです。そもそも、日本では室内では履物を脱いで上がる習慣ですので(下足の文化)、室内は埃っぽくならないのです。そして、靴を脱いで過ごしている自宅ではカーペットが痛まない事(土砂がないの当たり前ですが)で、土足のカーペットは傷んでも仕方がないと思い込んでしまうのです。

 こうした原体験の差でカーペットの状態に差が出るのです。欧米人にとってカーペットは

保温性・静謐性に優れ、衛生的であり快適。ただし、バキュームを始めとするメンテナンスが必須。メンテナンスがしっかりしていれば数十年良い状態を保つことができる。

日本人にとっては 

 保温性・静謐性がある。メンテナンスの概念がない。傷むの仕方がない。5年程度で交換が必要。

大げさに言えばこうした違いがあります。

病院清掃でも、欧米は、歴史的に感染でひどい目に合っています。14世紀末のペストの流行ではヨーロッパの人口の1/3~1/4減ったと言われていますし、病院自体が19世紀のゼンメルワイスの手指消毒やナイチンゲールの環境衛生消毒方などにより、院内感染が激減するまでは一旦入るとなかなか退院できないような場所でした。感染防止をする事で病院がどちらかと言うと避けたい場所から、病気の治る良い場所へと激変したのです。この原体験がある為、欧米では、病院内の感染防止処置は必須なのです。これが、教育機関にも広がっていますので、教育機関にも日常的に感染防止清掃が行われています。我が日本での学級閉鎖のニュースが出るたびに、この分野での我が日本の遅れは相当なものだといつも感じています。

 繰り返します。カーペットにはメンテナンスが必要です。バキュームは必須です。

ついでに言えば、病院等の医療機関や学校などの教育機関にも感染防止清掃が必須なのです。