歌麿「雪月花」オーダーメイドのこだわり | 江戸手描き友禅「染工房 まいむらさき」のそめいろ日記

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栃木県小山市でそめもの教室の講師をやっています。
染め物のコトや、じんくん(秋田犬)のコト、歴史、芸術、美術、日々の色々を綴っていきます。

染師・まいまい です

まだまだ
歌麿のお話

歌麿は私の地元、栃木県の栃木市で
肉筆画超大作「雪月花・三部作」を
製作しました


「雪月花・三部作」、また、歌麿自体が
謎だらけで、まだまだ研究中だそうです。

私の立場、「ものつくり・職人」の視点から
勝手に読み解きます。
ですから、学者先生とは、違った見解を
含みます。

(※以下の画像は撮影可能の複製です)



「花」は
おめでたい事柄がふんだんに
盛り込まれた作品ですね・・・

堂々目を引くメインの後ろにの
こんな所にも吉祥が

袖に葡萄、手に鼠がいますね

「葡萄とねずみ(りす)」は対で
表すことがあり、
共に豊穣・多産の象徴で
繁栄を意味します



「吉原の花・部分」

歌麿は依頼主でパトロンの
栃木の豪商・善野家の
繁栄を願って描き込んだのでしょう




お膳を運ぶひとを呼び止める女性の
着物の家紋は依頼主の善野家の紋


「品川の月・部分」
「九枚笹(くまいざさ)」の家紋

↑この事は解説文に教えていただきましたよ






確かな裏付けが無い中、
専門家の先生方の中には
そもそも三点がはたして
同じ依頼主だったのだろうか?と
疑問を持たれている方も
いらっしゃるようですね

(深川の雪 図録より)



私はそうは思いません
三点とも同じ依頼主だと思います





「三点みな、サイズがばらばら」



これは完全オーダーメイド(お誂え)です
お誂えはサイズが違って当然です

三点は掛け軸で壁面装飾ですね

まず、飾るための三カ所のスペースが
あり、その寸法に
ぴったり合わせ制作したため
微妙な寸法・サイズがばらばらなのでしょう

巨大な絵を三点飾るために
屋敷を建てた、となれば
三点はサイズはそろっていたことでしょう

私にとっては違和感は感じません






「三点それぞれに
落款(らっかん・サイン)がない
注文主の指示か?」



確かに注文主の指示も
考えられますね

しかし、三点全てに落款が
ない、というのはどうでしょう?

連作だからひとつひとつに
サインしないのではないでしょうか

絵の世界は違うかもしれませんが、
手前どもの染めの「のれん」も
連なった布の端の辺りに一カ所
だけ、叶うなら入れさせていただきます

また、この連作にサインが無いとは
思いません

「品川の月」の左上部、
唯一の成人男性の人影があります

これこそ歌麿自身、
この作品のサインだと感じます

色っぽく洒落っ気たっぷりなサインです

人影のそばの屏風の上部には
男帯が無造作に掛けられ演出も・・・

この帯も歌麿自身がしていたのを
そのまま描いたのかもしれませんね


↓この部分の話です



ものつくりにとって、自分の存在を
作品に入れ込みたいものです








「三点に統一性が
あまり感じられない」



確かに趣きや季節が
それぞれ違いますね・・・


「雪月花」について勉強不足な
私ですが、

原寸の巨大複製画で
向かって「花」「月」の順に
飾られた展示を
先日、栃木市役所でしばらく
眺めておりましたら、

「花」「月」のとなりに「雪」がくると
絵、全体がだいたいつながるようにも
感じました

「月」の構図だけが放射線上に
広がる遠近法で表現され、
中央の大きく描かれた遊女から
世界が広がっています

「月」を中心に向かって右に「花」
左に「雪」の順にぐるり部屋を囲んで
楽しんでいたように思えてきました


もちろん、一点だけでも
それぞれ愉しめますね

なぜなら
季節感が全く違う三点だからです

季節に合わせて一点ずつでも
お部屋にコーディネートできる利点を
考慮して歌麿は制作したのではないでしょうか



これからの研究、新発見が楽しみです




「深川の雪」 パンフレット
 たて200㎝×350㎝




品川の月
147㎝×319㎝




吉原の花
186.7㎝×256.9㎝




「品川の月・部分」

私が「歌麿自身・サイン」と
考える成人男性の影



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