高城剛氏の10/7付けハニカムブログがあまりに面白かったので、その一部を転載します。

スティーブ・ジョブス氏のことです。           メイン企画 家田 雅史

前段略

多くの人は、スティーブ・ジョブズのことをアップルの人=マックやiPhoneを作った人だと思っていますが、それは業績の一部分でしかありません。スティーブ・ジョブズは、コンピュータによって、誰よりも社会をより楽しく、そして素晴らしくしようとした人に他なりません。かつて、誰もが虜になっていたエクセルやパワーポイントは便利なだけで楽しいもんじゃない、社会は変わらないということを、直感でわかっていました。だから、コンピュータによって便利さを追求するのではなく、コンピュータによって楽しさや素晴らしさを追求しつづけたのです。

その真髄は、アップルコンピュータを一度追い出されて、PIXARに自分の人生を集中する事によって、自他ともに明確になりました。それは、瞑想によって導かれた「初心」の気持ちや死生観だと言われています。

その後、ハリウッドがいくらでもいいから欲しがったPIXARがあったからこそ、結果としてコンテンツ配信事業が前提なiPodの成功があり、PIXARがなければ、コンテンツを握るハリウッドはさほど協力せず、iPhoneの成功はここまでなかったことでしょう。

また、スティーブ・ジョブズの有名な言葉に、Stay hungry,Stay foolishというのがあります。これは、スティーブ・ジョブスの言葉ではなく、カウンターカルチャー世代の雑誌「ホールアースカタログ」最終号の見出しです。どこにでもある旅立ちの風景の写真とともに、その別れの言葉は書かれていました。

当時スティーブが出入りしていた「ホールアースカタログ」は、彼にとって永遠のアイコンです。iPhoneの待ち受け画面が、「ホールアースカタログ」と同じだった地球の写真だったことは言うに及ばす、iPhoneそのものを、現代の「ホールアースカタログ」として、スティーブは考えていました。それは、「世の中を変える素晴らしい事を伝える術」を、どんな時も目指し、便利さや欲望では、社会は大きく動かないことを、60-70年代のカウンターカルチャーを通じてよく知っていたのです。

だから、ニューヨークタイムズもBBCなどの世界中の報道機関がスティーブジョブズのことを「ビジョンを作る人」とするのに対し、日本の多くの新聞社が、スティーブ・ジョブズを、「元アップルのCEO(最高経営責任者)」と書くのに僕は違和感を感じます。

スティーブ・ジョブズは、経営者でもアントレプレナーでもなく、常に、ビジョンを作る人を目指し、どんな時も、コンピュータを通じて社会を素晴らしく変える事だけを目指していた人だと思います。

音楽で社会が変わる事を教えてくれたジョン・レノンがなくなった日、もう音楽は、ただの産業になってしまうんじゃないか、と多くの人は感じたと思います。

コンピュータで社会が変わる事を教えてくれたスティーブ・ジョブズがなくなった日、もうコンピュータは、ただの産業になってしまうんじゃないか、と僕は感じます。

スティーブ・ジョブズの死は、たぶんコンピュータが終わった日の知らせであり、残った僕たちは、また次の地平を目指さなければなりません。

その道は、自分の心と直感によって導かれると、何度もスティーブ・ジョブズは言って、ありふれた光景から旅立ちました。




スティーブ・ジョブズ氏が亡くなって、何となくココロの中に出来た虚無感の意味を、この文章を読んで解ったような気がしました。