酸性洗剤の使い方① | お掃除とメンテナンスのプロ 矢部要のブログ

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酸性洗剤の使い方①

 

酸性洗剤の使い方について述べましょう。洗剤は極端に言えば殆どがアルカリ性です。従って、私達が使う洗剤は概ねアルカリサイドに傾いている為、アルカリ性洗剤は使い慣れています。言ってみれば洗剤は石鹸が発達したものですが、石鹸は灰に油脂を加えて煮詰めたものです(逆の言い方もできますが)。アルカリとは灰を示すアラビア語ですので、石鹸はアルカリ性です(一般的な石鹸の話ですが)。

私達の身の回りの汚れの殆どの物がアルカリ性の洗剤で除去出来ます。恐らく90~95%の汚れはアルカリサイドで除去可能です。しかし、或る特別な場所だけは、酸が必要になります。便器がその代表的なものですが、上記の理由で、一般に使う洗剤がアルカリサイドであるため、酸が必要な場所で洗剤を切り替える必要を意識しないと、洗剤が適正でない為、作業効率や作業効果が一向に上がらず苦労すると言ったケースが数多く見られるのです。

ブログなのでグダグダ述べましょう。大昔、ビルメンテナンス協会に属する多くの会社で本来便器に使用すべき酸性洗剤による事故が続出した為、酸性洗剤の使用を禁止しようと言う動きが流行りました。殆どの汚れがアルカリサイドで落ちますし、酸が必要なのは便器内側(それ以外では風呂場や流し台)位で、当時は生産性向上と言った概念も全くありませんでしたので、便器も洗剤を使用して落とすより、ゴシゴシ手こすりして落とした方が事故も起こらず良いと言う風潮が流行りになったのです。この業界の定番と言ってよいほどに成長した「バイオボウル」を私達が売り始めた10年ほど前には、大手の多くの会社で「弊社は酸性洗剤を使いません!」と胸を張って答えられ、愕然としました。便器内に手を入れて擦る程誠意のある仕事をしていると言う事を強調されたのです。その意気込みは悪くありませんが、便器内に手を入れる事は作業者の安全性からも、お客様への衛生性からも望ましくありません。血液・体液から感染する病原体(Bloodborne Pathogen=ブラッドボーン・パソゲンと言います)は作業者の安全性を、便器内から感染を起こす病原体はお客様への衛生性を損ないます。便器内に手を入れている限り、ノロウィルス感染を防ぐことは不可能です。流石に現在ではこうした話は殆ど聞かれなくなりましたが、ほんの数年前に地方で同じ言葉に出会った時には、一時代逆戻りした感じを受けました。

酸性洗剤が必要なのは一般的には、トイレ・浴室・流し台・錆落としです。トイレは何度も書いていますが、便器内に着く尿石(Ca=カルシウム→アルカリ性)と水垢(Ca=カルシウムとSiO2=二酸化ケイ素)の除去に酸性の洗剤が有効である事、浴室は石鹸やシャンプーの堆積がアルカリ分なので、その除去には酸が必要になる事、流し台の水垢は上記と同様カルシウムが関係している事、錆落としはFe2O3(錆)に例えば塩酸(HCl)を使用し、H(水素)とCl(塩素)がそれぞれOを引きつける事(O3を取る)からFe2(鉄)に戻し錆を落とす還元作用を使うので酸が有効なのです。

酸性洗剤使用に当たっては教育が必要ですが、覚え方は簡単です。標語で覚えましょう。

1.酸は強酸、注意が必要

2.酸と言ったら3~5分

3.混ぜたら危険、酸と次亜

この3つを覚えれば、酸性洗剤を使いこなせます。声を出す事が重要です。説明は次回にしましょう。