今日からメンテナンスのモジュール化について少しずつ述べて行きましょう。
建物の管理は大きく分けて
設備管理
警備管理
清掃管理
の3部門があります。
この保全(維持管理)コストは中規模事務所ビルのライフサイクルを60年とした場合、全体の32%になります。運用(水道光熱費等)コスト31%、建設コスト16%、修繕・改修コスト16%と続きます。即ち、保全コストが最も多いのです。
(財)ビル管理教育センター「統括管理者講習会テキスト」より
この保全コストの中で清掃管理はお客様やテナントの方、社員の方にとって最も身近に感じる部分になっています。綺麗、汚いは直ぐに目につきますので、ビルの評価に直結します。例えば玄関口やトイレがピカピカであればビルの雰囲気やステータスは上がるでしょうし、逆の場合は評価が下がるでしょう。
一方ビルの価値はと言うと、今はビルの収益力から価値を計る収益還元法が一般的です。これまた、上記のテキストの計算式で言えば
V=NOI/R
V Value「不動産価値」
NOI Net Operating Income 「純収益=賃料等の経常収入―建築物維持管理コスト・公租公課・保険料・修繕工事コスト等の支出」
R 期待投資利回り
になります。
分かり難いのでこちらで勝手に数字を入れてみましょう。仮想のビル(都内で比較的古いビル)
(年間)賃料8,000万円 管理費500万円 水道光熱費700万円 ビルメンテナンス費700万円 小修繕100万円
のビルがあり、R(期待投資利回り7%)だったとしましょう。7%は少し条件が良いかもしれませんが・・・
V={(8,000+500)-(700+700+100)}/0.07=100,000(単位万円)
このビルの価値は10億円になります。
このビルのメンテナンスコストを競争させる事で4割削減したと仮定します(一時はこんな話がアチコチで聞かれました・・・)
V2={(8,000+500)-(700+420+100)}/0.07=104,000(単位万円)
メンテナンスコストを年間280万円カットするとビルの価値が4,000万円上がると言う式になってしまいます。
こうした事が広がり、メンテナンス業界も大きな打撃を受ける状態が続きました。
上記の様な4割削減は如何にも無理があるように思いますが、ともあれオーナーサイドにとってもメンテナンスコストが非常に重要である事を示していますし、その事実は変わりありません。
しかし、メンテナンスコストをやみくもに下げれば、品質が落ちる事になるでしょう。創意工夫にも限界があります。
大切な事はメンテナンス原価(作業時間)を下げると同時にクオリティ(品質)を挙げる方法を見出す事と考えます。
その方法がメンテナンスのモジュール化になります。