床ワックスの歴史・構造・表面洗浄
順序が逆になりましたが、今日は床ワックスの歴史と構造について述べます。
現在の床ワックスは今から50年程前、米国の化学製品会社「ローム&ハース」が作り出した特殊な樹脂に起因しています。アルカリに非常に弱いプラスチック塗料を開発したのです。亜鉛を基盤にした金属架橋と言う構造をしており、強アルカリによって、架橋が崩れ剥離(ハクリ=完全に取り去る事)しやすくなっています。これが床のワックスとして最適だったのです。床維持剤は汚れが激しい事から、剥離が出来るかどうかが非常に重要なのです。床維持剤が汚れきったら、完全・簡単に除去できる事がこの製品を床維持剤として世界に流行らせました。それまでの床維持剤は蝋を使っていたのですから、この床維持剤に代わるのにそれ程時間は掛かりませんでした。毎週の床洗浄ワックスが月2回から月1回に変化したのです。特許期間(多分25年)を過ぎ、各メーカーが独自に作れるようになり、更に内容が進化しました。
床ワックスが汚れて来たら、先ず真っ先にするのがワックス再塗布(表面洗浄/定期清掃とも言います)です。この際に洗浄に使うのはアルカリ性万能洗剤です。この洗剤はpHが9~11程度のもので、アルカリが効いている為、洗浄効果が高いのです。これを塗布し、ポリッシャー(結構重量があります)にプラスチックのパッドを装着して、床を洗います。アルカリが効くことから、ワックスの表面が少し溶けます。そこで擦り(こすり)を入れるので汚れが良く取れるのです。このワックスは剥離にはpH12以上、13近くの強アルカリが必要で、それ以下のアルカリ分である事が一つのミソになっています。完全に取り去ることなく、表面だけを少し削るのです。その後、水拭きをして、残留しているアルカリ分を除去し、新しくワックスを重ね塗るのです。
さて、ここが問題なのですが、床に残留しているアルカリ分は結構濃度が高い(pH9~11)ので、水拭きで十分にリンスするには実際には大量の水が必要になります。しかし、現実には我が日本での定期清掃の値段は管理会社に買い叩かれたこともあって、非常に安価になっているのが現状です。そうするとどういう事が起こるかと言うと、取り敢えず毎月の定期清掃が滞りなく出来ればいいと言う事になり、ワックスも安価なものしか使えなくなります。そして、ここが重要なのですが、床をアルカリ性万能洗剤で洗浄した後のリンス拭きが甘くなるのです。
床のリンス拭きは2回と言うのがこの業界の常識になっているのですが、お金が取れない為、多くの業者が半渇きにしたモップ(水の量が足りません)で床を拭くことになります(水を多くすると、時間が掛ってしまう為、コストが大きく跳ね上がるのです)。そうなると、アルカリが残っている所に新しいワックスを重ねる事になります。ワックスはアルカリに弱い構造になっているので、完全形成がおぼつかなくなるのです。即ち、現在の請負金額と請負方法ではワックスを傷めながら、重ね塗って行く事になるので、剥離の時期が逆に早くなってしまうのです。この連鎖を断ち切る必要があります。それは先ず、完全なフィルム形成を目指す事、上記の洗浄ワックスの回数を出来るだけ減らすようにする事、日常管理を完全にする事です。
それでは、また機会を見て続けます。m(_ _ )mm(_ _ )mm(_ _ )m