14 酸とアルカリ・どちらを使うか
さて、皆さんは洗剤の基礎とpHについて、そして希釈によってのpH値と、希釈のベストポイント「臨界ミセル濃度」について学びました。洗剤の基礎的な部分については既に理解している訳です。そこでいよいよ実施という事になるのですが、洗剤使用に当たって皆さんが真っ先にすべきことはその汚れが酸でおちるのかアルカリで落ちるのかを判断する事です。酸でしか落ちない汚れをアルカリをいくら強めても無駄ですし、逆も同じ事になります。ここを間違ってしまうと元も子もありません。洗剤使用に当たっては最も重要なポイントです。
しかし、この見分け方は意外に簡単なのです。というのは私達の身の回りの汚れの殆どがアルカリ側で落ちるのです。酸で落とさなければならない汚れはほんの少ししかありません(上図では青がアルカリ、赤が酸の必要な部分→少ししかありませんネ)。
従って少ない方を覚えてしまいましょう。それ以外はアルカリ側になるのですから。メンテナンスの守備範囲は概ね建物の内側ですので、建物の内側に限定しましょう。外装をやるとちょっと複雑になるので。
建物の内側で酸が必要な場所は以下の所になります。
1.トイレ
2.浴室
3.流し台(給湯室)
4.錆(さび)
1のトイレですが、便器内側に着く尿石と水垢の除去には酸が必要になるのです。尿石はカルシウム(Ca)で出来ています。カルシウムはアルカリ性ですので、酸でなければ落ちません。水垢は雑駁に言うとカルシウム(Ca)と二酸化ケイ素(SiO2)の混ざったものです。ここにもカルシウムがあるので、酸を使用した方が水垢が付かなくなるのです。
2の浴室は、使用者が石鹸とかシャンプーを使いますが、石鹸やシャンプーはアルカリ性ですので、これらの堆積の除去には酸が必要になるのです。
3の流し台は同じく石鹸や洗剤を使用する事でのアルカリ分の堆積がありますし、水を使用する事で水垢が付きやすく、水垢は上記の様にカルシウムと二酸化ケイ素の集合体ですので、酸が有効なのです。
4の錆は鉄(Fe)に酸素が着いたものが錆です(Fe2O3)。これに塩酸(HCl)の様なものを使うと、H2つでOを一つ取り去り(H2O⇒水になりますね)、Cl一つとO二つで二酸化塩素(ClO2)になります。即ち還元作用を使って錆を落とすのです。
Fe2O3←HClを加える
H2O、Clo2、Fe2 に分解 (還元作用)
しかし、錆び取りをした後は十分に水を流して、中和してやる必要があります。これを怠ると酸化が酷くなる(錆だらけになる)ので気を付けましょう。
上記4つが酸の必要な場所です。ここは普通の洗剤(アルカリ側)は効きませんので注意が必要です。
それ以外はアルカリ側で落ちます。勉強した通りに、アルカリを強くしていけば、どこかでストンと汚れは落ちてくれます。そのpH値を覚えてしまえば、その汚れにはどの洗剤が有効かを、既に皆さんは知っている事になるのです。